第九章 第三話 狙われたマリー
〜シロウ視点〜
デンバー国での親善試合から数日が経った。
俺たちはサザークに戻ってしばらく休暇にしたのだが、エリザベートをエグザイルドのメンバーにする手続きが終わっていないことを思い出し、現在はギルドで手続き中だ。
「お待たせしました。これで全ての手続きは、終わりです」
「これでわたしも、正式にエグザイルドのメンバーですわ」
冒険者になれたのが嬉しかったのだろう。エリザベートは、笑顔で喜んだ。
さて、これでエリザベートが正式加入をしたことだし、今日はみんなでお祝いでもしようかな?
今夜はどこの店に食べに行こうか悩んでいたときだ。
勢いよく扉が開かれてマリーがギルドに入ってきた。
彼女は首を左右に振り、誰かを探している素振りを見せる。
そして俺と目が合うとこちらに来た。
「シロウ! 頼みがありますの」
「頼み?」
「ワタクシを攫ってください!」
マリーの言葉に、俺は驚かされた。
「さ、攫う? どう言う意味だ?」
「す、すみません。焦っていたので、上手く言葉が出てきませんでしたわ。正確には、ワタクシを追っている者たちがおりますの。なので、そいつらから逃げ切るお手伝いをして欲しいのですわ」
な、なるほど、そういう意味か。攫って欲しいなんて言うから、誤解しそうになったじゃないか。
「追われているっていったい誰から?」
「それは……」
誰から追われているのかを尋ねたタイミングで、ギルドの扉が開かれ、数人の黒服の男たちが中に入ってきた。
「いたぞ!」
「散々逃げやがって。だがもう逃げ道はない。大人しく我々に同行してもらいましょうか」
黒服の男たちはマリーを見つけるとこちらにやってきた。
彼らは強面の集団であり、見た目からしてヤバイことをしていそうな集団だ。
「こいつらですわ」
マリーは俺の背中に隠れると、黒服たちから逃げていることを告げる。
いったいどんなトラブルに巻き込まれれば、こんなやばそうな集団から逃げることになるんだ? だけどまぁ、マリーは俺の仲間だし、リーダーとして彼女を守ってやる義務がある。
こんな奴らから逃げるのは簡単なことだ。全員に失神魔法や睡眠魔法をかけてやれば余裕で逃げ切れる。けれど、それでは何も解決できない。ここはひとまず、大人の対応をするべきだろうな。
「なぁ、どうしてあんたらはマリーを追っている?」
「あん? なんだテメーは?」
「俺の名はシロウ。マリーが所属しているエグザイルドのリーダーだ」
「そうか。テメーがシロウか」
どうやら俺の名を知っているようだな。だったら話しは早い。ブリタニアの英雄と言われている俺が目の前にいる以上は、勝ち目がないことを理解しているはずだ。もしかしたら尻尾を巻いて逃げ帰ってくれるかもしれない。
「この国の英雄様が相手だろうが、俺たちには任務がある! どんな手を使ってもマリー令嬢は渡してもらう!」
ハァー、勝ち目がないのに立ち向かってくるのか。仕事熱心なのはいいことだが、無謀だってことは理解してほしい。普通に叩きのめすよりも、手加減をして倒すのが一番難しいっていうのに。面倒臭いことをさせないでくれよ。
「本当に俺とやり合おうと言うのか? 余計なお節介かもしれないけれど、止めておけ。お前らがケガをする未来しか見えない。それに正直に言うと手加減をしてやらないといけないから、それが非常に面倒臭い。ムダな労力を使わせないでくれ」
「舐めやがって! 俺たちはこれでも精鋭部隊だ!」
「いくら英雄様でも全員でかかれば怖くない!」
はぁー結局はこうなってしまうのかよ。マリーの護衛に金がかかっているのなら、やる気も上がるっていうのに、タダ働きとはな。だけどまぁ、さっきも心の中で呟いたけれど、これもリーダーとしての仕事の一環だと割り切るとするか。
「マリーとエリザベートは離れていろ。エンハンスドボディー」
肉体強化の魔法を使い、俺は黒服たちの攻撃を払い除ける。
こいつら肉弾戦でくるということは武闘家か? いいチームワークでコンビネーションを使い、俺に蓮撃を仕掛けてくる。
だけどまぁ、俺には全然通用しないのだけどなぁ。
「くっ、さすが英雄様だ。俺たちの攻撃を全ていなしやがる」
