表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

6. 名を喰らう神は、誰の名前を残すのか

 世界は静かだった。

 《ノモリア》の街は崩れ、空は裂け、記憶の断片が灰のように舞っていた。


 誰も僕を呼ばなかった。


 名前を喰らう神として、僕は夢界の底に沈んでいた。

 胸の奥に、神鎖の紋章が焼きついていた。

 それは、誰かの名前を守る代わりに、自分の名前を捨てた証だった。


 白紙の本が、ひとりでに開いた。

 最後のページにだけ、幼い筆跡が残っていた。


【ナオ兄だいすき】


 その文字は、滲まずに残っていた。それだけが、僕の存在の証だった。


 空から、記憶の光が降りてきた。

 それは、誰にも呼ばれなかった名前たち。

 忘れられた声、捨てられた記憶、消えかけた存在——すべてが

 僕の中に流れ込んだ。


 僕は、誰でもない存在になった。

 でも、妹の名前だけは、胸の奥に残っていた。


『ナオ兄』


 夢の底から、声が届いた。遠くて、柔らかくて、少し泣いていた。

 でも、その声だけが、僕を“僕”に戻してくれた。


 僕は、神になった。名前を喰らう神。

 でも、最後の一つだけは、喰わなかった。


 妹の名前。


 それだけは、僕の中で灯り続けていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