第八章 第五話 美少女コンテストの結末(ざまぁ回)
〜エリザベート視点〜
「それでは、想いを伝えたい方はどなたでしょうか?」
司会の人が誰に告白をするのかを訪ねます。わたしは一度深呼吸をしてから、口を開きました。
「それは内緒ですわ。ですが、きっとわたしの気持ちはあの人に伝わると思いますの」
「なるほど! もしかしたら会場にいるあなたかもしれないですよ!」
進行役の言葉に、観客席にいる男性たちが響めきます。
別にあなたたちのことではないですのに、本当におめでたいですわね。まぁ、いいです。あの人はきっと分かってくれると思いますわ。
「わたしはその人のことは嫌いでした。そもそも男という生き物自体、毛嫌いしていましたの。男は共感能力が低く、くだらないプライドで見栄を張り、自分のほうが凄いとマウントを取ろうとする。そして時には女ということで見下すのに、己の性欲を満たそうとするときだけやけに優しい。本当に男という生き物はつまらない存在です」
開口一番にわたしは毒を吐きました。ですが、これには訳があります。あの人に、最初はきつく当たっていた理由を知ってほしいのです。
「ですが、その人は森の中で迷子になっているわたしを野盗から助けてくれました。そして怒ってくれたのです。そのとき、この人は自分の利益のためではなく、本当に心の底から心配してくれたのだと実感しました。それ以来、わたしはその人のことが大好きになりました」
ああ、ついに言ってしまいました。ですが、もう後戻りはできません。こうなればもう、当たって砕けろの精神で突っ切るのみですわ。
「もちろん、その人はこの会場の観客席にいます。別にお返事は要りません。ただ、胸の中に秘めたままだと、やっぱり苦しくなるので、思い切ってわたしの気持ちを伝えました。もう一度言います。あなたのことが大好きです」
わたしはもう一度、愛の言葉を口にしました。すると観客の人たちから歓声が上がり、拍手が送られます。
何だか急に恥ずかしくなってきました。よく考えれば、場の雰囲気に流されていたとはいえ、とんでもないことをカミングアウトしてしまったのではないのですか!
もしかしたら、わたしの顔は真っ赤になっているかもしれません。
横をチラリと見ると、エマさんまでもが、わたしに拍手を送ってくれております。
「ありがとうございました。では投票を始めましょう」
「エリザベートさんが良かったと思う人は拍手をしてください」
司会の人が拍手をするように言うと、観客席の人たちはそのまま拍手を続けました。
「これはもう決まったようなものでしょう。優勝者はエリザベートーー」
「ちょっと待った!」
わたしの優勝を司会の人が口にしようとした瞬間、彼の声を遮るほどの大声が聞こえてきました。
そして一人の男性がステージに上がります。
「あなたは、子爵の御子息さんではないですか? どうかされましたか?」
「司会者よ、お前はこの女とぐるだな。観客たちの拍手に乗じてそのまま拍手を続けさせ、その女が優勝するように誘導しやがった」
「な、何を言っているのですか! 私は公平なことしかしていませんよ」
「嘘を吐くな! この俺に逆らえばどうなるのか分かっているのか! この町に居られなくさせるぞ!」
子爵のバカ息子は、どうやらわたしが優勝したことに納得がいかなかったようです。何も罪のない司会者に暴言を吐きます。
「わ、わかりました。では、御子息様の乱入で白けてしまったので、やり直しましょう。エマさんが優勝者に相応しい人は、拍手をお願いします」
苦笑いを浮かべながら、司会の人は観客席にいる人たちに声をかけます。ですが、誰一人として拍手をする人はいませんでした。
「で、では、エリザベートさんが優勝者に相応しいと思う人は拍手をお願いします」
続いてわたしが優勝者として相応しいのかを尋ねると、万雷の拍手が送られました。
それを見たバカ息子は顔を青ざめます。
「こんなはずがない。俺のエマが、こんな騎士爵の娘程度に負けるわけがないんだ! これは絶対に賄賂を使っていやがる! 本当に汚い娘だ! 見た目も醜いのに、心までも醜いなんて救いようのない悪党だ。衛兵よ! この女を引っ捕えて牢にぶち込め!」
男はありもしないことを口走ると、会場の見回りをしていた衛兵がステージに上がってきます。
わたしはシロウさんに助けを求めようと、彼のいる場所に顔を向けした。しかし彼等のところにも衛兵が集まり、お父様までもが身動きが取れない状態に陥っております。
このままわたしは捕まってしまうのでしょうか?
