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第6話 無煎(壱連)  It’s not my cup of tea

「なんで?私はこんなこと望んでいなかったのに?こんなものいらない。だから、お願い、返して。」


あれは誰?

幼い少女が泣いている。

黒い髪の黒い瞳の幼い少女が。

心が壊れるのではないかと思うくらい、身体全部で泣き叫んでいる。

あれは誰なの?


「これは、お前の宿命。お前が生まれる前からの密約。決して逃れることはできぬ。」


静かな声が場を圧倒する。


「・・・・・。」


 泣き崩れていた彼女は顔を上げてくうを見つめる。

何もないそこに何かを見出したかのように、彼女は睨みつけるかのようにそのくうを見つめると笑いだした。

痛々しいほどの乾いた笑い声が部屋中に響く。


「アハハ、笑わせないで。私は宿命など信じない。誰に縛られることも私が私に許さないわ。」


「だが。」


変わらず静かな声が、少し愁いを帯びたかのように響いた。


「逃れさせては、やれぬ、のだ。」


「いいえ。」


彼女は真摯な瞳でくうに相対して立ち上がった。


「私は、私のもの。」


少女は天に向かって叫んだ。


「運命よ。受け取るがいい。対価は私。私自身よ。」


そして彼女は両手を自分自身に向かってかざした。


光、光、光が彼女に差し込む。


彼女は光の渦に融けて螺旋に消えた。


そして闇だけが残ったその部屋に、声ではなく ”想い”が木霊する。


「そなたを・・・。失いたく、なかった、のだ。」


ヒューウ、ヒューッと悲鳴のような竜巻が漆黒の闇に吹き荒れ、そしてすっと消えた。


その虚無の果てには・・・もう何も無い。



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