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第2話 出会いpart2

━━━ピーンポーン!

「は〜い!どちら様でしょうか······、茅鶴くん。どうしたの?」

「いや、今日も学校だし、一緒に登校しようかな~とか考えて······?」

 高咲は玄関前で彷徨いている三崎を自室へ招き入れた。

「登校まではまだ時間がありますけど······」

「それは···あれだよ、あれ···こんな近くに···、うちの生徒がいるとは思わなくてはしゃぎすぎたとか······」

 三崎は一ノ瀬さんのことを必死にとぼけながら話す。

 ヤバい!勢いで飛び出したものの、一ノ瀬さんにバレないようにすること以外何も考えていなくて、自分らしくないことを言ってしまったー!!

「まぁ、いいや!丁度良かったんですよ〜!今、もの凄く困っていることがあって茅鶴くんに手助けしてもらおうと思っていたんですよね」

「???」


 高咲は三崎を連れてキッチンへと移動した。

「え~っと、これはどういうことですか···?」

「見ての通り材料です!」

「僕がこれらを使って調理しろと···?」

「ちょっと違います。茅鶴くんには僕にお···」

「お······?」

「お···、お弁当の作り方を教えてください!!」


「よし、今日から自分でお弁当を作るぞ〜!1人暮らしでコンビニ飯ばっかだと健康に悪いし、お金も節約しないと!!」

 高咲は棚にしまっていたフライパンと包丁を取り出した。

「······で何を作ろうかな~······。·········そもそもお弁当ってどうやって作るんだろう···?」


「お弁当くらいなら僕も自分で作ってるから僕で良ければ教えるよ」

「やったー!!」

 高咲は三崎にお弁当を教わることになり、とても喜んでいる。エプロンと三角巾を着用してやる気満々に包丁と食材を手に持った。

「高咲さん、何を作りますか?·········とりあえずご飯と水筒の準備はするとして·········」

「······?何を作る?」

「もしかして何も考えて無かった···」

「うん!なんでも良いよ!!」

「なら定番の卵焼きとタコさんウインナーとか···?」

「いいね!」

 三崎は四角いフライパンをコンロに置き、冷蔵庫から残っていた卵とソーセージを取り出した。

「じゃあ、まずは卵を割ろうか···」

 三崎が卵に入れる調味料を棚から取り出していると高咲がオドオドしながら話し出した。

「卵って···どうやって割るんですか?」

「えっ···!」

 ここからだったか〜!

 三崎は盲点だったという雰囲気を醸し出しながら高咲に卵の割り方を教えた。

「分かりました!1度殻にひびを入れてから両手で掴んで割るんですね!」

「普通はそうだろ······」

「何か言いました?」

「何でもない。とりあえず割った卵に砂糖を入れて、良くかき混ぜる。そうしたら熱したフライパンに容器に入ってる半分の量のかき混ぜた卵を入れる。固まってきた卵をフライパンの下部に重ねて上部へ移動させる。空いた隙間に残った卵を流し込み、同じように固まってきた卵を重ねて皿にのっけると······完成」

「わぁ〜!凄~い卵焼きだ~!!」

「それは卵焼きを作ったんだからそうだろ······」

「後は卵焼きを一口サイズに斬るだけ!」

 高咲は包丁を両手で握り締め、上空から振り下ろす。

「待て!?何をしている」

「卵焼きを切るんですよ···?」

「···包丁の使い方って分かる?」

「そんくらい分かりますよ!(舐めすぎですって)こうやって、上空から振り下ろせば良いんですよね!」

「違う違う!?刃先をまな板にのせて、左手を猫の手にして切るんだよ」

「そうなんですね~······」

 本当に大丈夫なのか?このまま1人でお弁当を作れるようになるんだろうか······。

「よし!ウインナーは先っちょに3つ切り込みを入れてからフライパンに投入ね!」

「はい!」

 なんやかんや色々なことがあったが無事、高咲はお弁当を作ることが出来たのだった。

「今日はありがとうございました!」

「こちらこそ、あっ!もうこんな時間、学校へ行こうか」

「はい!」

 高咲は今作ったお弁当を学生バックにしまい込んだ。

 三崎と高咲は玄関の扉を開け、マンションをエレベーターで下る。エレベーターの扉は1階に着くと開いた。僕がエレベーターの間で入れ違いになるマンションの住人と会釈をしてエレベーターを降りようとした時だった。

「あれ、あなた見慣れない住人ね~?」

「あぁ、僕は一昨日から引っ越して来たばかりの高咲 夏奈と言います。今後ともよろしくお願いします!」

「あっ···!」

 ようやくことの重大さに三崎は気が付いた。そこにいたのは一ノ瀬 遥加だったのだ。

「あなた可愛いわね〜。僕っ娘も良いわよね~。あなた今日から私の部屋に住まない?家賃は無料になるわよ、しかも三食おやつ付きのね!もちろんお弁当だって作ってあげるわよ。やっぱりそうよね!住むわよね~。早速、あなたと私で使うキングサイズのベッドを発注するわ!」

「あの~、家賃が無くなるのは嬉しいのですが、良いんですかそんなにまで?」

「全然良いわよ、この後の美味しい汁が~~貰えるのなら···ジュルルル~!」

「美味しい汁···?」

 ヤバい!このままだと一ノ瀬さんの家に高咲さんが囚われてしまう〜!?

