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第一章 第八話 認識阻害の魔法をかけたよな? 何で覚えている!

 〜シロウ視点〜




「いらっしゃいませ、何名ですか?」


「一名です」


「では、お席にご案内いたしますね」


 スライムを倒して高額な報酬を得た俺は、昼食を食べに町の食堂に来ている。


 席に座り、メニュー表を見た。


 さて、今日は肉料理が食べたい気分だな。何か美味しそうなメニューはあるか? お、ウッシーの肉を使ったステーキか! 美味しそうだな。よし、これにしよう。


「すいません! 注文いいですか!」


「はい、少々お待ちください」


 しばらくすると、ウエイトレスが注文を聞きにやって来る。


「ウッシーのステーキをお願いします」


「わかりました。少々お待ちください」


 ウエイトレスに注文を言い、料理が運ばれてくるのを待つ。コップに注がれている水を一口飲むと、今後のことについて考える。


 さて、昨日は依頼完了の報告を終えたあとに、ギルドに張られてある依頼を見たけど、これと言って美味い話しはなかったな。どれもやりがいが感じられないものばかりだ。だけど生きていくにはギルドの依頼を受け、生活費を稼がないといけない。しばらくは、今ある依頼の中から報酬金額が高いものを選んでやっていくしかないだろう。


「お待たせしました。こちらがウッシーのステーキになります」


 今後の方針について考えていると、料理が運ばれてきた。早速フォークとナイフを握り、一口食べる。


 ウッシーの肉は、種類や部位にもよって肉の触感が変わってくる。この肉はどうやら霜降り肉のようだ。脂が乗っていて、咀嚼する度に口の中に肉汁が広がっていく。


 俺はあまりの美味しさに無我夢中で食べ進めた。


「ごきげんよう、シロウ。こんなところで出会うなんて奇遇ですわね」


 食事をしていると、毛先をゆる巻にしている金髪の女性が俺に声をかけて来た。そして彼女は青い瞳で俺を見る。


 げっ、マリー!


 俺に声をかけたのは、赤いバラのリーダーだった。


 どうしてこんなに早く再会してしまう! なんて運が悪いんだ。だけど、マリーには俺の認識阻害の魔法をかけている。今の彼女は、追放したばかりの記憶になっているはずだ。ならば、そのように俺も振舞わなければ。


「マリー、数日振りだな。どうしてこの町に?」


「それはギルドマスターの依頼で、この町に来ましたの。そしたら、たまたまあなたがこのお店の中に入るのを見かけましたので。ワタクシも入って見たということですわ」


 そう言うと、マリーは当然のように俺の隣に座る。


 さっきは奇遇って言っていたじゃないか! 完全に俺の後をつけただけじゃん。


「あなたはステーキを食べておられるようですわね。ステーキはお好きなのですか?」


 何でマリーは当然のように俺の横に座る? そしてどうしてステーキが好きなのかを問うてくる?


 彼女の行動理由がわからない。何せ、彼女は俺が無能だと思っている。だからこそ、俺をパーティーから追放した。それなのに、どうして俺を見かけたからという理由で、店の中に入ってくる? 彼女の性格を考えれば、追放した俺なんかは、ゴミムシのように考えていそうなのに。


 いったい何を企んでいる?


 とにかく、あんまり関わらないようにしなければ。


 だけど、質問をされて無視されるのは嫌な気持ちになる。彼女の問いぐらいは答えてやってもいいのかもしれない。


「肉が嫌いな人ってあんまりいないだろう。好物かどうかと言われれば微妙だけど」


 淡々と答え、肉を食べ進める。すると隣から視線を感じた。チラリと見ると、マリーがジーッと俺のことを見ていた。


 正直、食事しているときにそんなに見られると食べづらくなる。


「マリーは何か注文をしないのかよ」


「ええ、シロウを見かけたから、このお店に来ただけですわ」


 彼女の返答で、俺は何となく理解した。つまり、マリーは俺に用があってここに来たのだ。


 さっさと食事を終えて店を出たとしても、つきまとわられる可能性が高い。


「さっさと要件を言えよ」


「さすがシロウですわ。今の一言で理解できるなんて。では、言いましょう。シロウ、あなたにワタクシのパーティー、赤いバラに戻って来てもらいます」


「なんだよ。もしかして荷物持ちと雑用係が恋しくなったのか? それなら別に俺じゃなくてもいいだろう?」


 そう言いながらコップを持つと、水を口の中に入れる。


「あなたでなくてはいけません。先日のスライム退治は見事でした。シロウがどういう理由で無能を演じていたのかは分かりませんが。あなたの活躍は目に焼きついておりますわ」


