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拾弐
「あいつ結構、強いね?」
「だが、香流羅の方が強い」
霊獣達が口々に告げる。千里眼を通して、羅刹の戦いを一通り見た。立ち居振る舞い。太刀筋や剣速が、非凡で在る事は理解った。
羅刹は確かに強い。自分と五分の力を有しているかも知れない。其れ程迄に習練された『武』を、羅刹は積んで来ている。
だが、戦えば勝つ自信が在った。
「人の妹に、ちょっかい出してるんだ。少しぐらいお仕置きしても、良いよな?」
「やっちゃえ、やっちゃえ!」
香流羅は千里眼越しに、羅刹を睨み付ける。憎悪の宿った血が、肚の底で滾っていた。
羅刹自身には、何の恨みもない。だが、戦騎騎士は赦さない。奴等は魔徒以上に赦す事が出来ない存在だった。
全ての騎士は、此の御法院香流羅が倒す。
戦騎騎士も魔徒も、仇為す存在だ。千年以上もの歴史が、其れを物語っている。《禍人の血族》に取って、戦騎騎士の存在は憎しみの象徴でしかない。
《禍人の血族》の力は、戦騎騎士の力を凌駕していると言う事を証明してみせる。
香流羅は、静かに笑った。其の瞳には、狂喜とも哀しみにも取れる暉が宿っていた。




