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オレ以外、みんなマヌケだ



 ──この世のオレ以外、みんなマヌケだ。


 兵吾ひょうご逸平いっぺいは心の底からそう思っている。


 親の七光りで芸能界の玉座に座り図に乗って(イキって)いる王社長も。

 偉そうに精力と暴力を振りまいているキ●ガイな金城かなしろも。

 オレのトリックにコロっと騙されている無知なVライバーどもも。


 ドジ。アホ。バカ。クソ。

 マヌケもマヌケばーっかりだ。


 裕福な家庭に生まれた兵吾逸平は、二十数年の人生を他人の善意に甘えて生きてきた。

 口八丁で信頼を勝ち取り、金と愛を貢がせては、さっさと裏切って勝ち逃げする。

 そうして足元を掬われた恩人達を、感謝するでもなく蔑みながら、こう嘲笑うのだ。


 ──ぶははははっ! あー、ざまーねぇなマジでっ!


 ずっと、そんな人生を送ってきた。

 ずっと、それで生きてこられたのだ。





『ははっ! 初回の配当金にしては羽振りが良いな!! ありがとう兵吾くん! さすが若者は勢いがあるなあっ!!』


 渋谷の一画。

 夜のキャバクラだった。


 電話の向こうから轟く大声に、銀髪の男・兵吾逸平は顔をしかめながらおべっかを返す。


「いやいや、金城さんには負けますよ。金城さんみたいなベテランにはぜんぜん及ばないです、マジで」


『謙虚だなあ!! ははっ!! あ!! そういえば兵吾くんっ!! 和寺わじ部長を知らないか!? ははっ!! ちょっと前からオフィスで見ないんだ!!』


「ああ。和寺なら、今頃インドネシアっすよ」


『ははっ!! 君の仕業か!!』


 兵吾逸平はニヤリと笑った。


「あいつ、マジで使えないんで、ちょっと飛んでもらったんすよ」


 金城と兵吾が着任した直後のことだ。

 すっかり萎縮していた古参の社員たちを気遣ってか、和寺部長が兵吾に歯向かってきたのだ。


 ──こんなことはやめてくれ……!

 ──共に戦ってきた仲間が島流しにあって、ライバー達がどんな気持ちで配信しているのか、君には想像ができないのか……!


「文句ばっか言いやがるんで、冴えねー海外事業部にぶっ飛ばしてやりましたわ」


『ははっ!! いいな兵吾くんっ!! 若くして()の使い方も知っているわけだ!!』


 闇。暴力。恐喝。理不尽で比類無き力。

 やる時にやれねーから、和寺部長は一回りも歳下なオレに遅れをとった。


 ざまーねぇな、マジで。


「兵吾くん、山田さんから連絡きたよ!」

 金城との通話をきった直後、兵吾の会社の部下である若手社員Aが嬉々として話しかけてきた。

「ぜひ投資したいだってさ! 俺らの配当金の実績見せたら一発だった! 10年で100%儲かる配当だもん、やっぱ断られねーよ!」


「だろ? オレの事業は完璧なんだよ」


「すげーよ兵吾くん!」と若手社員A。

「ずっとついていくぜ!」と若手社員B。


 兵吾は高級な柄物のスーツでソファに深くこしかけたまま、傍らのキャバ嬢を抱き寄せつつ、パーマのかかった銀髪の奥から部下たちを眺めた。


 ──ずっとついていく?

