表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第十四話【親子】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

138/150



 刹那の眼前で、向けられたメスが止まる。正確には、止まった訳では無い。男の放った刃は、振り切られていたからだ。けれど刃は刹那には届かない。別の空間に、飛ばされていた。


 塁留の戦騎の能力に依って、空間を捩じ曲げられたのだ。


「お嬢さん、大丈夫ですか?」


 塁留は真摯な眼差しを、刹那に向けていた。紳士的な態度で、己の背後へ遣った。


 刹那を見ていると、不思議と死んだ母親の事を思い出す。穏やかで、暖かな温もりが、心を満たしていた。


「コウガ、喚装だ!!」


 塁留の言葉と共に、緑色の戦騎が喚装される。背後から、羅刹が歩み寄る気配がした。冷静さを欠いた男には、今回の魔徒は任せられない。


 力だけでは、決して届かない相手で在った。


「残念だが、君の出番は無い」


 羅刹に放った言葉は、冷淡な口調で在った。


「君は指を銜えて、見ていれば良い!!」


 塁留はレイピアを引き抜いて、男のメスに向かって放った。


 弾かれる様にして、メスが吹き飛んだ。


「そいつ、魔徒と違う。只の人間や!!」


 頭の中に直接、響くコウガの声。


 男が魔徒では無い事は、気配から解っていた。だが、魔徒の気配も感じていた。


「コウガと似た様な力を、持った魔徒だな?」


「嗚呼、そうや。異空間に奴は、居てる。ワイが連れて来たる!!」


 緑亀戦騎コウガは、空間を操れる。例え相手が異空間に隠れて居ようが、そんな事は関係が無かった。


 甲羅の様な戦騎が、輝きを放っていた。其の光りに照らされて、次第に魔徒の姿が映し出されて往く。


 ——亀。一見、穏やかに見える生物だが、幾つかの種は違う。コウガは其の中でも、カミツキ亀と呼ばれる種に近い。


 世界一、獰猛で狂暴な亀で在った。名前に由来する通りに、近付く者には噛み付く性質が在った。そして、噛む力は恐ろしく強い。


 カミツキ亀に不用意に近付いて、指を失った者も居る程だ。


 コウガを喚装する事に依って、塁留のレイピアの威力は格段に上がる。そして其の速度も、例に同じくだった。


 紫電一閃。其の煌めく様な太刀筋は、魔徒を捉えていた。


「止めろぉ……俺の娘を、殺さないでくれッ!!」


 縋る様に懇願する男。魔徒は、幼女の姿をしていた。


 男の過去に、何が在ったのかは知らない。魔徒の姿から、大体の事は想像が付いた。


 けれど、自分は戦騎騎士だ。


 魔徒は等しく狩らなければ為らない。何が在っても、情けを掛ける訳には往かなかった。決して、魔徒に情けを掛けるつもりは無い。


 塁留の脳裏を、兄の姿が浮かんだ。必ず、タタラを討つ。


 塁留の瞳には、覚悟のひかりが宿っていた。


 戦騎の出力を全開にした。


 少女の胸を貫くレイピアに、緑色の光りが宿っていた。其の光りの形が、亀の姿を象っている。


 まるで大きな亀が、少女に噛み付いている様だった。


「大切な者の死を、受け入れろ。そうしなければ、浮かばれない魂が在る事を、識れ!!」


 目映い輝きと共に、鬼神化するいとまも無く魔徒は霧散した。


 悲鳴の様な男の叫び声だけが、響いていた。まるで、地の底から聴こえてくる様な、断末魔の様な叫び声で在った。


 塁留がレイピアを納めると、戦騎の喚装が解けた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