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第4話 技能と習熟度

「歩こ~歩こ~私っは~元気~……歩くの大すっき~……ど~んど~んゆっこお~」


 六歳児であること忘るべからず。朝ご飯を食べ終えた僕は籠を担いで歌い、スキップしながら畑へと向かう。


 土の香りと清涼感溢れる草の香り。頬を撫でる早朝の風が気持ちいい。


 今は第六の月の初旬、ちょうど初夏の時期にあたる。前世の初夏であればジメジメむしむしとした風が吹くんだろうけど、ここシィアン村はルーヴ王国の北辺境に位置しているから夏でも随分と涼しく、空気は乾燥している。でもそれは冬になると雪だ~!なんて笑っていられないくらい寒くなる前兆なのであって……


(あ~やめだやめ)


爽やかな朝に今年の冬は乗り越えられるのかなぁなんてことを考えるのはよしておこう。


「ロイ、父さんはあっち。母さんはあっちのを採るからお前はあっちを頼む」


 家から歩いてすぐのところにあるうちの畑に着き、父さんから指示を受けた僕は「は~い」と返事をして割り振られた区画に埋まっている葉っぱを引っこ抜き始める。

 引っこ抜き始めると言っても雑草抜きじゃない。これは収穫作業だ。


 カキカキカキ


 ザ・葉っぱといった形をした大きな葉が重なるようにして生えているところの下、籠から取り出したスコップで土を丁寧に掘っていく。


 ホジホジホジ…すぽんっ


 それから少しして本日のお目当てである拳大の芋を土から引っこ抜いた。

 一つあればそこにもう十個あると思え。それがこいつ、我らが主食ジャガイモのありがたい特徴だ。芋づる式とはこのことと言わんばかりに周りをホジホジすればゴロゴロといるわいるわ、採れるわ採れるわ。

 一か所でこれくらい採れるんなら今回の収穫は大豊作間違いなしだ。うちで消費出来ない分はご近所さんに回して他の食材に変えることが出来るし、それでも残ったのなら定期的に村を訪れる商人に売りつければいい。


 今までなら「豊作だ!わーい」父さんと母さんが嬉しそうにしている「うれしいなっ!」で終わっていた。けれども頭が回るようになったせいか、はたまた前世の記憶のお陰か。大豊作のその先を考えることが出来るようになった僕はニヤニヤしながら採ったジャガイモを次々と籠へ放り投げていく。


 そうやってジャガイモを採り続けていたら、またあの声が聞こえてきた。



『《条件:芋を収穫する》を満たしました。

【底辺神の加護】により技能スキル――【芋掘り】を獲得します。

 前世と過去の経験により【芋掘り】が【芋掘り上手】になりました』



「お?」


 手に持っていたジャガイモを籠へ放り入れてからスコップを置き、辺りを見渡す。当然僕の周りに人がいるわけもなく、父さんと母さんは遠くの方で同じように芋を掘っていた。まぁ周りにいたところでこの声が聞こえるのは僕だけだ。今ので集中力が切れてしまったから丁度いい。朝ご飯の前にやっていたことの続きをしよう。


「と~さ~ん、水休憩してい~い~?」

「い~ぞ~!もう少ししたら父さんと母さんも行くから、井戸のエールを家の中に入れてくれ~!」

「は~い!」


 父さんに一言言ってから行き来た道をジャガイモでパンパンに詰まった籠背負いながら戻る。その途中で僕は「ステータス、オープン」と小さく呟いた。



 --------------------

 <ステータス>

 名前:ロイク(6歳)

 能力値:

 筋力  35 (31+4+0)×1.0

 敏捷  32 (30+2+0)×1.0

 体力  37 (33+4+0)×1.0

 知力  91 (35+10+20)×1.4

 魔力  5  (5+0+0)×1.0

 精神力 34 (34+0+0)×1.0

 器用さ 36 (32+2+1)×1.01

 運   100 (100+0)×1.0

 加護:【底辺神の加護】

 恩恵ギフト:【天の声】【熟練度】【ステータス】

 技能スキル:【足算博士】【引算博士】

         【割算博士】【円博士】

         【芋掘り上手】

 --------------------



「なるほど…そゆことね」


 朝食の前に見た時と僅かに、しかし確実に変わったステータス。

 変化は二か所。そしてその変化から分かったことは計三つ。


 変化の一つ目は【天の声】であろう僕にしか聞こえない謎の声が言った通り、技能スキル欄に追加された【芋掘り上手】。

 で、二つ目は能力値にある『器用さ』の数値と数式。朝食前は34だったけど、今は36になっていて右隣の数式の一部が×1.0から×1.01になっている。


 分かったことの一つ目は【習熟度】について。

『前世と過去の経験により【芋掘り】が【芋掘り上手】になりました』という一文から経験を積めば技能スキルが進化する――つまり『習熟する』と推測できる。【上手】【先生】【博士】という風にね。【足算】【引算】【割算】は少なくともそうだった。【芋掘り】はどういう風に変わっていくか分からないけど。