 

 こいつらも平和ボケだ。

 誰がついて来させるかよ。


 お前らもただの使い捨てだ。

 オレの代わりに手を動かす労働力。

 オレを崇めて自尊心を満たすための太鼓持ちにすぎねえ。


「……手を動かしてるお前らにはいつも助けられてるよ。マジで感謝してるぜ」

 兵吾逸平は微笑みを形作って、心にもない謝意を吐いた。

「今日もオレの奢りだ。ぱーっと楽しもうぜ?」


「最高だぜ兵吾くん!」と社員A。

「一緒に成り上がろうね!」と社員B。


 部下達を遊ばせてやりながら、兵吾はほくそ笑む。

 そう。金ならいくらでもあるんだ。

 何も気にする必要は無い。贅沢するだけして、最後は「切れ」ばいい。


「兵吾様、失礼いたします。お連れ様にヘルプのをつけさせて頂いてもよろしいでしょうか」


 キャバクラの黒服ボーイに話しかけられて、兵吾はじろりと睨みつける。


「あん? いちいちオレに聞くな! つーか、そいつら体験入店(体入)か? レベル低ぃ女なんざ──」

 黒服ボーイが連れた三名の若い女の子に目をやって、兵吾は、ふと真顔になった。

「──おいおいマジかよ。悪くねえじゃん?」


 二人は子供っぽかったが、一人だけ宝石がいた。

 白地に金の装飾のついた清潔感のあるドレス。短く整った金髪。

 胸の部分が大きく開いており、健康的なふくらみが露出している。


「おい、そいつだけオレの隣に座らせろ。他は部下ども(彼ら)と遊んであげてくれ」


「ありがとうございまぁーす。新人の『れい』でぇす。お願いしまぁす」


 若干舌足らずな挨拶をしながら、金髪のキャバ嬢が兵吾の隣に腰掛ける。

 いままで隣にいた長髪のキャバ嬢がムスッとするのを誇らしく感じながら、兵吾は金髪のキャバ嬢の腰に手をまわして抱き寄せた。


 ──さて、オレも今日は上がりだ。ここからはお楽しみの時間──


 どかっ、と。

 油断しかけた兵吾の目の前の座席に、一人の女が腰掛けた。

 黒服ボーイに連れられていた三人のうちの一人だ。


「……あ?」

 兵吾が、銀髪の奥からその人物を睨みつける。

「んだよ。他の女は部下と遊んでくれっつったろ?」


 座った女は、此処が歓楽街であることを踏まえてもなお、奇抜な格好をしていた。


 英国の制服風とでも言おうか、シルク色の白いニットワンピースの上に、気品のある真紅のジャケットを着用している。その上からさらに妙にサイズの大きい黒のコートを羽織っていた。上品ではあるのだが、現実離れした遊び心のありすぎるデザインだ。

 すらりと伸びた足は白くて細い。

 髪色も真っ赤で、眼だけが青色だ。


「も、申し訳ありません……!」

 兵吾の発言に黒服ボーイが狼狽える。

「この方はうちのキャストではありません。てっきり、兵吾様のお知り合いなのかと……」


「あ?」と兵吾が、あっけにとられた直後だった。



「──おまたせ、待った?」



 女が、元気にウインクをしながらピースをした。

「ども! 新人の『あお』でーす! よろしくお願いしまーす!」


 兵吾は、その声でやっと気がついた。

 こいつ、女装した男か。


「誰だてめぇ? ふざけやがって」


「失礼しました。私は元オーロラ・プロダクションのマネージャー、現V-DREAMERS所属プロデューサーの佐々木という者です」


 卓上に置かれた名刺を見て、兵吾は目をかすかに見開いた。

 佐々ささきあお

 その名は知っている。

 先日のVライバーどもの反乱。その原因になった男だ。

 Vライバーどもから帰還を切望されている危険人物。

 曰く、『オーロラの女装P』。


「……その格好はなんだ? つーか、なんでここに?」


「あれ、知らないですか? この格好、とある大人気美少女錬金術師VTuberのコスですよ。そして、ここにいる理由はですねぇ」


 佐々木蒼が、笑顔で囁いてくる。


「錬金術師として、()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ちょっとお時間いただけます?」




 今回も読みいただきありがとうございます。


 VS兵吾逸平です。

 獅紀チサト編は、あと2-3日で完結できると思います。

 どうかお付き合いくださいませ…。


 続きを書くモチベーションのために、

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