第九話:不抜の防塁(キャッチャー)、スタジアムの守護神
熊本市内の「水前寺野球場」。そこは、かつて平和な試合が行われていた場所ではなく、ガイアス帝国の「粛清部隊」によって蹂躙された戦場と化していました。
アルバートのチームメイトたちが窮地に陥る中、緋色の盾を背負った龍雄が、その砂塵を切り裂いて現れます。
「ヤレヤレ、遅いですよタツオ! ちょうどボクの『ハバネロ』が火を噴くところでした」
ボロボロになりながらも不敵に笑うアルバート。しかし、その前には帝国の最新鋭投手型からくりが、時速200kmを超える「マブイ弾」を野球の硬球に見せかけて乱射していました。
「……ここが、あんたたちの戦場か」
龍雄は静かに、しかし力強く、キャッチャーボックスの位置に立ちました。バットではなく、その手には**『赤龍の盾』**。
「ふん、そんな板切れで我が帝国の『重力魔球』が受けられると思うな!」
帝国軍の投手が、黒いマブイを込めた剛速球を放ちます。それは打者の手前で急激に沈み込み、地面を削りながら龍雄の胸元へ襲いかかりました。
龍雄は動じません。
阿蘇のマグマで鍛え上げた「根」を、球場の土の奥深くへと伸ばします。
「……根、固定」
ドォォォォォン!
凄まじい衝撃音が響きましたが、龍雄の一歩も引きません。球は盾に吸い込まれるように止まり、暴走するエネルギーはそのまま大地の「根」へと逃がされました。
「……ストライク。次だ」
驚愕した帝国軍は、機動力に優れた「騎兵型」のからくりを走者として送り出します。
「ならば足でかき回してやる! 行け!」
走者が凄まじい速さで二塁へスタートを切った瞬間、龍雄は捕球した姿勢のまま、右手の槍を「スローイング」の構えで突き出しました。
槍の石突から、アルバートが植えた「植物の蔓」が鞭のようにしなり、二塁ベース上の空中で、走者の機体関節をピンポイントで絡め取ります。
「……アウトだ」
武術と野球が融合した、龍雄にしかできない「守備」。それは、どんな豪速球も通さず、どんな盗塁も許さない、文字通りの鉄壁の要塞でした。
「おいおい、いい腕してるじゃねぇか。広島の『武神』ってのは、伊達じゃねぇな」
ベンチから、金属音が響く足取りで一人の男が現れました。
大学ジャージを羽織り、目が赤く光るサイボーグ――蔵野武です。
「俺は蔵野武。見ての通り、少しばかり体が重いんだが……お前のその盾なら、俺の『全力』を受けても壊れねぇだろうな?」
武は、自らの腕を変形させ、金属性のエネルギーを帯びた「斬撃バット」を構えます。
龍雄と武。改造された二人の英雄が、スタジアムの中央で初めて視線を交わしました。
「……ああ。いくらでも打て。俺が、全てを受け止める」
龍雄の宣言に応えるように、帝国の増援部隊がフィールドを囲みます。
しかし、もはや絶望はありません。
「捕手」龍雄が扇の要に座り、その背後には「最強の打者」武と「策士」アルバートが控えています。
ここに、史上最強の「からくり野球チーム」が真の姿を現したのでした。




