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咎人の詩  作者: 81MONSTER(日本を代表する怪物)ポンコツ犬のタナトス
第十ニ話【傀儡】(後編)

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 校舎を走る刹那と神楽。其の周囲から、無数の魔徒が迫り来る。刹那の心を、焦りが撫で附ける。先程から、厭な予感がしていた。何故かは解らない。感覚的な事で在ったが、妙に厭な感じがするのだ。拭い切れない不安が、胸奥で渦を巻いている。


 神楽は舞う様にして、魔徒に触れる。其の刹那、魔徒は無力化される。其の傍らで、刹那は祈りを籠めてうたっていた。自分に唯一、出来る事で在った。祷りを籠めた詩に、願いを託す事しか出来ない。そんな無力な自分が、どうしようも無く情けなかった。


 次第に邪気が弱まり、魔徒達の動きが鈍く成る。


 二人は駆け抜けながら、次々に魔徒を無力化させていく。しかし魔徒の数は、余りにも多かった。次から次に沸いて来る魔徒の群れに行く手を阻まれて、歯痒い感情が刹那を襲っていた。


 刹那の体力は既に疲弊している。其れでも、止まる訳には往かなかった。


 次々に襲い来る魔徒達に、二人が押し潰されるのも時間の問題で在った。


「刹那よ、息が上がっているぞ!!」


 叫ぶ神楽にも、疲れの色が見えている。


 半神と言えども、半分は人で在る。人で在る以上は、体力に限界が在った。此の儘では、不味かった。だが、今の刹那に状況を打破、出来るだけの術は備わっていない。何も出来ない自分が歯痒くて、仕方が無かった。


 疲れの所為か、神楽に僅かな隙が生まれていた。其の隙を衝いて、数匹の魔徒が襲い来る。


「神楽さん、後ろッ……!!」


 刹那の叫び声に、金属音が重なった。


「油断大敵だな、神楽?」


 崩れ堕ちる魔徒達。


 突如として駆け付けた菴が、其処に居た。既に鬼神化している。


「待っておったぞ、菴よ……」


 笑みをしたためる神楽。其の様子は、何処か嬉しそうだった。


「其の様子だと、随分と無茶をしたので在ろう?」


「お気に入りの童子切安綱どうじきりやすつなが、お陰でボロボロだ……」


 不機嫌そうに、菴が呟く。


 童子切安綱とは、天下五剣てんがごけんに数え上げられる程の名刀で在った。


 其れでも霊石の身体を持つ魔徒を相手取るには、余りにも役不足で在った。


 霊石とは、戦騎に使われる地獄の鉱石で在る。故に現世に存在する鉱石では、刃を通す事は困難で在った。


 此処に来る迄の間、菴は随分と無茶な鬼神化を続けていたのだろう。


「此の刀を使え。御主の為に創った鎧通しだ」


 先刻、魔徒の身体を素材にして作った二対の刀だ。同じ素材では在るが、斬る事に特化して作られている。強度だけで考えれば、魔徒達よりも遥かに上だ。其の武器を菴が扱えば、結果は目に見えている。


 菴は鎧通しを帯刀すると、周囲の魔徒を次々に斬りたおしていった。魔徒の間接に刃を入れて、器用に斬って往く。其の動きが流れる様に、綺麗で在った。まるで、舞いを踊っているかの様だ。


「凄い……」


 思わず刹那は、見惚れていた。羅刹とは又、違った剣の動きだった。何方の方が優れているのかは、刹那には解らない。剣の事は一切、解らない。だが、菴が強いと謂う事は理解わかった。


「菴よ……余り、無茶はするな!!」


「解っている。だが、此の数だ。お前達を護るには、少々の無茶が必要だッ!!」


 二人の遣り取りを他所に、刹那は歩を止めていた。心の奥底から、厭な物が込み上げて来る。


「嘘……萌が、どうして此処に……?」


 神楽の結界が、校舎内の生徒を全て弾いている筈だった。


 其れなのに、依りにも依って萌だけが取り残されている。


 無数の魔徒に取り囲まれる様にして、萌が立ち尽くしていた。



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