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咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第十三話【正義】

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「タリム……此の気配は、タタラか?」


 途轍とてつも無く大きな邪気を感じて、羅刹は飛び起きていた。


「えぇ……間違いないわ」


 以前に感じた時の様な、恐怖は無かった。其れは別に、タタラが弱く成った訳では無い。


 極界で遭遇したゼノンやアニマの影響が、そうさせているのかも知れない。恐怖に対する態勢が、明らかに強まっている。


 尤も今の自分では、勝てない事は明白で在った。だが自分は、戦騎騎士だ。魔徒から逃げる訳には往かない。


 タタラの邪気は、此処から近い場所から感じられた。


 黒のコートと短剣を手に取り、羅刹は動こうとしていた。


「死に行く気かね?」


 背後から、何者かに声を掛けられた。


 全く気配に気付けなかった。


 謎の来訪者は二人、居た。敵意や邪気は感じられない。


「驚かせて、済まない」


「お前達は、何者だ?」


 其の佇まいから、並々成らぬ手練れで在る事が解った。


 全く隙が無い。譬え戦騎を喚装していても、勝てる気がしなかった。其れ程迄に、男の気配は洗練されている。


「あら、矢紅しぐれ……お久し振りね。まさか、貴方が遣わされるとは、思ってなかったわ」


 どうやらタリムは、男の事を知っている様だった。


「簡単に、自己紹介をしておこう。私は天界より遣わされた天仕てんし、矢紅。皇渦陸仙おうかろくせんの一人だ」


 天仕とは、天界の神々に使える者達の総称。神と契約を交わして、不老の力を得た者で在る。


 神に仕える矢紅は、天丞院てんしょういん付けの戦騎騎士を意味する。


 其れも皇渦陸仙おうかろくせんと言う事は、先日に見えた鉈梛九と同格で在る。


 天界の最高戦力に、数え上げられる男。其の名に恥じぬ風格を、矢紅からは感じられた。


「儂は赤熊せきゆう戦騎バロンだ」


 野太い声。矢紅の戦騎の声だろう。


「彼等は強いわよ、羅刹。名実共に天界に名を馳せる英傑の一人なのよ」


 タリムに其処まで謂わせるのだ。


 相当な手練れで在るのは、間違い無いだろう。何よりも、其の佇まいだ。自然体で在りながら、微塵も隙が無い。此れ程の手練れが、天界から遣わされたと謂う事は、タタラ討伐に本腰を入れたと謂う事だ。正直、心強かった。


「そして此方こっちは、我が弟子の桐生塁留きりゅうるるだ」


 無言で軽く会釈する男。物静かな男だった。其の瞳の奥には、憎しみとも悲しみとも取れる光が宿っている。


「羅刹君。君の事は、知っているよ。咎人で在る事も知っている。君にタタラ討伐の手助けを、して貰いたい」


 真摯な眼差しを向ける矢紅。其の声は、とても穏やかで在った。


「元より、其のつもりだ。寧ろ此方から、協力を願いたいくらいだ」


 正に、僥倖で在った。


「君ならば、そう言ってくれると思っていた。詳しい話は、後にするとしよう。兎に角……タタラの気配が消えぬ内に、行くとしようか!」


 不思議と矢紅が居るだけで、安心感を得る事が出来た。


 其の眼には、正義のひかりが宿っていた。



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