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7. 夢の中で、君が呼んだ名前
世界は、静かに終わっていた。
《ノモリア》の街は崩れ、空は裂け、記憶の断片は灰になって消えていった。
誰も僕を呼ばなかった。
名前を喰らう神として、僕は夢界の底に沈んでいた。
胸の奥には、白紙の本が残っていた。
最後のページにだけ、幼い筆跡が刻まれていた。
「ナオ兄だいすき」
その文字は、滲まずに残っていた。
それだけが、僕の存在の証だった。
僕は目を閉じた。
名前を捨てた僕に、もう誰も声をかけない。
それでも、胸の奥に灯った火だけは、まだ消えていなかった。
そのとき——
声が、届いた。
「ナオ兄」
妹の声だった。
遠くて、柔らかくて、少し泣いていた。
でも、その声だけが、僕を“僕”に戻してくれた。
僕は、誰でもない存在になった。
でも、妹の名前だけは、僕の中で灯り続けていた。
空に、名前が浮かんだ。
それは、誰にも呼ばれないはずの名前だった。
でも、妹だけが、最後まで呼んでくれた。
僕は、微笑んだ。
そして、静かに目を閉じた。
夢の中で、君が呼んだ名前。
それが、僕のすべてだった。
最後までご覧いただき、誠にありがとうございます。
お試しで書いた短い物語でしたが、いかがでしたでしょうか。
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