さて、こいつらの攻撃を躱しつつ、今後のことについて考えるとするか。こいつらを倒すことは容易だ。だけどそれだけでは何も解決したことにはならない。まずは落ち着いた場所でマリーから事情を聞くとしよう。
それじゃあ、こいつらにはそろそろ眠ってもらうとするか。
「ショック!」
「があああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
失神魔法を唱えた瞬間、黒服たちの神経が活性化された。それにより心臓に戻る血液の量が減少したことで、彼らは悲鳴を上げながら失神していく。
「さてと、それじゃあ依頼でも探すとしようかな」
何ごともなかったかのように、俺は依頼が掲載されている場所からよさそうなものを吟味する。
マリーからゆっくり話しを聞くとすれば、許可が必要なダンジョン系の依頼がいいよな。となると……あった。これがいい。
依頼内容が書かれた紙を持つと、俺は椅子に座っていたギルドマスターであるオルテガのところに向かう。
「今からこの依頼を受ける。悪いけど、俺の代わりに手続きをしておいてくれ」
「あ……ああ、わかった」
俺が何ごともなかったかのように振る舞っていたからなのだろうな。オルテガは唖然としながら、俺から依頼書を受け取る。
「マリー、話しを聞きたいから深緑の森に向かうぞ」
「ええ、わかりましたわ」
「わたしも付いて行きます」
俺はマリーとエリザベートと共に、深緑の森に向かう。
三十分ほどかけて深緑の森に到着し、森の中に入る。依頼内容は薬草採取であり、たいした金額にはならない。けれど森の中であればゆっくりと話しをすることができるはずだ。
薬草を採取しながらマリーが話してくれるのを待つ。
早く問題を解決するのであれば、俺から問い質すべきだ。けれど、マリーの気持ちもある。ここは彼女の気持ちの整理がついたときに聞いてやるべきだろう。
「あのう、シロウ」
「見つけたぞ! マリー!」
マリーが口を開いた瞬間、突然渋い男性の声が聞こえた。俺は声の聞こえたほうに視線を向けると、そこには礼服に身を包んだ男性の姿があった。
「お、お父様!」
「最後まで読んでくださったあなた! マリー・オルウィンですわ! 本日は読者の家畜、略して読畜である作者の後書きを乗っ取らせてもらいましたの!」
まずは読者に挨拶をしたワタクシは、ポケットに入っている一枚の紙を取り出します。
えーと、次は何って言うのでしたっけ? ああ、そうでしたわね。
「誤字脱字報告をしてくださった方、ありがとうございますわ! そして、今回の物語を読んでくださったあなたに言います! もし、『面白かった!』『お父様の登場の後が続きが気になる!』『次はいつ更新されるの?』と思いましたら、広告の下にある☆☆☆☆☆から、作品の応援をお願いしますわ!」
そしてワタクシは両手を前に出します。そして片方の手だけは人差し指だけを上げました。
「面白かったら☆五つ、つまらないと思ったら☆ひとつでも大丈夫です! あなたの感じた評価をしていただけると、読畜である作者のモチベーションが上がり、今後のパフォーマンス向上に繋がるらしいですわ!」
えーと、まだ伝えることがありましたわよね。ああ、そうでしたわ。
「右下にあるブックマーク登録もしていただければ嬉しいですわ! よろしくお願いしますの!」
あと、これも言わないといけないですの! シロウのお願いですから言いますけれども、正直面倒くさいですわね。
「広告の下にある『Hスキルがまともに使えないので勇者パーティから捨てられる〜このスキルは女の娘とキスをすると使えるらしいです。』をタップ、またはクリックをしていただけますと、読畜の新作を読むことができますわ!」
そうですわね、この話しをして、読畜である作者を少しだけ惨めにさせてあげましょう。
「連載が開始してから予想よりもアクセス数、ブクマ、評価が少なく、昨日なんか落ち込んで執筆することができない状態に陥っていたらしいですわ! ざまぁですわね! もし、暇つぶし程度に読んでやろうという、心の広いお方は、先ほどワタクシが言いましたように、広告の下にある作品のタイトルを押してください」
ふぅ、やっと終わりましたわね。では、最後の締めといきましょう。
「それではごきげんよう」
最後の挨拶を済ませ、ワタクシはドレスのスカートを軽く摘み、会釈をして去っていくのでした。




