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咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第十三話【正義】

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 深淵な闇が、燈の心を捉えていた。


 視界に靄が掛かった様に、昏かった。目の前には、多くの悪が居た。そう、憎むべき悪が居る。


 ——目の前の悪を、根絶やしにするのだ。


 心の中で、正義の声がした。心の奥底から、悪が憎い。どうしようも無い程に、赦せないのだ。必ず根絶してみせる。其の為に、自分は蘇ったのだ。今の自分には、力が在る。悪を討つだけの力が在るのだ。拳銃を構えながら、悪に向けて標準を合わせる。無論だが、こんな玩具では悪は討てない。自分の全てを賭して、闘わねば為らない。


 短剣を持った少年が、此方に斬り掛かって来る。拳銃で、迎撃しながら距離を計った。一発目の弾丸を躱す少年。二発目を撃つ前に、既に間合いを詰められていた。だが、反応できない速度では無い。


 悪は赦せなかった。


 必ず駆逐してみせる。


 相手が短剣を降り下ろすよりも早く、燈は前に出ていた。


 飛び蹴りを放って、短剣の腹を薙いだ。其の儘、身体を旋回させて、顔面をおもいきり、蹴り衝ける。尚も身体を旋回させて、三連脚目を胸部に、ぶつける。


 空中での三連脚が、見事に決まる。


 後方に吹き飛ぶ少年に、追い撃ちとばかりに拳銃を撃ち衝ける。二発、三発と続け様に発砲した。


 間違いなくダメージを負った筈だが、前進して来る少年。全身に炎を纏わせて、変わった歩法を繰り出している。


 揺らめく炎が、陽炎かぎろいを生じさせていた。此れでは、間合いを巧く掴めない。だが、気配が駄々漏れで在る。容易に見切る事が出来る。


 燈は目を閉じて、空気の僅かな変化を頼りに少年の気配を読んだ。


 迫り来る刃を、拳銃の腹で受け止める。今の自分は、誰にも討てはしない。戦騎騎士と謂えども、相手には為らない。


「残念だったな……小僧ッ!!」


 拳銃を捨て、身体を回転させる。


 回転の力を利用して、少年の顔に目掛けて裏拳を放つ。


「今の技は、蓮華れんげだな。お前、爪倉戎三かくらいぞうと同門か?」


「兄さんを知っているのか?」


 少年は、左腕で拳を防いでいた。


あぁ。お前なんか依りも、遥かに強い男だった!!」


 繰り出される短剣に依る中段突き。其れを仰け反る様にして、跳んで躱す。


 其れと同時に、少年の顔面に蹴りを入れた。


「兄さんを、斬ったのか?」


 着地しながら、問い掛ける。


「お前の兄は、自ら魔徒に成る道を選んだ。だが其の魂までは、魔徒に明け渡さなかった!!」


 少年は飛び蹴りを放って来た。


 右腕で受け止める。身体を旋回させる少年。


 ——少年の放った技は、蓮華で在った。ならば破る方法も、知っている。


 二発目の蹴りに、回転蹴りを被せてやった。


 後頭部に踵を受けて、地に伏す少年。


「僕が居る事を、忘れてないか?」


 後方から、殺気と共に声が掛かる。


 ——先程から、機会を窺っていた事に気付いていた。


 警棒を抜き放ち、レイピアの一撃を反らす。其の儘、レイピアを払わずに滑らせる様にして間合いを詰める。肩から相手に、ぶつかっていく。僅かにれる重心。


 下段から打ち上げる様にして、警棒を男の顎を狙って放つ。だが、空を切っていた。


 ——狙い通りだった。


 避ける男に、銃弾を浴びせる。回転蹴りの着地の際に、拳銃を拾って置いたのだ。


 だが男は、ダメージを負っていなかった。


「待ってくれ。そいつは、俺がやる!!」


 度重なる脳へのダメージで、意識が飛んでいたと思ったが、少年は立ち上がっていた。


「好きにするが良い……」


 男はレイピアを納めた。


 此方を睨み付ける少年。


 其の表情に、何故だか兄が重なった。


「斬る前に、聞いて起きたい。お前の名前は?」


「爪倉燈……お前は?」


「羅刹だ……」


 此方を睨み付ける其の眼には、迷いが無い。


 何時いつも道場で見ていた目だ。


 兄と同じ真っ直ぐな目だった。


「もう一度、言う。爪倉戎三は、お前よりも遥かに強い!!」



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