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咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第二話【鬼子】

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拾壱



「さて。今度こそ、終わりにしようか?」


 魔徒の特定さえ出来れば、タリムが見付け出す事は容易だった。たとえ何処へ居ようと、追い詰める事が可能だった。魔徒の探知は、同族には容易い事なのだ。


 戦騎には、浄化された魔徒の魂が宿っている。契約さえすれば、互いに裏切り合う事は出来なく為る。


 史華に短剣を向けながら、周囲を窺う。


「此の状況で、私を斬れるかしら?」


 神峰史華親衛隊は、相変わらず史華の周囲を囲んでいる。全く、鬱陶しい奴等だ。


「斬れるさ」


 感情の籠らぬ声。自分は只、魔徒を斬り捨てるだけだ。其れは此れまで同様、変わらない。


「無関係な人間ごと、斬ろうとでも言うのか?」


 人間を斬る心算は、毛頭なかった。と謂う依りも、斬れなかった。斬れば地獄に逆戻りだ。其れに認めたくは無いが、刹那と出逢ってから僅かに心象に変化が在った。其の変化が、自分を妨げている様で、癪に障った。


 兎に角、無関係な人間は斬れなかった。


「俺達が何もしなかったとでも思ったか?」


 羅刹が手を翳すと、教室中に魔法陣が浮かび上がる。


「俺の戦騎タリムには、空間を操る力が備わっている」


「馬鹿な?」


 神峰史華親衛隊の姿が消えた。


「お前だけを、結界内に閉じ込めさせて貰った。準備に多少、手間取ったがな」


 大掛かりな結界装置を作る為、刹那に依代よりしろと為って貰った。


 禍人の血を受け継ぐ刹那だからこそ、可能で在った。彼女の体力を考えると、三分程しか保たないが其れで充分だった。


「余り時間がない。早速、斬らせて貰うぞ」


「ふぅん。其れで、私を追い詰めたつもり?」


 史華から、余裕の表情は消えなかった。


「羅刹、気を付けて。奴の能力は、複写。お腹の鏡に映った者の力を、再現する事が出来るみたいよ」


 史華が、戦騎を纏っていた。


「只の猿真似だろう?」


 間合いを詰める史華。


 太刀筋も、剣速も、羅刹と寸分違すんぶんたがわぬ精度でトレースしていた。


 だが、所詮は二番煎じに過ぎない。


 太刀筋が解っているなら、受け流すのも容易い。


 短剣で払い、左腕で殴り付ける。


 戦騎を喚装して、大剣で叩き付ける。其れを、刀で受ける史華。


 史華の刀は、あっさりと折れた。


 刀での戦い方を真似ると言うのならば、違う戦い方をすれば良いだけの事だ。刀と違って、剣での戦い方は打撃が主体で在る。


「幾ら自分を着飾ろうと、どれだけ他者の真似をしようと無駄だ!」


 大きく体勢を崩した史華を、羅刹は斬った。


「己の力で勝負も出来ない奴に、俺は負けない」


 史華の体が、硝子の様に粉々に砕け散った。


 結界が消えて、元の空間に戻った。


 神峰史華親衛隊は皆、一様に倒れていた。


 洗脳が解けて、一時的に意識を失っているだけだった。暫くすれば又、意識を取り戻す。


 部屋の片隅にうずくまる刹那に、羅刹は仏頂面を向ける。


「お前のお陰で、助かった。ありがとう……」


 照れくさそうに、礼を述べる羅刹を見て刹那は笑った。


「何を笑っている?」


「貴方がそんな事を言うなんて、意外だなって思ったの」


「俺だって、礼ぐらい言うさ……」


 羅刹の頬が、朱に染まっている。刹那と居ると、調子が狂う。


 そんな自分自身に、苛立っていた。


「貴方、意外と可愛い処も在るのね」


「黙れ。其れ以上、余計な事を言うなら斬るぞ!」


「どうぞ!」


 真っ直ぐな瞳に、羅刹は戸惑っていた。無垢な瞳に見詰められて、胸が締め附けられた。


 まるで、自分が自分じゃない様な錯覚に捉われて、困惑していた。


「羅刹、貴方の負けよ」


 タリムが羅刹を諭す。自分を掣肘せいちゅうする存在に、羅刹は大いに戸惑っていた。其の事を気取られまいと、踵を返した。


 羅刹は無言で教室を出て行った。


「あ。ちょっと、待ちなさいよぉ!」


 刹那は、慌てて羅刹を追い掛けた。



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