「あの~、一ノ瀬さん···」

「何、茅鶴くん?」

「高咲さんは男の子ですよ···」

 この瞬間、一ノ瀬の頭の中は男の子という強烈なフレーズでパンパンに詰められていた。

「おと···こ···の子······?」

「はい!!」

 一ノ瀬は膝からガクッと崩れ落ち、強烈な絶望と悲しみに思い悩ませるのであった。

「男の子···············いや、あり!!」



「お〜い!三崎ー!!」

 校門から全速力で走ってくる蓮の姿が視界に写る。

「おはよー」

「何だよ、そんなに疲れたような顔して?」

「疲れたような顔じゃなくて、疲れてんだよ······」

「元気ないな···。俺のエナドリでも飲むか?」

「良いよ。朝からエナドリは無理···」

 僕と蓮が会話しながら教室へ向かっていると、途中途中で体育祭の準備をする人たちを見かける。

「もう夏も折り返しか~!結局、部活とかでどこにも出掛けてないよな~!」

「そうだね······」

「体育祭終わったらどっか行く?」

「体育祭が終わったら、次は文化祭がくるじゃん」

「そうだったー······」

「当分は無理そうだね」

 僕たちは体育祭後の話をして盛り上がっていると、いつの間にか1年2組の教室に到着していた。

「じゃあ、またな~」

 僕は蓮と別れ、隅っこにポツリと置かれた席に座り、バックに入れて置いた本を読み始める。

 僕が本を読み始めてから少し時間が経つと教室後方の扉から複数の女子がぞろぞろと入って来た。いわゆるギャル高校生だ。教室中に聞こえる声で会話をするギャルたちは僕の座っている席から隣の席に集まりだした。

 なぜなら、ギャルたちを率いるギャルリーダーの席は僕の隣の席だからだ。

 くそ!夏休みが終わり、学校へ来て早々「席替えするぞー!!」とあの独身教師が言ったせいで僕は窓側の1番後ろの席にされ、その隣がギャルリーダーである桃瀬 汐音。俺の唯一のパーソナルスペースが無くなっちまったー······。休み明け早々大ピンチじゃねぇか!?ゼッテー許さん童貞教師!!

「まじありえなくね!」

「分かる分かる〜!あの渋谷にいた男でしょ。地味にカッコつけてて、通りかかった人たちの顔を見て、良い感じの女がいたらすぐにナンパする男。自分のことカッコいいとか思ってんのー!?」

