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ラーメン屋とイタリアン



「──診断は終了しました」

 目頭を揉みほぐす動きを真似しながら高山愛里朱たかやま ありすが渋く言う。

「……って、急にすごい名医感出してきたねえ。どうしてえ?」


「自分の世界に入った感すごいなって思いました」

 黒縁ぐらす氏も呟く。

「格好、悪の総統なのにな」


「君たちがお医者さんみたいって言ったからだよぉ……?」


 俺は笑顔のままで拳を握りしめた。マクスウェル総統、怒っちゃうぞ?

「ごほんっ! ……気を取り直して見解をお話しますね。結論から言いますと、ぐらす先生のYouTubeチャンネルには、典型的な『ジャンルのブレ』が起こっています」


「……ブレですか?」

 黒縁ぐらす先生が眉をひそめる。


「ええ。ターゲット層がブレているんです」

 俺はスマホに彼女のチャンネルを表示させて指で示していく。

「先生の配信は、率直にいって見事でした。『お絵描きのレクチャー』はどれも丁寧で分かりやすいし、逆に『おふざけ配信』はギャグに振り切っているから、変な絵とかリスナーの無茶振りに応えるイラストとかで、門外漢の俺でも笑いやすかったです」


 でも、と俺は続ける。


「でも、どちらのシリーズも完成度が高いからこそ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んです。絵を上手くなりたい人にとっては不真面目な動画が邪魔だし、VTuberの配信を楽しみたい人にとっては解説動画が邪魔になっている」


「な……なるほど……?」

 黒縁ぐらす氏は自分のスマホに目を落とした。

「邪魔……かぁ……。確かに私のチャンネルでは二つのシリーズが走っていますけども……面白く作れていても、やっぱり邪魔なものですかね……?」


「誤解しないでいただきたいのですが、ぐらす先生の配信は間違いなく面白いです。おつぐらす〜〜っ! も癖になります。あ、今度コスプレしていいですか?」


「ちょっと嫌寄りかもです」


「分かりました」

 俺はめげない。しょげない。泣いちゃダメ。

「間違いなく面白い配信ではあるのですが……『ジャンルがブレているか・ブレていないか』に『面白いか・面白くないか』は無関係なんです」

 俺はスマホで飲食店の画像を表示した。

「まるで日ごとにランダムでラーメン屋とイタリアンのメニューが入れ替わる食堂みたいに『毎日行っていいか分からないお店』になってしまっているんです。どちらも美味しいんだけれど、イタリアンが好きな人にとっては毎日通えるお店ではないから、習慣になりきらないって感じですね」


「はああぁぁ、その例えは……なるほど……分かりやすいな〜〜……」

 黒縁ぐらす氏は顎に手をあててスマホを睨みながら唸る。


「YouTubeは、いかに視聴者の習慣になるかの勝負ですから」

 俺は続けた。

「本当は『どんな料理でもこのシェフの料理だったらなんでも毎日食べたい!』と思ってもらえるのが理想なんですが……それはまあ、究極なので」

 俺は苦笑いする。

 誰でも「究極」に至れたら苦労はしない。

 もちろん一人二人ならこの域のコアファンは誰でも獲得しうる。

 しかし、チャンネル登録者数を無限に増やしていこうとすると至難の業になる。

「とまあ、これが、複数のジャンルの動画を投稿している配信者が陥りがちな『ジャンルのブレ』です。ぐらす先生のチャンネルはハマってしまっている印象です」


「とても……参考になります……」

 黒縁ぐらす氏は頷いた。

「ちゃんと知識のある方だったんですね……。広告で女を呼び出してVのコスを見せつけるタイプの変態だとばかり……大変失礼しました……」


「ぐらす先生? いま失礼ですよ?」


「てっきり、自分をマク様だと思っている異常者だとばかり」

 黒縁ぐらす氏は聞き捨てならない暴言を吐きつつ、ぎゅっとスマホを握りしめて俯いた。

「なるほどなあ……。がむしゃらに頑張っていましたが、それが悪い方向にいってしまってたんですねえ〜〜……。そしたら佐々木先生、私はどうしたらいいんですかね……?」


 原因に仮説はできた。

 次は解決策の話だ。




 今回も読みいただきありがとうございます。


 お詳しい方は分かると思いますが、仮装されているVTuberさん達には元ネタがあります。


 続きを書くモチベーションのために、

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