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第2話 ボクは気付いたら魂だった



 映像が途切れてから、ボクは呆然と口を開いた。


「あの……見ても全然わからなかったんだけど?」


 クロミヤさんは首を傾げる。


「そう? アマノくんなら物知りだし、こういうのの理解早いと思ってたけど」

「よ、よく知ってるねボクのこと。ほぼ初対面なのに……」


 混乱するボクをよそに、クロミヤさんは立ち上がり、森の奥を指した。


「とにかく。ここじゃ落ち着かないから。まずは移動しましょう?」


 ボクとしては今すぐ説明して欲しいんだけど……


「って、待って! 置いてかないで!」


 いつの間にか草むらに消えていくクロミヤさんを、慌てて追いかけた。






 辿り着いたのは、小川のほとりだった。


「とりあえず――脱いで」

「はああ!? なんで急に!?」


 女の身体でもそれはダメだって!

 ボクが顔を真っ赤にして抵抗すると、クロミヤさんは胸元を指差して言った。


「汚れ、洗った方がいいでしょ?」


 よくよく見ると、服は顔色以上に真っ赤に染まっている。

 恐る恐る指先で胸元に触れてみる。

 ぬちゃり、という血液の音と、ぽっかりとした風穴を感じた。


「え……なにこれ、死んでない? ボク? いや、この女性がか?」

「そうよ」


 淡々と答えるクロミヤさんが、ちょっと怖い。


「アマノくんの“魂”は今、そのエルフさんの亡骸に憑依している状態で、だから自由に動けるのよ」

「魂って、ワズマくんが言ってた……」


 クロミヤさんは頷きつつ、ボクの服を脱がそうとする。


「ちょっ! 自分で脱ぐからっ!」


 ボクは慌てて距離を取り、服を脱いで小川に飛び込んだ。

 冷たい水が肌に触れると、現実感がさらに増してくる。


 と、ボクは自分の巨乳――ではなく、胸元の風穴を改めて確認した。

 はっきりと“死んでいる”ことがわかる、大きく開かれた穴。


(”魂”ってことは、やっぱり……ボクはもう、死んでるってことなのか?)


 しかもボクの身体――天野(あまの) (ひろし)は、もうどこにもない。

 この“他人の身体”で、生きていくしかない。

 そう思った瞬間、悲しさに胸が締めつけられた。




 落ち込むボクをよそに、クロミヤさんは話を続ける。


「それでどうやら“魂”になった皆は、一人ひとつずつ“スキル”が備わっているらしいの」

「……“スキル”って、異世界もの小説でよく見る?」


 ということは、ボクにも何か“スキル”が備わっているということなのか。

 ボクはおもむろに自分の手を凝視してみる。

 すると次の瞬間――。


  +


【魂名:天野(あまの) (ひろし)

スキル名:観察眼

(凝視した対象のスキルや弱点などを見抜く)】


  +


 という文字列が、宙に浮かび上がった。


「あひゃあっ!!」


 驚くボクを見て、クロミヤさんはキョトンとしている。

 どうやらこの映像は、ボクにしか見えていないらしい。


「ボ、ボクのスキル……観察眼だって」

「ええ。だからアマノくんは頼りになるなって思って」

「つまり、ぼくがいるとスキルが把握しやすいから?」

「違うわ」


「え? 違うの?」

「ただ、話し相手が欲しかっただけなの」


 そう言って微笑むクロミヤさんに、ボクの方がキョトンとなった。

 ――と、そのときだった。



「……もう、来たのね」

「来た? って何が――」


「アマノくん、隠れて」


 指示されるより早く、草を踏む足音が近付く。

 ボクは慌てて小川へ身を沈めた。


「ようやく見つけたぞ!」


 現れたのは、いかにも悪人という顔をした、三人組の男たちだった。


「おい、さっき刺したはずの女エルフが生きてるぞ!」


 男の一人がボクを指差す。

 直後、ゴツっと鈍い音が森中に響く。


「バカか! ならテメエが刺し損なっただけだろうが!」

 

 殴られた男は頭を抱えて騒いだ。


「そんなことねえ! 絶対心臓を一突きしたぞ!」

「だったら、死者蘇生とかヤバいスキルでも使ったんだろ? なんたってコイツは“魔王の後継者”だしな」


「魔王、の後継者?」


 それってワズマくんのことじゃなかったのか?

 ボクは困惑する。

 それに気付いた男が、ニチャリと笑った。


「テメエ……何も知らねえのか? だったら、こいつを見せてやる。そしたら魔女を味方する気も失せるぜ」


 リーダー格の男は腕時計を取り出し、ボタンを押す。

 すると突然、空中に映像が浮かび上がった。


 ……っていうか、この世界、そんな近未来なの?


 浮かび上がった映像には、またしてもワズマくんがいた。




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