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咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第十四話【親子】

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「……パパっ!!」 


 帰宅するなり娘は、自分の元へと飛び付いて来た。小さな小さな、大切なお姫様だ。少しばかり我儘だが其処が又、可愛らしいのだ。


 愛おしい温もりを抱き締めながら、リビングへと向かう。娘の髪の優しい香りに、心が癒される。


「……あら、お帰りなさい!」


 妻が優しい笑みを投げ掛けて、出迎えてくれる。自分は本当に幸せ者だ。


 仕事の疲れも二人の笑顔に触れれば、立ち所に吹き飛んでしまう。幸せな団欒の刻を過ごしながら、正幸は五年前の事を思い出していた。


 妻が出産の際、自分の元に急患として運ばれて来た。母子共に危険な状態で、一刻を争う事態で在った。どちらか一方を、諦めなければ為らない状況。迷い、惑いながら、正幸は賭けに出た。妻と娘の両方を助ける道を選んだのだ。はっきり謂って、非常に危険で分の悪い賭けで在った。


 結果、奇跡は起こった。


「ねぇ……パパ。一緒に、お風呂に入ろうよっ!!」 


 抱き上げた娘が、甘えた声で謂った。愛おしくて堪らない。娘は何者にも換え難い宝物だ。娘の為ならば、何だって出来る。どんな手段を用いてでも、必ず護り育て抜いてみせる。悪い虫が付こう物ならば、タダではおかない。


 娘の頬に、優しくキスをする。柔らかな頬の感触が、唇に伝わる。温かくて、心地良い肌触りだ。


「ゆっくり、体の疲れを洗い流して。今日は、ご馳走よ!!」


「そいつは、楽しみだな!」


 鼻腔を擽る薫りに、食欲が刺激された。


 妻が料理に遣う肉は、普通の店では取り扱っていないらしい。何の肉なのかは教えてくれないが、一度でも食べれば病み付きに為る程の美味しさだった。


「ねぇ……パパ。早く、お風呂に入ろっ!!」


「解った、解ったっ!!」


 かす様に甘える娘。


 本当に愛おしい存在だった。


 浴室の脱衣所に着くと、娘を降ろした。一般家庭の脱衣所には、必ず在る筈の物が我が家には無かった。脱衣所に限らずに、ウチには其れは無い。


 出産のトラウマなのか、妻は鏡に近付く事を極端に嫌った。其の為、此の家には鏡の類いは一切、無かった。


 心的な事は専門外で在ったが、デリケートな心象だ。ゆっくりと時間を掛けて、治していけば良い。


 愛する妻と娘が居るだけで、幸せで在った。



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