 二つ目は能力値にある数式の変化が何を指しているのか。

 これは多分技能スキルの効果だね。男の記憶がそうだと確信している。

 今回変化が起きたのは『器用さ』の数式の右端、1.0が1.01に――つまりは倍率が100%から101%になったということ。

 うん、どう考えても【芋掘り上手】が『器用+1%』の効果を持ってるよね。そんでもって習熟度が『博士』の計算系技能スキルは各々が『知力+10%』の効果を持っている。1.4の4と計算系技能スキルの数の四が偶然にも同じ!な~んてことないよね。


(僕の推測が合っているかどうか確かめてみようか)


 技能スキル検証のために立ち止まり、背中の籠からジャガイモを六つ取り出し2―2―2に分けて地面に置く。それから「んっんん!」と咳払いを一つ。


「全部でジャモは何個でしょう。誰か答えられるかな~?」←僕(先生役)

「はい!」←僕(生徒役)

「お、早いね~。じゃあロイク君答えてみたまえ」←僕(先生役)

「二三が六で六個です!」←僕(生徒役)


『《条件:掛算の問題を解く》を満たしました。

【底辺神の加護】によりスキル【計算:掛算】を獲得します。

 前世と過去の経験により【計算:掛算】が【掛算上手】になりました。

 前世と過去の経験により【掛算上手】が【掛算先生】になりました。

 前世と過去の経験により【掛算先生】が【掛算博士】になりました』


 予想通り天の声が聞こえてきたので再び「ステータスオープン」と唱えて、じ~―――


 --------------------

 <ステータス>

 名前:ロイク(6歳)

 能力値:

 筋力  35 (31+4+0)×1.0

 敏捷  32 (30+2+0)×1.0

 体力  37 (33+4+0)×1.0

 知力  105 (35+10+25)×1.5

 魔力  5  (5+0+0)×1.0

 精神力 34 (34+0+0)×1.0

 器用さ 36 (32+2+1)×1.01

 運   100 (100+0)×1.0

 加護:【底辺神の加護】

 恩恵ギフト:【天の声】【熟練度】【ステータス】

 技能スキル:【足算博士】【引算博士】

         【掛算博士】【割算博士】【円博士】

         【芋掘り上手】

 --------------------


「ふ~よかったぁ」


 ―――自分の推測は間違っていなかったことを確認できた僕はジャモ六個を籠に戻しながら一息つく。検証の(掛算の問題を解く)ためとはいえ道端で一人芝居をやったんだ。推測通りに数字が動いてくれてよかったよ。

 また1.4から1.5になったことで計算系技能(スキル)の習熟度『博士』の効果は『知力+10%』であり、《《かつ》》『能力基礎値《なんとなく名付けてみた》+5』ということも分かった。

 そう、僕は見逃さなかった。1.4が1.5になっている左隣でしれっと20が25に変わったことを。全く、油断も隙もあったもんじゃない。

 ちなみに分かったことの最後の一つ、三つ目というのは実はこのこと(素の能力値が上がった)だったりする。『器用さ』の数式の右端が1.0から1.01に変わっている中でこちらもまたしれっと左隣で0が1に変わっていたから気付いたんだ。


 以上の内容を簡潔にまとめると計算系技能(スキル)の習熟度『博士』の効果は『知力+10%・能力基礎値+5』で技能スキル【芋掘り】の習熟度『上手』の効果は『器用さ+1%・能力基礎値+1』となる。


 それから今一番気になる不明点は『器用さ 36 (32+2+1)×1.01』の『2』の部分。『36』は僕の能力値、『1』は技能スキルの効果、『1.01』も技能スキルの効果って今考えてみて分かった。けど『2』の部分はほぼヒントなし。唯一のヒントは『筋力』は『5』、『敏捷』は『2』、『体力』は『1』ということだけ。『運』に関しては『0』が右左どちらの数字を指しているのか分からないという有様。


「あ~………わっかんない」


 だから今考えるのはやめることにした。分からないものは分からないんだ、いくら考えても無駄であるとは男の記憶から導き出された真理である。


「ただいまぁ……あ、そうだ…エール準備するの忘れてた」


 考え事をしていたせいで井戸で冷やしているエールを取らずに帰ってきてしまった。行かなくちゃと籠を置いて回れ右。


「だろうな。だから持って来たぞ」

「あ、ごめん。父さん」


 井戸水で冷ているだろうエールの樽を肩に担いでいた父さんが真後ろにいたので、回れ左。


(ステータスの考え事はなるべく自分の部屋でやることにしよ)


 僕の農作業は午前中で終わりだから考え事はその後にしたって良い。


 残り少しの時間を乗り越えるための体力を回復させるべく僕は「喉乾いた~」と家の中に入っていった。



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