第七話:再会と改造、泥中の蓮
第七話:再会と改造、泥中の蓮
広島を脱出した龍雄たちは、南坂の導きで熊本県水前寺へと辿り着きました。そこには、南坂が「天才」と称する一人の留学生メカニック、アルバート・マッキントッシュが待っていました。
水前寺の古い町工場。そこは、機械の油の匂いと、瑞々しい植物の香りが混じり合う奇妙な空間でした。
「……ヤァ、ミナミサカさん。それに、君が噂の『マブイ1の武道家』ですか?」
麦わら帽子を被り、手にはスパナではなくハバネロの苗を持ったアルバートが、陽気に龍雄を迎えました。
龍雄が差し出した『赤龍の盾槍』は、帝国の「虚」の力に侵食され、かつての真紅の輝きを失い、まるで死んだ魚の鱗のように灰色に濁っていました。
アルバートは盾を詳しく検分し、難しい顔で呟きました。
「マブイの回路が完全に枯れています。これは通常の修理では無理デスネ。……でも、ボクの『園芸メカニック』なら、面白いことができるかもしれません」
アルバートの提案は、驚くべきものでした。
「君のマブイが『1』なら、足りない分は**『自然の生命力』**で補えばいい。この盾に、ボクが異世界から持ち込んだ『マブイを喰らう種子』を植え込みます」
龍雄は、静かに頷きました。「……やってくれ。この盾を、もう一度動かせるなら、なんだっていい」
アルバートの作業が始まります。
死んだ盾の装飾の隙間に、アルバートは特殊な「植物の種」を埋め込みました。さらに、龍雄の腕にあるあの火傷の傷跡から、わずかなマブイの残滓を導導線で盾へと繋ぎます。
「いいですか、タツオ。植物は泥の中から水を吸い上げ、美しい花を咲かせます。君の『マブイの低さ』は、もはや欠点ではなく、あらゆるエネルギーを吸収するための**『肥沃な大地』**になるのデス」
数時間の沈黙の後。
灰色の盾から、一条の緑色の光が走り、それが瞬く間にかつての「赤」と混ざり合い、深い**「緋色」**へと変質しました。
新生・赤龍
新機能:根絶の波動
相手の攻撃を吸収するだけでなく、盾から不可視の「根」を這わせ、大地のエネルギーすらも一時的に自分のマブイとして利用する。
槍の進化: リーチが伸びる際、植物の蔓のようにしなり、予測不能な軌道で相手を穿つ。
「……動く。前よりも、ずっと温かい」
龍雄が槍を振ると、かつてないほど鋭く、かつ重い風切り音が響きました。
改造を終えたその時、工場の外から巨大な地鳴りが聞こえてきました。
「……おっと、タイミングがいい。阿蘇の『松井家』の連中が、ボクの新製品のテストに協力してくれるそうで。タツオ、新しい武器の慣らし運転、やってみますか?」
龍雄の前に現れたのは、巨大な地熱蜂を従え、マグマのような熱量を放つ一族でした。
「武神」龍雄の、熊本での新たな修行が幕を開けました。




