第五話:法廷の盾、戦場の秤
南坂との激闘は、両者相打ちに近い形で幕を閉じました。龍雄の計算外の突進に、南坂は初めて「敗北の可能性」という非論理的な恐怖を感じ、それと同時に、胸の奥に眠っていた熱い何かを呼び覚まされたのです。
試合の数日後、龍雄の元に「黄金剣闘会」の代理人から一通の書面が届きます。それは、龍雄が持つ『赤龍の盾槍』の所有権を否定し、椎名からの継承を「窃盗」とみなして即時返還を命じる、卑劣な民事訴訟の通知でした。
「マブイ値の低い者が、これほど高度な遺産を所有し続けるのは社会的な損失である」――そんな傲慢な論理で、龍雄は唯一の武器を奪われようとしていたのです。
窮地に立たされた龍雄の前に、再び南坂が現れます。今度は剣ではなく、弁護士バッジを胸に。
「河井さん、この訴訟を引き受けましょう。……あの日、あなたの『不合理な一撃』に、私は自身の論理を完全に破壊されました。今の私は、その答えを知りたくて仕方がないのです」
南坂は、黄金剣闘会の背後にいる「ガイアス帝国」が、希少なマブイ逆流技術を独占しようとしている意図を見抜いていました。
物語は、法廷での審理と、黄金剣闘会が仕掛けた「所有権確定試合」が同時並行で進みます。
法廷で南坂が「魂の継承は数値ではなく、意志の同調によって成立する」と華麗な弁論を展開する中、コート上では龍雄が帝国の送り込んだ重装甲の執行官と対峙します。
相手の攻撃は、龍雄のマブイを奪うための冷徹な事務作業。しかし、今の龍雄には南坂から授けられた「戦術的アドバイス」がありました。
「河井さん、法も剣も同じです。相手の『正義』が重すぎるなら、その重みを利用して倒せばいい」
龍雄は南坂の教え通り、相手の巨大なエネルギー出力を盾で受け流すのではなく、あえて自分の中へ「法的に受け入れる」かのように深く引き込みました。
そして、法廷で南坂が勝利の勝訴判決を勝ち取ったその瞬間、龍雄の槍が執行官の胸部を正確に射抜きました。
「……計算、通りだ」
初めて口角をわずかに上げた龍雄。
こうして、龍雄は法的にも武術的にも『赤龍の盾槍』の正当な継承者として認められました。
氷野の「正義」、南坂の「理」。二人の強力な支援者を得た龍雄は、自分たちのような「持たざる者」が不当に搾取される世界を変えるため、さらなる高みへと歩みを進めるのでした。




