陸
「さて、刹那よ。此奴等を、浄化するとしようか?」
神楽は切り出した。
「恐らく此奴等は、何者かに操られている。成らば、逆に利用してしまえば良い」
「そんな事、出来るの?」
「出来るさ。其れには《捧ぐ者》の力が、必要だ。刹那……お前の力が、必要だ」
刹那には、どうすれば良いのか解らなかった。
だが自分に出来る事は、祷る事と、詠う事だけだ。其れが、自分の持つ力なのだ。成らば、成すべき事は一つだけだ。
祷りを籠めた詩を、詠うだけだ。
——皆を護りたい。
其の想いが祷りと成り、詩と成った。
詩は光と成り、力と成った。
刹那の柔らかな声が、風に乗って舞った。鮮やかな光と成って、祷りの詩は魔徒を包み込んでいった。
神楽が其の光に、手を触れていた。目を閉じて、光の中の魔徒に触れていた。次第に光が大きく成って、目映い煌めきと成った。
尤も其れは、ほんの僅かな時間で在った。
「ふむ……即席にしては、上出来か」
魔徒が消えて、代わりに二対の刀が残っていた。
「一体、何をしたの?」
「魔徒の躯を素材に、鎧通しを作った。我々には、闘う力が無いからな。此れから合流する従者——菴の為に、武器を作らせて貰った」
そう説明する神楽の瞳は、優しい光を含んでいる。
菴は神楽に取って、只の従者では無いのだろう。刹那は直感的に、そう感じていた。
「貴方に取って、大切な人なんだね」
「嗟。菴は私に取って、掛け替えの無い友だ」
そう言って笑う神楽は、何処か嬉しそうで在った。其の辺の女子高生と何も変わらない。其れ程までに、神楽に取って菴は大切な存在なのだろう。
ふと、刹那の脳裏を、萌の顔が過ぎった。もしも未だ校内に残っていたとしたら……と、思うだけで不安が加速して往った。自分に取って、萌は掛け替えの無い友達だった。
「神様も笑うんだね?」
「笑うさ。半分は人間だからな。そんな事よりも、此処を離れるとしよう」
神楽の提案に、刹那は頷いた。萌の安否が気に成る。もしも何か在れば、命懸けで護る
刹那の瞳に、覚悟の暉が宿っていた。




