ユニオン戦
「ユニオン箕輪家の結成だ」
ユニオン名が決まり盛り上がるメンバーたち。
ユニオンを表すエンブレムは、牛の頭部の輪郭の中に漢字で箕輪家と書かれているものとなった。
あとは紹介所に承認されれば正式にユニオン箕輪家の誕生となる。
一人は名前だけの幽霊団員、魔蛇との件が終われば解散となるが、一時的でも今ミノワたちは同じ『箕輪家』の家族だった。
「魔蛇とのユニオン戦が決まったぞ! 決戦は十日後、パーティー戦だ」
魔蛇の拠点から戻ってきたミノワとマイラを出迎えたカイトたちに開口一番そう言った。
「パーティー戦か、悪くはないっすね」
パーティー戦は、代表パーティー同士の対戦だ。パーティーの人数は七人以内と決まっており、故に七人パーティーのことをフルパーティーと呼ぶ。
パーティーの人数は多ければいいというものではい。戦闘時の指示や連携等を考えると、それ以上だと逆にマイナスになる。
実際にダンジョンに潜る際も八人以上でパーティーを組むことはない。
実質六人しかいない箕輪家にとって、最悪でも一名差しかつかないパーティー戦は都合がよかったといえる。
「パーティー戦か、連携練習します?」
一対一の戦闘とは違いパーティー戦で重要なのは連携だ、それを知っているリーヴはそう提案した。
「いや、時間もないし付け焼刃では逆にピンチになりかねん」
ミノワもタッグの経験はあるがさすがに勝手が違う、マイラに至ってはソロでの経験しかない。
元々パーティーで活動しているカイトたちとは違い経験のない自分たちが下手に加われば逆に連携を乱しかねない。
そう考えたミノワはユニオン戦までの間、カイトたちはパーティーでミノワやマイラと模擬戦闘を行った。そうすることで、カイトたちは連携の強化を、ミノワとマイラは対パーティーの経験を積んだ。
そしてついに決戦の日を迎える。
会場である闘技場は観衆で埋め尽くされ、周辺には屋台が並んでいた。
これから行われるのはユニオンの威信をかけた戦いだというのに、まるでお祭り騒ぎたった。
それもそのはず、ホーガンが十日後と言ったのは、別に箕輪家や魔蛇に準備の時間を与えたわけではない。
この戦いを盛り上げる準備をしていたのだ。
ユニオン戦はリベリオンの一大イベントだ。
とくに勝負方法が戦闘系となれば、住民にとって最大の娯楽なのだ。
ユニオン戦はいわば興行であり、リベリオンにとっても貴重な収入源だ。国や商業ギルドもバックアップしている。
当然、賭けの対象になっているので応援も熱狂的だ。
「すごい人ですね」
満員の観客席を見てマイラが言った。
「この中で戦うのかよ」
「すごい声ね」
「僕たちを応援している人はいないみたいでが」
観衆の殆どが魔蛇に賭けており箕輪家を応援する声は聞こえない。
観衆の殆どが敵というような状況なうえ、こんな大観衆の前に立ったことなどない、カイトたちは完全に雰囲気にのまれていた。
「こんな大勢の前で試合ができるのか、最高だな」
ミノワが感嘆の声を上げる。
「でも、みんな敵っすよ」
「今は魔蛇のファンかもしれんが、試合で魅了すればいい」
「いい戦いをすれば、観客はわかってくれるさ」とミノワは続けた。
自信に満ちた物言いに、皆ミノワの言葉を受け入れることができた。
ミノワには確信があった。
再び優日のリングに上がると発表があった当初、優日のファンはミノワに嫌悪感を抱いており歓迎するものはいなかった。
実際に試合では入場時に罵声を浴び、会場には今と同じようにミノワを応援する者はいなかった。
だが、サタンミノワではないミノワタウロスとしての戦いで、観客を魅了し試合が終わるころには拍手を、歓声をもらっていた。
そんな経験を持つミノワはいい戦いを、観る人の心に響く戦いをすれば観客はわかってくれると信じているのだ。
「自信を持て、お前たちならできる」
「はい!」
ミノワの言葉にメンバーは力強く返事をした。
「逃げずにきたみたいですね」
余裕の笑みを浮かべ現れたチュンたちにミノワたちの表情が引き締まる。
「人数が足りんようだが」
ミノワたちを見てチュンは言った。
「お互い様だろ」
