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ミノタウロスじゃありません!  作者: name


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コンニチワーク

「ここか」

 ミノワは建物を見上げ呟いた。

 入り口には『コンニチワーク』と書かれた看板が掲げられている。

『コンニチワーク』ワーカーに仕事を紹介するここは、ワーカーから紹介所(ワーク)と呼ばれている。

 ミノワは視線を戻すと歩を進めた。


「いらっしゃ――」

 挨拶をしようとしたジーナは、入ってきた人物を見て言葉を失う。

 牛のマスクを被ったパンツ一枚の男。その肩には男三人を担いでいる。

 マスク男の趣味なのか担がれている男たちは三人とも縛られていた。


「変態?」

 ジーナの口から自然と言葉が漏れた。

 紹介所にいたワーカーも、ミノワの格好にザワついている。


「求職ですか?」

 ジーナもプロだ。すぐに気持ちを切り替え職務を全うする。

 初めて見る人物だが、あの鍛え抜かれた体を見るに依頼者ではない。それに担がれている縛られた三人の男、恐らくこの街にきたばかりのワーカーだと結論付けた。

「違う」

 否定の言葉、ジーナの予想は外れた。


「失礼しました。てっきり賞金首を捕らえたワーカーの方と」

 担がれた男たちに視線を向けジーナは言う。

「こいつらか」

「ぎゃっ」

 肩に担いでいた男たちを落とす。縛られ受け身も取れず体を床に叩きつけ悲鳴を上げる。


「こいつらの件という意味では正解だ」

「どういうことでしょうか?」

 顔が変形している者もおり最初は分からなかったが、よく見ると縛られている男たちに見覚えがあった。

 たしかイー、アル、サンとかいう名の兄弟だ。Fランクのワーカーだが、依頼を受けているのを見たことがない。

 ワーカー試験を受ける者の中には、ワーカーの肩書が欲しいだけの者もいる。三人もその類だろうと思っていた。

 しかし、最近はちょくちょく紹介所で見かけるようになった。ただし、依頼を受けるわけでもなく紹介所に来るワーカーを眺めているだけだった。


「トップをだせ」

「所長ですか? ご用件を伺っても?」

 普段から荒くれ物のワーカーの相手をしているジーナは怯むことなく応対する。

「落とし前をつけにきた」

 その言葉に紹介所は更にざわつき、一人のワーカーがミノワに近づいてきた。


「紹介所でイキがらない方がいいぜ」

 ポンポンとミノワの肩を叩きながら嘲笑うように言った。


「下っ端に用はない」

「何だと!」

 その言葉に男はキレる。

 怒りを露わにし殴りかかるが、男の拳が当たるよりも早くミノワの頭が相手の頭を捉えた。

「ウガッ」

 ゴツンと響く鈍い音とともに男が崩れ落ちると、その光景に他のワーカーたちが殺気立ち、武器を手にミノワを取り囲む。


「ワーカーってのは、一人では戦えない腰抜けばかりのようだな」

「ナメやがって!」

 ミノワの煽りにワーカーたちの怒りが頂点に達し、一斉にミノワに襲い掛かった。


「何事だ!」

 その声にワーカーたちの動きが止まる。

 そこにいたのは馬蹄型の口髭を蓄えた中年の大男。服の上からでもわかる張りの良い筋肉はとても中年のものとは思えず、その男の纏う空気にミノワは鳥肌が立った。


「武器も持たない奴を寄ってたかって襲うとは、資格剥奪するぞ」


「ホーガン所長」

 中年マッチョをそう呼んだジーナ、ただ者ではないと感じたが、この男こそ、この紹介所のトップ、ミノワが探していた男であった。


「お前がここのトップか?」

 所長と呼ばれてはいたがミノワは一応確認する。

「オレが所長のホーガンだが、愉快な格好をしてるお前さんは何モンだ?」

「オレはミノワタウロス、プロレスラーだ」

「プロレスラー? 何かは知らんがオレに何のようだ?」

「敵討ちだ」

「敵討ち? オレはお前など知らんが」

「オレのことは知らなくてもマイラは知ってるだろ? 何故マイラを襲わせた。マイラが獣人族のクレリックだからか? マナが少なくワーカーとして役に立たないと思ったからか? だがな、マイラは強いぞ!それこそお前が放ったそこの刺客どもよりもな!」

 声を荒げホーガンを問い詰める。


「マイラ? 誰だそいつは? 悪いが何のことを言っているのかさっぱりわからん」

 全く身に覚えのないホーガンは困惑する。

「しらばっくれるな、お前がこの男たちに襲わせた獣人族の女だ」

 ミノワが指差した先にはロープで縛られ転がっているリーたちの姿があった。


「誰だありゃ?」

 ワーカーの仕事をしていないリーたちのことなどホーガンの記憶になかった。


「リー、リャン、サンというFランクのワーカーですよ、ホーガン所長」

 ホーガンの背後から眼鏡をかけた黒髪の女性が現れた。

「ちなみにマイラさんは先日話した受験者の方ですよ」

 マイの呆れたような言葉を「ガハハハハ」と大きな声で笑い飛ばした。

「お前みてえに登録しているワーカー全員を覚えられるか」

「所長の物覚えが悪いだけじゃないですか? ねえ、ジーナ」

「は、ひえ」

 返答に困る内容を突然振られ、さすがのジーナも狼狽える。

 そんなジーナを見て微笑むと姿勢を正しミノワを見据えた。


「私は副所長のマイと申します」

「ミノワタウロスだ」

 丁寧な物言いにミノワも自身の名を名乗る。

「ミノワタウロスさんは、何か勘違いをしていらっしゃるようですね」

「勘違い?」

 ミノワは訝しげに訊き返す。

「そこの男たちは確かにワーカーですが、今回の件にコンニチワークは関与してません」

 凛として答えるマイの姿はとても気高く、嘘を吐いてるようには見えない。

「じゃあなぜマイラは殺されかけた!」

「殺されかけた?」

 マイの視線がリーたちを捉える。

 ミノワはゾクリとした、マイが一瞬だけ見せた冷淡な瞳に。


「そういうのは本人に訊くのが一番だな」

 突然の大声にミノワの緊張が解ける。

 声の主はホーガンだった。ホーガンはそのまま階段を降り、イーたちの前へ歩み寄った。


「「「ひっ」」」

 三人はホーガンの威圧感に恐怖する。


「話してくれるよな、兄ちゃん」

「……」

「黙ってたらわからんだろ!」

 ホーガンがカウンターを叩くと三人は縮み上がる。


「は、はい」

 ホーガンの紳士的(?)な問いかけに応じたイーは、マイラを襲った理由を話し始めた。 

お読みいただきありがとうございます。

次話もご一読いただければ幸いです。

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