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配信って、ぶっちゃけ『労働』ですし



「え──」

「はあぁぁああああああああっっっっ!?!?」


 黒縁ぐらす氏が唖然とした。

 そして高山愛里朱が絶叫した。


「ちょちょちょちょちょっっっ、佐々木さんっ、さっ、さっ……佐々木ぃっ! 所属希望者になんてこと言うのっ!? 謝りなさいっ! 謝りなさいって!!」


「うるせぇぇえええええええええええええっ! なんでお前のほうがリアクションがデカいんだ!? ぐらす先生まだ一文字しか喋れてないぞ!?」

 俺も思わず叫び返してしまった。あやうくツノが取れるところだった。俺、マク様なのに。

「──こほん! あー、すみません……。語弊がありました。『配信やめてみませんか』っていうのは決して『引退しよう』って意味じゃないんです。その……なんていうか……目的を変えてみませんかという意味で……」


「目的ですか……?」

 と黒縁ぐらす氏が、眼鏡の奥から不安げに俺を見る。


「ええ。俺の経験上、配信自体を『目的』にした配信者は絶対に病みます」

 俺は指を──いや、萌え袖をぴんと宙にたてて言った。

「こう言っちゃなんですが……配信って、ぶっちゃけ『労働』ですし。視聴者からの反響だって良いものばかりじゃないからストレスが溜まるじゃないですか」


「ええ、まあ、たまには……」

 と黒縁ぐらす氏は言葉を濁して呟いた。


超々々(ちょーちょーちょー)わっかるマンでーす!」

 と高山愛里朱は激しく頷いた。

 ……なにがあったの貴女あなた


「だから、配信や創作はあくまで『手段』であったほうが健全なんですよ」

 俺は銀髪の奥から黒縁氏を見つめながら続ける。

「『目的』は原始的であれば原始的であるほどよくて、例えば『稼いで贅沢するため』とか、純粋に『楽しむため』とかなら最高です。それさえ見つめなおせれば、活動自体をもっともっと『目的を達成するため』に特化させたり、そもそも活動の内容自体をまるまる変えてしまったりしやすい。配信はもっともっと、やる意味を見出しやすくなります」


 黒縁ぐらす氏は俺の話に耳を傾けながら、両手を揉むように動かしている。

 迷いが見てとれた。

 彼女にとって配信や表現活動は、やはりとても重い意味を持つのだろう。

 定義や捉え方すら、動かしにくいほどに。


「泣くほど辛いなら、まずは黒縁ぐらすさんが配信を始めたきっかけを──根本の理由や、原初の成功体験を、思い出してみたほうが良いです。そもそも──」


 俺はその先の言葉を躊躇する。

 しかし、躊躇なんて今更すぎると思い直した。

 俺はさっき、彼女の人生に踏み込むと覚悟を決めたじゃないか。


「──そもそも、あなたは、なんで創作を始めたんですか?」


「ちょ……ちょいちょい佐々木さん! ちょっと熱が入りすぎだって! あ、あはははっ!」

 高山愛里朱が苦笑いをしながら、パタパタと両手を振って俺を制止した。

「初対面でそれはさすがに()()()()()()()()じゃないかなぁ!? 他人が簡単に触っていいコトじゃないってばっ!」


「……た、たしかにだねぇ……」

 俺は恥ずかしくなって肩を落とした。

 他人に真面目にたしなめられたら、速攻でしょげる。

 俺の覚悟なんてこんなもんです……

「……すみません、ぐらす先生。俺、熱くなりすぎました」


「あ、あはは……いえ、いいんですよ〜〜……」

 黒縁ぐらす氏は弱々しく、疲れたように笑った。

「自分を見つめ直すいいきっかけになりました。佐々木さんの言う通りです。確かに、私、どうして絵を描き始めたんだっけなぁ〜〜……」


 そしてまた、黒縁ぐらす氏は両手をぎゅっと握り込む。

 自分の内側に視線を向けて、彷徨っているのが伝わってきた。


「あはは、ダメだぁ……ちょっとパッと思い出せそうにないですねぇ〜〜……」


 まあ無理もない。

 こんな短時間で見出せたなら苦労はしないだろう。


「ふぅ。時間も経っちゃいましたし、今日はこれくらいにしておきましょうかっ!」

 高山愛里朱が、パンッ、と両手を叩いた。

「少なくとも配信の改善案はお持ち帰りいただけそうですし。もし配信がうまくいって、また会ってやってもいいかもなーってなったら、ぜひご連絡くださいねっ! 所属検討もぜひぜひっ!」


 確かに。

 時計を見れば面談時間は1時間を軽く越えていた。

 YouTubeチャンネルの分析に時間を割きすぎたようだ。


「あ、解散するなら、ちょっとだけお待ちください」

 俺は、ばちゃばちゃとPCにレポートを打ち込む。

「もしかしたら参考になるかもしれないので、今日語れなかった俺の雑感もDMに送っておきますね。アナリティクスを拝見した時に、『ジャンルのブレ』以外にも、視聴データに軽いノイズが観測できたんです。視聴者に人気のあった特定の箇所シーンって感じでしたね。そこへの俺の見解とアクションのアイデアを記載しておきました。後ほどご覧になってください」


 それから十数分ばかり。

 高山愛里朱がV-DREAMES(ブイ・ドリーマーズ)の紹介をして、俺たちは解散することになった。


「長時間ありがとうございました」

 ぺこり、と黒縁ぐらす氏は丁寧におじぎをしてくれた。

 表情には疲れが見えたが、明るくはあった。

「いろいろ参考になりました。ちょっとまあ、いろいろやってみます」


 こうして俺たちの最初の面談は終了したのだった。




 今回も読みいただきありがとうございます。


 果たして、ぐらす先生の迷いは晴れるのでしょうか。

続きは本日0:00より、1時間おきに1話、投稿いたします!

(つまり……明日14日は24話投稿します)


 続きを書くモチベーションのために、

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