「確か汐音ちゃんもナンパされてなかったっけ?」

「あぁ、されてたけど、汐音のガチめのキレ顔でびびって男共どっか行ってたよね~」

「ナンパするくせ~に度胸ねぇーとか雑魚過ぎるだろ!」

「そうだそうだ!昨日の雨樋くんの配信見た~?」

「見た見た!マジ、カッコよ過ぎるんですけど~」

「確かにコラボ先のVtuberの娘が音声トラブルとかで一時的に声が聞こえなくなった時、その人の代わりに司会とかして場を和ませてたよね~」

「マジ、あの時の雨キュンカッコよ過ぎ~!!」

 ギャルもVtuberの配信見るんだ······。しかも、最近ハマってる雨樋の配信見てるし、案外そんなに関わりづらい人たちじゃなかったりして······。

 僕はギャルたちの会話を聞くのを止め、手に持っている本をまた読み始めた。

 その様子を横目に見る影が呟く。

「茅鶴くんもブラ困読んでるんだ~······」



「なぁ、三崎〜。昨日配信見た···?」

「見たよ!」

「どうだった?」

「とっても面白かったし、雨樋くんがカッコ良かったんだよ!」

「おぉ、そうかー······」

 蓮は勝手に微笑んでしまう顔を三崎にバレないようにするために後ろを向いた。

「どうしたの?」

 蓮が向いた方向には転校したばかりの千藤さんが女子生徒に囲まれながら昼食を摂っていた。

「千藤さんって、桃瀬とかと気が合いそうなのに話してるとこ、見たことないな~」

「確かに······」

 僕の記憶をいくら掘り起こしても千藤と桃瀬のツーショットは出てこない。何か因縁的なものでもあるのだろうか···。

「蓮行くぞ~!」

 廊下の方から蓮を呼ぶ声が聞こえて来た。

「あっ!忘れてた。友達と昼食を食べに行く約束をしてたんだった。三崎ごめん!」

「良いよ、行ってきな···」

「ありがとう!」

 蓮は手を振りながら呼んでいた友達の下へ向かっていった。

 三崎は食べ終えたお弁当を学生バックに仕舞い、朝読んでいた本を再び取り出す。

「それってブラ困ですよね!三崎くんも読んでるんですね!!私その本、とっても好きで1日に何周もしちゃうんですよね~」

 突然、三崎の読んでいた本を見て教室にいた生徒が話しかけてきた。

「あ···あの···あなたは······?」

「あぁ、まだ名乗っていませんでしたね!私の名前は加藤 雫です。同じクラスだから知ってもらってると思ってました···」

「あっ、ごめんなさい!」

「良いですよ···!それよりもブラ困を読むのってこれが初めてってことですよね?」

「そ···そうです···」

「なら、私がブラ困の面白さを教えてあげます!まずは明日までに1巻を読み終えといてくださいね!」

 加藤さんはそう言うと元いた席へ戻ってしまった。昼も終わりチャイムが校内中に響きわたる。

「今日中に1巻全部······!」

 三崎は400ページほどの分厚い本を凝視するのであった···。

 三崎は翌日までに400ページもある分厚い本を寝不足になるまで読み続けた。


━━━キーンコーンカーンコーン。

 SHRを示すチャイムが鳴り、生徒が続々と席に着席していく。

 加藤さん、朝の空き時間に話しかけてこなかったな〜。

 

 おかしい···。絶対におかしい。昨日、加藤さんの方から近づいて来て、明日までに1巻を読み終えといてと言ってきたのに午後になっても一切話し掛けてこない···。

 そして、時は午後の授業が終わり、生徒たちが続々と部活やバイトなどに向かっている頃。

「読みましたか、三崎くん!!」

「読んできましたが·········。400ページしっかりと·········」

「それでは行きますか!!」

「えっ、どこへ···?」

 三崎は何も分からないまま、加藤さんに連れられ町田へ向かった。

「加藤さん、ここへ何用で?」

「決まってるじゃん!次巻とグッズを買いに行くんだよ!」

「えっ·········」

 僕の知っている距離感が間違っているんだろうか···。普通は昨日知り合ったばかりの人と2人で本やグッズを買いに行くのか······。

「まずはブラ困の2巻ついでに3巻も買っちゃおうか!後はブラ困好きは必須のブラ困缶バッチも買っちゃおう!!」

 加藤さんは次々とブラ困に関連のあるグッズを籠に放り込んでいく。

「よし!これである程度の準備は出来たー!!」

 加藤さんは会計を終わらせると商品の入った袋を三崎に受け渡す。

「はい、あげる!」

「えっ!?お金払いますね···」

「いいよ···。お金は要らないよ···」

「いや、申し訳ありませんし······」

「良いんだって!今後のことを考えたら······」

 こうして三崎は加藤 雫と出会ったのだった。


「おっはよー!!」

「なぜいるんですか·········。加藤さん」

「それは姉さんの料理の余りを届けに?」

「何で届けに来た加藤さんが不思議そうにしてるんですか···」

 こんな状況になっているのには3日前まで遡る。


 僕はいつも通り授業を終えて、借りているマンションに帰る。

 家に帰ろうと自室の扉を開けようとした時だった。

「茅鶴くん、帰っていたのね」

「桜さん!あれ、今日は撮影が長かったのでは···?」

「午前は順調だったんだけどね、午後から雨が降ってきて外ロケっていうのもあって、今日の撮影、延期になっちゃって······」

「そういうことでしたか···」

 僕が桜さんと話していると桜さんの部屋の扉が開き始めた。

━━━キィー!!

「あれ、桜さん。桜さんの部屋の扉が開いてます·········よ!?加藤さん!?どうして···!?」

「あれ、その様子だともしかしてお姉ちゃん私のこと伝えてなかった!」

「言ってないわよ······?」

「だから、あの時困った顔をしてたんだ〜」 後々聞かされたが桜さんと加藤さんは姉妹で、たまに加藤さんは桜さんの家に泊まるらしい。丁度、この日は加藤さんの両親が旅行へ行ってしまっていて、桜さんの家に泊まっていたという。

「何で加藤さんが······」

「私、今ここに住んでるの!」

「·········」

「大丈夫、三崎くん?」

 えっーと、右隣の部屋には加藤さん。左隣の部屋には高咲さん。上の階には一ノ瀬さん。·········嫌な予感が脳裏をよぎる。なぜ僕の部屋の周りには変な人や同級生が集まるんだ。

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