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咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第三話【作家】

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「刹那、一緒に帰ろ!」


 帰り支度をする刹那に、クラスメートの馬上萌もうえもえが声を掛ける。彼女は一般家庭の生まれだった。


 私立晴明女学院は、富裕層のお嬢様が集まる学校で在る。


 萌の存在は、完全に学園から浮いていた。


 そんな萌に、刹那は親近感を抱いていた。


 どの生徒も派閥争いに身を投じ、今後の人選をする様に交友を深めている。


 刹那はそう言った事を疎ましく感じ、在る意味では浮いた存在で在った。生まれこそは、御法院家は由緒が在る名家では在った。だが刹那には、そんな事は別にどうでも良かった。


 だからこそ、何の気兼ねもなく接する萌とは、直ぐに打ち解ける事が出来た。


「今日はバイト、ないんだ?」


「うん。其れよりアンタ。最近、彼氏が出来たらしいじゃん。水臭いなぁ。親友なんだから、教えてくれたって良いじゃない?」


「えっ……?」


 刹那には一体、何の事を言っているのかが解らなかった。


とぼけちゃってぇ。イケメンの子と、一緒に居る処を見たって皆、言ってたわよ。私も、見たかったなぁ!」


 どうやら、羅刹の事を言っている様だった。


 確かに見た感じは、羅刹はイケメンに見えなくもない。と、其処まで考えてから、刹那は顔を赤らめた。


「アイツは、そんなんじゃないから。勘違いしないでよ!」


「やっぱり、居るんじゃん。顔、真っ赤にして。刹那ったら、可愛い!」


 どうやら否定しても、無駄の様だ。


 萌は、すっかり羅刹を彼氏だと決め付けている。


「今度、紹介しなさいよ」


「うん……」


 紹介しろと言われても、困る。


 羅刹とは実際に、付き合っている訳ではなかった。第一に彼が何者で、何処に居るのかも解らない。もしかしたら、もう会う事すらないかもしれない。


「じゃあ今度、バイト先の喫茶店に連れて来てよ!」


 目を爛々と輝かせる萌。


 如何にも、興味津々と言った感じであった。


 此のままでは、根掘り葉掘り聞かれてしまう。真実を話せば、萌は信じないだろう。


 魔徒なんて化物の存在を、知っている方が稀なのだ。きっと、揶揄からかうなと怒られてしまう。


 ——面白そうな事になってるわね?


「えっ……?」


 頭の中で、タリムの声が響いた。


 そう言えば、ペンダントを返すのを忘れていた。


 此のペンダントが唯一、羅刹との繋がりで在る。


「何、其のペンダント。彼氏からのプレゼント?」


 新しい玩具を見付けた子供の様に、萌は好奇の目を向ける。


「うん、まぁ……」


 微妙に、嘘ではない。


 ——良いじゃないの。羅刹で良かったら、紹介してあげなさい。あの子にも、良い刺激になると思うわ。


 タリムの口振りは、まるで保護者の様だった。


「其れより、バイトの方は順調?」


 刹那は無理やり話しを逸らそうと、切り出した。


「ん〜……まぁ、順調かな」


 曖昧な返事を返す萌。


 アルバイトの経験のない刹那には、良く解らない世界だった。お金を稼ぐのは、楽な事ではない。


 きっと、色々と大変なんだろうな。


「常連さんで、変なお客さんがいるの」


「変なお客さん?」


「そう。近い将来、偉大なる大作家になるお爺ちゃん」


「何、其れ。作家さんなの?」


「う〜ん……。聞いた事ない名前だったよ」


「何て名前?」


「藤堂勲、だったかな……」


 聞いた事のない名前だった。


 本は好きなので、色んな物を良く読んでいるが、全く心当たりのない名前だった。


「其の人、いつも変なんだけど……最近、更に変なの」


「変って、どんな風に変なの?」


「う〜ん……。なんか、一人で喋ってるの」


「只の独り言じゃないの?」


「独り言ってより、見えない誰かと話してるって感じなの」


「まさか、其の人……変な物でも、視えてるんじゃないの?」


「止めてよ、刹那。私、そう言うの弱いんだからぁ〜!」


 身を竦める萌を、可愛らしいと思った。


 ——もしかして、魔徒かもしれないわね。


 頭の中で、タリムが囁き掛ける。


 まさかとは思ったが、有り得ない話ではなかった。実際、此の数日で立て続けに魔徒と遭遇している。


「黙りこくっちゃって、どうしたの?」


 不思議そうに、此方を窺う萌。


「ううん、何でもない。早く、帰ろう!」


 立ち上がる刹那に、一人の男が視線を投げ掛けていた。半年前からやって来た新任の教師、東山昭久ひがしやまあきひさで在る。物静かで在ったが、若く淡麗な容姿から生徒の評判が良かった。尤も刹那は、昭久が苦手で在った。


 別に異性が苦手だと謂う訳では無いが、昭久の事を好きには成れなかった。


 微笑を浮かべる昭久に、刹那は会釈を返して去った。



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