ミノワたちも上限には一人少ないが、魔蛇のメンバーは更に少なく、現れたのは五人だった。
代表であるチュンに魔蛇の拠点で見たドラとアンコ、それと盾を持った重装備の小さな男、その男と同じ顔と背格好のローブを着た男の五人しかいない。
「ハンデですよ。Fランクの新米ワーカー相手にはこれで十分です」
ミノワたちを見下し笑みを浮かべる。
「ナメるのは構わんがさすがに子供は」
同じ顔をした二人の男、身長はミノワの半分くらいしかない彼らはどう見ても子供に見える。
「アイツ失礼だな。なあ、チーホー」
「うん。失礼だね。テンホー」
子供扱いされたことが気に食わない二人は、不満を隠すことなくそう言った。。
「あいつらはハーフリンクです。背は低いですが大人です。プライドが高くて、子供扱いされるのを嫌うんですよ」
ハーフリンクは小柄な種族で、成長しても背丈は人間族の子供くらいだ。子供と間違われるのを嫌うので、見た目で判断すると怒らせるので注意が必要だ。
「リーヴ、すでに戦いは始まってる。相手の冷静さを欠くため、アニキはわざと挑発したんだ。そうですよね、アニキ」
そう言ってカイトはハーフリングの男たちをさらに挑発した。
「これはすまなかった」
「えっ!?」
ミノワは自分の非を素直に認め二人に謝罪をした。
「アイツいい奴かも。チーホー」
「いい奴かもね。テンホー」
どうやら鎧に身を包み、盾とハルバードを持っているのがチーホーで、ローブを着た魔法職がテンホーというようだ。
「「でも」」
「「アイツはは殺そう」」
「!!」
調子に乗り二人を挑発をしたカイトにバルハードの切っ先が迫る。
「やめな!」
チーホーの突きがカイトの喉に突き刺さらんとしたその時、アンコの声にチーホーの突きが止まる。
「あんたもだよ」
魔法を放つ直前だったテンホーも魔法陣を解いた。
「開始前に殺って反則負けになったらどうすんだい」
アンコが叱ると二人はシュンとした。
「あんたのことは知ってるよ。役立たずのクレリックだってね」
「……」
テンホーとチーホーを戒めたアンコはマイラの方に向き直ると、蔑むように言った。
「クレリックの獣人族がワーカーを目指すんじゃねーよ」
一般的に獣人族は他の種族と比べマナが少ない。マイラのマナはそんな獣人族の中でも少ない。
魔法職の優劣はマナによって決まるといっても過言ではなく、そう考えるとマイラは魔法職として誰よりも劣っているといえる。
「……」
「何とか言えよ。ビビッて声も出ないのかい」
マイラはアンコの挑発にも無言を貫いた。
「それにしてもけったいな格好だね」
すでに、ブラックディ・クーガーを装着しているマイラの姿をアンコが嘲笑う。
マイラのギフトには時間制限があるが、敵味方、多くが入り乱れるパーティー戦、相手の力もわからない以上、出し惜しみせずいこうと決めた。この戦いは絶対に負けられないのだ。
「派手な恰好で威嚇かい。それじゃあ獣と同じだよ、獣人族の面汚しが」
苛立つアンコはそう吐き捨てた。
「……」
それでも無言を貫くマイラにアンコの苛立ちはさらに募る。
「ウシとネコ、あとはサルか? 畜生の集まりじゃないか、ユニオン名は畜生がお似合いだったんじゃないか。ワーカーなんぞやらずに畜生は畜生らしくしてろ!」
「ネコではありません! これはクーガー、ブラッディ・クーガーです」
ミノワを家族を貶され、始めてマイラは口を開いた。
「それに、そう言われるのは結構ですが、その畜生に負けるあなたは畜生以下です」
「アタイが負けるだって、ナメやがって、殺してやんよ!」
「待て!」
腰のスティレットを抜き襲い掛かるアンコをチュンが制止する。
「おまえが挑発に乗ってどうする。双子のことを言えんぞ」
「すまない」
「焦らなくても戦いが始まれば好きなだけやれる」
チュンは口角を上げそう言った。
「すまんな、うちの者は血の気が多くて」
「気にするな、試合前の襲撃なんて悪役はよくやることだ」
「ほう、我々が悪役と?」
「違うのか?」
「なかなか面白い方ですな」
そう言って笑うチュンの目は笑っていなかった。
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