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拾
「さぁ、観念して貰おうか?」
放課後の誰も居ない教室。其の中を、史華は佇んでいる。不敵に笑いながら、羅刹を見据えている。
史華に短剣の切尖を向け、問い詰める。
「神峰史華は、何処に居る?」
「何を馬鹿な事、謂ってるの?」
「奴の術で、上手く化けたつもりか?」
羅刹は懐から、鈴を取り出した。
ゆっくりと鈴を振ると、美しい音が流れて来た。
其の途端、史華の姿が輪郭を変えた。
「お前は、史華の使いの者か?」
目の前には、比津地がいた。
「お願いします。史華様を、見逃して頂けませんか?」
涙ながらに、比津地は懇願した。
「駄目だ」
「お願いします。私が代わりに、命を捧げます。だから、何卒!」
「此のまま放っておけば、在の女は多くの命を奪う。史華とか言う女の魂は、永遠に魔徒に縛られる」
比津地の襟を掴み上げる羅刹。
「一生、在の女は苦しみ続けるんだぞ。其れでも、良いのか?」
比津地を放り投げる。
血に這いつくばり、嗚咽を漏らす比津地。
暫くして、比津地が意を決したのか言の葉を紡ぐ。
「どうか。史華様を、お救い下さい……」
「解った。お前の覚悟、聢と貰い受けた」




