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漆
白い装束を身に纏った男が、私立晴明女学院の屋上にいた。
憂いの帯びた眼をしていた。何処か哀しそうな、けれど力強い意志の宿った眼だった。百八十は在ろうかと謂う上背は、引き締まっている。筋肉質の四肢が、男の力を雄弁に語っている。まるで男は風を纏っている様だった。物静かで在るが、重厚な佇まいは、男が並の手練れでは無い事を告げている。
男の肩には鷹が、足元には狼が居た。《禍人の血族》に附き従う霊獣だ。
「香流羅、此の学校に魔徒が居るよ」
鷹が男に囁く。
「けど、此の学校って確か……」
「そうだ。あいつの通ってる学校だ」
男が不敵な笑みを浮かべる。
「だが、既に戦騎騎士が来ている様だな」
狼が、男を見上げる。
男の眼前には、羅刹の姿が映像として浮かんでいた。
「まずは、お手並みを拝見させて貰うとしよう。赤丸、青丸。俺と奴、どっちが強いと思う?」
男は好戦的に問い掛ける。古来より、戦騎騎士と《禍人の血族》の間には、大きな溝が在った。
「香流羅に決まってるよ」
「お前は、我等が長に選ばれた男。戦騎騎士等に、遅れを取るべくもない」
二頭が口々に答える。
「まぁ、直ぐに解るさ」




