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2. 忘れかけた声が、夢の底から響く

 夢の中で、誰かが僕を呼んでいた。

 でも、その声はノイズ混じりで、はっきりとは聞こえなかった。


「……ナオ……に……」


 僕は目を開けた。《ノモリア》の街は、霧に包まれていた。

 建物の輪郭がぼやけていて、まるで誰かの記憶が崩れかけているようだった。


 路地の奥に、小さな部屋があった。

 扉は半分開いていて、中にはぬいぐるみが並んでいた。

 その中に、見覚えのあるものがあった。


 片目が取れたモモ。妹がいつも抱いていたぬいぐるみ。

 僕は部屋に入った。


 壁には、子供の絵が貼られていた。

「ナオ兄へ」と書かれた紙が、一枚だけ風に揺れていた。

 その文字は、滲まずに残っていた。


 そして——


 声が、響いた。


「ナオ兄、また名前呼んでくれる?」


 僕は振り返った。

 そこに、妹がいた。

 いや、正確には“記憶の中の妹”だった。


 髪飾りをつけて、モモを抱いて、笑っていた。

 でも、彼女の輪郭は揺れていた。

 まるで、今にも消えてしまいそうな夢のように。


 僕は言葉を探した。

 でも、喉が震えて、声にならなかった。


 妹は微笑んだ。

 そして、ぬいぐるみを僕に差し出した。


「名前ってね、呼ばれると、心があったかくなるんだよ。」


 その言葉だけが、空気の中に残った。

 僕は、モモを抱きしめた。


 そのぬいぐるみは、もう誰のものか、わからなくなっていた

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