「ほら、早く捕まえろ……ぐわ!」
そう思った矢先、バカ息子の背後に立っていた衛兵が、彼の頭に拳を叩き込みます。
「な、何をしやがる! この俺に楯突いて、どうなるか分かっているのか! お前をクビにしてこの町に居られなくすることなど簡単にできるんだぞ!」
「ほう、この私をこの町に居られなくするか。大きく出たな。ならば、どのような手段で、それが実現できるのか、ぜひともご教授願いたい」
「そ、その声はまさか」
彼を殴った衛兵は兜を取って素顔を曝け出します。
「ち、父上! どうしてそのような格好をなさっているのですか!」
バカ息子は兜を取った衛兵を見て顔色を悪くさせます。どうやらあの男のお父様だったようです。
「私も美少女コンテストを見に来たのだ。さすがに普段の格好では注目を集めてしまうので、衛兵に変装をしていた。本来の姿を隠すと、普段見えないものが見えるようになるという話を聞いたことがあったが、まさか本当だったとはな。さぁ、教えてくれ。私をどうやってこの町に居られなくさせるんだ?」
「は、はは」
バカ息子は顔を引き攣らせたまま、乾いた笑い声を出すことしかできません。いい気味ですわ。
「お前がそんなに女性に対して差別意識を持っているとは思わなかったぞ! お前のようなやつは私の恥だ! 頭を冷やすために、遠い地への留学を命じる!」
遠い地への留学とは、この地への立ち入りを禁止するという意味です。即ち、実質の追放ですわ。
「ち、父上、それだけはどうかご勘弁を!」
「私は一度決めたことを覆さないと知っているだろう。諦めろ」
「エ、エマ。君なら俺について来てくれるよな?」
男はエマさんに問いかけました。すると彼女は彼に近づきます。まさか、あの男に着いていくのでしょうか?
「エマ」
こちらからはエマさんの背中しか見えないので、どんな表情をしているのかがわかりません。ですが、バカ息子は安心したような表情を浮かべています。
ですが、彼の表情とは裏腹に、エマさんは右手を振り上げました。
「エンハンスドボディー」
彼女が右手を動かした瞬間、どこからか呪文が聞こえてきました。
「ぶへへへ、ぶごごごごごおお!」
何が起きたのか理解が追いつきませんが、エマさんが右手を動かした瞬間、バカ息子は吹っ飛び、ステージの壁に激突していました。
「え、ええ、えええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
吹き飛んだバカ息子を見て、エマさんは驚きの声をあげます。どうやら彼女が魔法を使ったのではないようです。
ぶっ飛ばされた男は、そのまま地面に倒れました。
「お、おええ、おええええぇぇぇぇぇぇぇ」
強い衝撃に体が耐えられなかったのでしょう。男は消化しきれなかった胃の中のものを口から吐き出し、汚物を撒き散らしておりました。
「いやー、あの人こんなところで吐いている」
「うわ、マジかよ。せっかくの美少女コンテストが台無しじゃないか」
観客たちは汚物を撒き散らす男に冷めた視線を向け、言葉をぶつけます。
「エマ……どうじで?」
「近寄らないでください。気持ち悪いです。薄々と感じていたのですが、あなたが女性を差別するような酷い人だとは思いませんでした。あなたとの婚約は破棄させてもらいます」
エマさんはわたしの手を引っ張ると会場から出て行きます。
この後、あの男がどうなるのかはわかりませんが、わたしは胸がスーッとした気持ちになりました。
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