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咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第四話【呪毒】

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「羅刹、魔徒が出現したわ。随分と近くに居る」


 頭の中に直接、語り掛けられる声。


 タリムの言葉に、羅刹は目を醒ましていた。


 御影町二丁目に有る簡素で小さな安ホテル。現在は廃墟と成ってはいたが、人が住める程度には片付いていた。


「どうやら、まだ鬼神化はしていない様ね。でも、急いだ方が良いわ」


 此の世界には、タリムの実体は無い。極界ごくかいと呼ばれる黄泉の國に、其の本体は存在する。


 此の世に彼女が其の身を顕すのは、羅刹が戦騎を換装している僅かな時間だけで在る。故に会話はテレパシーを用いて行っていた。


「解ってる。奴の居場所を教えてくれ!」


 黒のコートを羽織り、短剣を手に取る。


 羅刹の心境は、僅かにだが変化が顕れていた。


 其れは、言葉の端々からも窺えた。


 部屋を飛び出し駆ける羅刹。其の動きは速く一陣の疾風かぜの様だった。が、其の動きに附いて来る者がいた。そして、強烈な殺気を感じて羅刹は立ち止まった。


 辺りを警戒しながら、身構える。


「此の殺気の主が、魔徒なのか?」


 異様な殺気だった。


「魔徒の気配は感じられないわ」


「だが、人の気配ではない。此奴こいつは一体、何者だ?」


「解らないわ。けど、気を付けて。只者ではない事だけは、確かよ……」


 神経を研ぎ澄まして、殺気の気配を探る。


 まるで、獰猛で狡猾な獣だった。


 相手は、気配を殆ど殺している。


 一体、何処に居る。


 焦りが、汗と共に伝う。


 風が木々の葉を揺らす音。遠くで叫ぶ犬の雄叫び。車のエンジン音。家屋から漏れる生活音。


 今の世は、余りにも余計な音が多過ぎる。だが羅刹は、微かに空を引き裂く気配を聴き取っていた。


 ——後ろだ。


 爆ぜる金属音。


 短剣で、刀の一撃を受ける。


 受け流して、斬り伏せる心算だったが、相手は半身を捻って弐の太刀を繰り出してきた。


 脇差しに依る二撃目を、辛うじて躱すが皮一枚、斬られる形となった。柔らかな動きに反して、重い太刀。そして、速い太刀筋。並の手練れでは無い。


 予想以上に強い相手の奇襲を受け、羅刹は混乱していた。


 相手は狐の面を被っている。


 御法院家の者ではない。《禍人の血族》特有の不思議な力は、感じられなかった。そもそも、人の気配を感じられない。


 だが、魔徒とも違う。一体、何者なのだろうか。


 解らない。


 解らなかったが、其の力量だけは理解わかった。


「タリム、喚装だ!」



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