表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/26

オーロラ・プロダクションのライバー達②



「お前は?」


「VTuber事業部、部長の和寺わじです……」

 秘書の言葉を遮って起立した男。

 和寺部長は、見るからに戦々恐々としながら名乗った。

「広告収益減少の理由は実に単純です……。()()()()()()()()()()()()()()()()()のです。ライバー達のモチベーションが低下しておりまして……、まるでストライキに似た状態となっています」


 王社長は眉を引き攣らせた。

 配信の数が減っている?

 モチベーションの低下?

 ──何を被害者のように言っているのだこのボンクラは?

 商品(タレント)どもをその気にさせて、上手いように使うのは、現場のお前らの仕事ではないか。


「なるほど。よろしくな、和寺部長」

 王社長は苛立ちを押し隠し、努めて冷静そうな声色を保った。

 俺は今からこの男を追求するのだ。

 怒号で萎縮させてしまっては情報を得られなくなる。

「それで……ストライキだったか? それは大変だな。理由は何なんだ?」


「……それを王社長のお耳に入れたく、こうして立ち上がった次第です……」

 和寺部長は、冷や汗を流しながら、震える声を絞り出す。

「結論から申し上げます……。ストライキの理由はライバー達の『恩師』が解雇されてしまったことです」


「恩師?」


「ええ。どうかお願いです……()()()()()()()()()()()()()()わけにはいきませんか?」


「なに?」

 王社長は密かに面食らった。

 何を言い出すかと思えば、このボンクラは、自分の無能を、辞めた社員に尻拭いさせようとしているのか?

「佐々木? ……ああ、あれか。事務所で堂々と女性アイドルの格好をして働いていた男のマネージャーだな? 仮にも人と会う仕事をしているのに、あの格好は勤務態度としてどうかと思うがね」


「……それは、はい、一理あるのですが……」

 和寺部長は、どちらの味方か分からない意見をもごもごと呟く。

 そして続けた。

「佐々木蒼くんは今のオーロラ・プロダクションの礎を築いた功労者です。ライバーの多くは彼に窮地を救われた経験があり、全員が彼を心から慕っています。それを急に奪われて、ライバー達は耐え難い喪失感と不安に苛まれているのです」


 王社長は微かに眉を顰めた。


 タレントの喪失感?

 それがどうした?

 佐々木蒼は、たかが一人の若手スタッフだろうが。

 いくらでも他の人員に代わりをさせればいいではないか。


「人は誰かの代わりにはなれないのです」

 ──王社長の心の中を見透かしたのだろうか。

 和寺部長が感情の篭った声で言った。

「佐々木くんの尽力で、いまやオーロラ・プロダクションは、キングス・エンターテインメントの中でも()()()()()()()()()()()()()()()になりました。そんなSNSで多大な影響力を持つライバーたちが……精神に不調を来しているのです……。佐々木くんを連れ戻さなくては、彼らの不安がファンたちに伝わり、最悪の場合、世間がキングス本体への不信感を募らせてしまう危険性すらあります……!」


「……和寺部長。それはまるで、『自分の言うことを経営陣が呑まねば、インフルエンサーを使って世間の印象を操作する』という当社への脅迫にも聞こえるが?」


「……っ!? そ、そんなつもりではありません……!」


「ふん。冗談だよ」

 王社長は微笑みを作ったが、目は笑っていない。

「君の言いたいことは理解した。あるいは今の当社全体の経営不振が、ライバー達による無意識下でのネガティブ・キャンペーンのせいかもしれないという危惧もな」


「社長。どうかお願いです。いちどオーロラ・プロダクションの事務所にいらしていただけないでしょうか?」

 和寺部長が言う。

「じ、実は……申し上げにくいのですが、ライバー達も社長に会いたがっているのです……。オーロラや佐々木くんについての想いを、直接聞いていただきたいと願っておりまして……」


 全く、この男は経営者をなんだと思っているのだ?

 自分の無能を棚に上げて、タレントを直接、俺にぶつけようとは。


「……社長。お時間が勿体ないです。現場には他の者でも赴けますので、訪問はご辞退されるべきかと」


「いや、いいだろう。俺が直接様子を見るさ」

 秘書の耳打ちを手で止め、王伀巳おう ひろみ社長は冷笑しながら言った。

「俺はな、現場に何もかもを大雑把に任せて放置してきた親父とは違うんだ。現場に問題があると言うのなら、自ら見極めようじゃないか」


 王社長は、恐怖で目を逸らす和寺部長を睨みつけて、歯を剥き出して微笑んだ。


「ライバー達に会えるのも楽しみにしているぞ、和寺部長?」


 最強の座に驕る王社長には気づく余地も無い。

 この時、確かに、無敵のキングス・エンターテインメントの地位は傾き始めていたのだ。



 今回も読みいただきありがとうございます。


 今回出てきた和寺部長は、第一話で佐々木蒼と話している部長その人です。

 一応は偉い人なので経営会議にも出ているのでした。


 続きを書くモチベーションのために、

 ブックマークや評価、コメントで応援いただけますと嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