 マリーの言葉を聞いた瞬間、俺はビックリして口の中に入れている水を噴き出しそうになる。だけどそれを我慢し、強引にも飲み込む。


「ゴホッゴホッ」


 無理やり飲み込んだせいで、咽てしまった。


「まぁ、大変。大丈夫ですかシロウ」


 少しだけ苦しい思いをしていると、マリーが背中を擦ってくれた。


「あ、ありがとう」


 気分が楽になり、彼女にお礼を言う。


「これぐらい、パーティーリーダーなら当然ですわ」


 いや、嘘つくなよ。前に俺がパーティーにいたときなんか、同じことがあっても何もしてくれなかったじゃないか。


 そんなことを考えてしまったが、大事なところはそこではない。問題なのは、どうして彼女が昨日のことを覚えているのかだ。俺は確かにマリーに対して、認識阻害の魔法を使った。なのに、どうして覚えていやがる。


「なぁ、どうして昨日のことを覚えている。俺は確かにお前の記憶を弄ったはずだぞ」


「それはワタクシのユニークスキルによるものかもしれませんわね。ワタクシのスキルは【抗体】一度受けた状態異常を無効化することができますのよ。つまり、あなたは以前ワタクシに認識阻害の魔法と言ったものを使ったことがあるのでしょう。そのときにワタクシには耐性がついたというわけですわね」


 抗体のスキルは母さんから聞いたことがある。とてもレアなスキルで、その力を持っている人はなかなかいない。まさか、マリーがそのスキルを保有していたなんて。


「まぁ、最初は夢だと思っていましたわ。でも、ワタクシの手には、夢で負った箇所と同じ傷がありましたのよ。そのお陰でワタクシは、あれは夢ではなく、現実に起きたことなのだと理解をいたしましたの」


 彼女の言葉を聞き、右手で額を抑える。


 なんて詰めの甘いことをしてしまった。この結果は、細かいところまでチェックしなかった俺の落ち度だ。


「さて、本題に戻りましょう。シロウ、ワタクシのパーティーに戻りなさい」


「断る」


「そうですわね。さすがにあなたには、これまで酷いことをしてしまいましたわ。そのことは非常に反省しておりますの。ですからお詫びをしたいと思っておりますのよ」


 マリーが俺の腕を握ると、引き寄せる。偶然だろうが、服越しに彼女の胸が当った。


 落ち着け、俺。さっきのマリーの言葉と今の状態から変な方向に考えるな。これはあくまでも彼女の作戦だ。マリーが本当に求めているのは俺ではない。俺のユニークスキルなんだ。


 自分のチームを強化をするために、俺の力を欲しているに違いない。


「おい、当たっているぞ」


「当てているのです。ワタクシのものになってくださるのであれば、もっといいことをしてあげますわよ」


 マリーが耳元で囁いてくる。


 惑わされるなよ俺! マリーは目的のためなら手段を択ばないときがある。絶対にこの誘惑に屈するなよ。


「こ、これでも靡かないのですか。これ以上はワタクシの心臓がもたないですわよ。でも、でも、シロウをワタクシのものにできるのであれば、次に進むしか」


 小声で独り言を漏らすマリーの声が耳に入った。


 たく、俺の能力の欲しさに無理をするなよ。マリーは女の娘なんだから、もっと自分を大事にしないと。


「マリー、君がムリをしていることには気づいている。頼むから、そんなことをしてまで俺を求めないでくれないか。俺は自由に生きる。誰の下にもつかないソロで活動をするって決めたんだ」


 俺は素直に思ったことを言う。俺の気持ちが伝われば、彼女も納得してくれるだろう。


「そうですか。あなたがそこまで言うのであれば、仕方がありません」


 そう言うと、マリーは俺から腕を離し、立ち上がる。


「今日はこの辺で帰らせてもらいます。ですが、ワタクシは何があろうと、あなたを諦めませんからね!」


 マリーが人差し指を俺に向けて宣戦布告をすると、店の出入口に向っていく。


「すまないなマリー。俺のスキルは、世界を滅ぼすこともできる力だ。この力が公になれば、きっと王国から魔王のような扱いをされてしまう。もし、お尋ね者になったら、君にも迷惑がかかってしまうんだ」


 彼女の背中を見ながら、俺は独り言のように、小さい声でポツリと言う。


 そう、俺の力は全知全能に近い力。鑑定によりスキルが明らかになった段階で、俺の脳には様々な知識が刻まれた。その中には、異世界の知識なんてものもある。


 俺がスライム対策に塩と砂糖を使ったのも、異世界の知識のお陰なんだ。この世界に存在しない知識を保有している俺は、神にも魔王にもなれる存在。


 絶対に公にならないようにしなければ。


 俺は残りを食べ終わると、食事の代金を支払って店から出た。



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