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ミノタウロスじゃありません!  作者: name


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敵地へ

「ここだ」

 目的の建物の前で足を止める。

 その建物の入口には三匹の蛇が絡み合うエンブレムが掲げられている。

 このエンブレムこそ魔蛇のエンブレムであり、そのエンブレムが掲げられているこの建物は魔蛇の拠点だ。


「いくか」

 ミノワたちは魔蛇の拠点に足を踏み入れた。


 中には数人のワーカーがいたが、皆覇気のない疲れ切った目をしていた。


「チュンはいるか?」

 遠巻き見ていた一人のワーカーにホーガンが声をかける。

 ここにいるのは、ミノワ、マイラ、ホーガン、ジーナの四人だ。


「これは、これはホーガン所長」

 ホーガンの声を聞きつけ現れた初老の男、この男こそ魔蛇の代表であるチュン。その容姿から白髪のチュンと呼ばれている。


 チュンの後ろには二人のワーカーの姿があった。

 一人はオレンジ色の髪を逆立てた気の荒そうな男、その背中には大剣を携えている。もう一人は皮の胸当てをした軽装備の女。頭に見える髪と同じ赤茶色の耳は、女が獣人族であることを表していた。

 ユニオンの代表であるチュンと共に現れたこの二人は魔蛇の幹部である。


「面白い恰好をした人を連れてますが、何用ですかな?」

 牛のマスクにマント姿のミノワをチュンたちは嘲笑する。


「このっ!」

 今にも飛び出さんとするマイラを、ホーガンが左手で制す。


「用があるのはこの男だ」

「ほう」

 チュンは改めてミノワに視線を向け、値踏みをするようにミノワの全身を眺めた。


「はて? 面識はないと思いますが」

「オレの名はミノワタウロス、ユニオン『箕輪』の代表だ」

「ほう、噂は聞いてますよ。なんでも剣闘王の舘を買い取ったとか、そんな方がワシに何用ですかな?」

 わざとらしく驚きなが要件を訊くチュン。


「魔蛇にユニオン戦を申し込みにきた」

 飄々と受け答えするチュンに対し、ミノワはストレートに要件を伝えた。


「Fランクばかりの新設ユニオンがオレたちと勝負だと! ナメてんじゃねーぞ!」

 チュンの後ろに控えていた男が怒声を浴びせる。


「落ち着きな、ドラ」

「でもよ、アンコ」

 獣人族の女が男をなだめる。

 どうやらオレンジの髪を逆立てた男がドラ、獣人族の女がアンコという名前らしい。


「条件によっちゃ、楽して稼げるいいカモじゃない」

 アンコは口角を上げそう言った。


「なぜユニオン戦を?」

 ドラとは違いチュンは冷静に理由を訊ねた。


「こいつが魔蛇に世話になってな」

 ミノワはマイラを抱き寄せそう言った。

「おたくの執事を? 存じませんな」

「マイラは執事じゃない。イーたちの件と言えばわかるだろ!」

 ドラは箕輪がFランクばかりのユニオンだと知っていた。おそらくマイラが執事ではなく、箕輪のメンバーだということも承知しているだろう。だがチュンは含み笑い浮かべ、しらを切る。

 そんなチュンの反応に、ミノワの声は大きくなったが、ミノワの迫力にも動じることなくチュンは口を開いた。

「おお、あの件ですな。まさかあんな凶悪な奴が魔蛇にいたとは驚きました」

 イーたちのことは知らないと芝居がかった言い方で答えたのだ。


「お前がやらせているんだろ。魔蛇の噂は聞いている」

「まさか、こちらも迷惑しているのですよ。それに噂は噂ですよ」

 当然ながら、本当のことを答えるはずもなくチュン言葉を続けた。

「それにユニオン戦も受ける理由がないですな。こちらになにかメリットでも?」

 ミノワたちとは違い、魔蛇にはユニオン戦をやる理由がない。ドラとアンコも「メリットを示せ」とチュンに同調する。


「オレたちが負けたらこれをやろう」

 ミノワは腰のベルトを外し頭上に掲げた。

「ほう」

 ミノワを王者たらしめるそれは、純金製で宝石が鏤められた王者が持つに相応しい豪華なもので、億を超えるチャンピオンベルトだ。

 それを見たドラは興奮し、アンコは口笛を吹いた。


「で、こちらが負けたら」

「拠点を捜索させてもらう」


 ミノワの要望は魔蛇の拠点の捜索だった。

 当初ミノワはマイラへの謝罪と魔蛇の解散を求めるつもりでいた。

 しかし、それでは第二、第三の魔蛇が出てくるだけで意味がないと、悪事の証拠を見つけ、背後にいると噂される貴族を捕えねば解決にならないと、ホーガンに言われ拠点の捜索としたのだ。


「いいでしょう。それで勝負の方法はこちらで決めても?」

「ああ」

 ユニオン戦は申し込むより受ける側が有利だ。

 理由は勝負の方法は受ける側が決めるからだ。

 ユニオン戦をやりたい申し込み側は、それに従わないとユニオン戦ができないのだ。


「パーティー戦でいかがかな?」

 パーティー戦とは文字通りパーティー同士の戦いである。

 パーティーの人数は七名までと決っており、ミノワたちにも悪い提案ではなかった。

 メンバーが少ないミノワたちは総力戦を提案されるものと考えていた。だが、意外にも魔蛇はパーティー戦を提案してきた。

 当然、魔蛇の方にも理由があった。

 中規模ユニオンとはいっても、半ば騙されるように加入したメンバーも多い。冴えない新米ワーカーを見つけては声をかけ、最初は優しく接し魔蛇に勧誘する。

 しかし、加入した後豹変し、犯罪まがいのことをさせられるのだ。

 それが嫌で抜けようとしても撤回するまで説得と称した拷問が行われ、抜けられない。


 抜けたくても抜けられない。

 拠点にいたワーカーに覇気がなかったのはそのためだ。


 今回のユニオン戦でも、抜け出したいメンバーにとっては魔蛇の敗北こそ勝利といえる。

 そのような連中は役には立たないし、逆に後から討たれかねない。

 それで総力戦を避けパーティー戦を提案したのだ。

 それにチュンには自信があった。

 Fランクの、それも新米ワーカーが集まったユニオンに負けるはずがないと。


「了解した」


「コンニチワークは魔蛇と箕輪のユニオン戦を承認する。勝負は十日後、闘技場で行う。ユニオン戦が終わるまで箕輪の所有するベルトはコンニチワークで預かり魔蛇の拠点には職員を駐在させる」


 ホーガンはそう宣言するとミノワからベルトを預る。

 ユニオン戦の報酬が金銭や物品の場合、勝負が終わるまで紹介所が預かることになっている。それは報酬が確実に支払われるようにするためだ。

 また、今回ミノワが求めた報酬は魔蛇拠点の捜査だったため、不都合なものが持ち出されないよう職員を駐在させる処置をとったのだ。


「いい勝負になればいいですな」

「気にしなくてもたっぷり楽しませてやるさ」

 薄ら笑いを浮かべるチュンにミノワははっきりと言い切った。


お読みいただきありがとうございます。

次話もご一読いただければ幸いです。

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