第七章 第一話 レオニダス、隣国に向かう
〜レオニダス視点〜
俺ことレオニダスは、酒場で出会った男、ブラドと共に行動をしていた。今はシロウを叩きのめす舞台を用意してもらうために、隣国のデンバー城に向かうところだ。
「デンバー城には船で向かいます」
「船での移動か。でも、どうしてシロウを倒すのにわざわざ隣国までいかないといけない」
「その件に関しては、今は話さないほうがいいでしょう。詳しい話はお城にいる王様を交えて話したほうがいいと思いますので」
「チッ」
ブラドの言葉に、俺は舌打ちする。
この男は本当に秘密主義だ。最初にすべてを話しておけばいいものの、少しずつ情報を開示しやがる。
「ねぇ、レオニダス。本当にこのままあの男について行ってもいいの? どうしても胡散臭いのだけど」
隣を歩ていたエレナが、小声で話しかけてくる。
「確かにあいつは怪しいし、何を考えているのか分からない。だけど、シロウを叩きのめす場を用意してくれるのならば、着いて行くしかない。いやならお前はついて来なくていいぞ」
「レオニダス一人であんな男と一緒にさせるわけにはいかないから、私も着いて行くわ」
「本当にお二人は仲がいいですね。羨ましい」
俺たちのひそひそ話が聞こえていたのか、前を歩いていたブラドが振り返ることなく声をかけてくる。話が聞かれたことに驚いた俺は、腕に鳥肌が立った。
「やっぱり着いて行くのは止めたほうがいいかもしれないな」
「それは困ります。あなたが来ていただけないと、僕はあなたにシロウとの決着の場を用意することができないのですから」
引き返すべきかもしれないと声に出して言うと、ブラドは足を止める。そして踵を返して俺たちのほう向き、両手を前に出す。
「だったらどんな方法でシロウと戦う機会を作ってくれるのか、その説明をしてくれ。でなければこれ以上お前に着いてはいかないからな。俺たちは借金の返済もしないといけない!」
「分かりました。では、その辺の情報の開示だけしておきましょう」
やれやれと言いたげな口調で、ブラドは右手を後頭部に持っていく。
「あなたに提供する場というのは、大勢の観客たちの前で行われるデンバーとブリタニアとの親善試合です。きっとブリタニア王は、現在英雄と言われているシロウを親善試合に出すでしょう。なのであなたにはデンバー代表として出場してもらいたい」
男の説明を聞き、俺は呆れる。
やつはただの予想で、俺たちをデンバー城に連れて行こうとしているのだ。
「それってまだ確定していないじゃない! もし、シロウがブリタニアの代表にならなかったら行き損になるわよ」
俺の代わりにエレナがブラドに指摘する。
「大丈夫です。その辺りは根回しをしておりますので、シロウが代表になるでしょう。万が一にでもシロウが代表にならなかったときは、僕があなたの借金を返済してあげます。どうですか? この条件ならどっちに転ぼうとも、あなたたちには利益しかない」
ブラドの言葉に、俺はそれなら着いて行っても何も問題はないなと思った。
デンバー代表にさえなれば、シロウと戦う機会を得られる。もし、シロウが代表にならなかったときは、やつが俺の借金を返済してくれるのだ。
あの男の言うとおり、俺には利益しかない。
俺はあまりにも上手い話しに口角を上げる。
「わかった。なら、お前を信じてデンバー城に着いて行こう」
「ありがとうございます。いやー、それにしても楽しみですね。親善試合が始まれば、あのシロウがレオニダス君にボコボコにされるのですから」
ブラドはニヤニヤと下卑た笑みを浮かべる。
「なぁ、お前はシロウにどんな怨みを持っているんだ?」
どうしてやつがシロウに執着しているのかが気になり、俺はブラドに尋ねる。
「あの男は僕たちの計画を邪魔しやがった! そのせいで仲間の一人を失い、その分の負担が僕に集中している! あの男さえいなければ、今の僕たちは違った未来を歩いていたんだ! シロウさえいなければ!」
そうとうシロウに対して怨みを持っているようだ。ブラドは歯を食い縛りながら顔を引き攣らせ、語気を強めて言葉を連ねる。
「だから、レオニダス君にやつを完膚なきまでに叩きのめしてもらいたい。優秀な君になら、あの男を倒せる」
真に迫る表情でブラドは俺の肩を掴む。男の顔から、シロウに対しての恨みが伝わってきた。
「わかった。シロウをブッ倒してお前の怨みを晴らしてやろう。何せ、ティルヴィングのお陰で俺は強くなったからな。もしかしたら既にシロウを越えているかもしれない」
「ありがとうございます。ですが、その言葉は事実かもしれないですよ。僕の見立てでは、レオニダス君はティルヴィングの影響を受け、身体能力が向上しております」
ブラドの言葉に俺は再び口角を上げながら、帯刀している剣に触れる。
そうだ。俺は圧倒的に強くなった。まだティルヴィングを使ったのは一回だけだが、たった一回の戦闘だけで、過去の自分を凌駕していることに気づいた。
あのスピードは尋常ではない速さだ。人間の限界に近い。あんなスピードで接近されたのならば、魔法使いのシロウでも瞬時に対応できないだろう。
俺は頭の中でシロウとの戦いをシミュレーションしてみる。
開始の合図と共に、俺の技の中で最も早い剣技、一閃突きを放つ。するとどうだろう。あまりの速さにシロウは対応できなくなり、俺の技に吹き飛ばされる。そしてやつは闘技場の外にまで吹き飛ばされて地面に転がり、泥まみれになりながら胃の中のものをぶちまける。
それを見た民衆たちは、シロウを罵り、観客席から物を投げつけられる。
惨めな姿を晒したシロウを見ながら俺は優越感に浸ることができるのだ。
いいぞ! そんな未来が俺にも見えてきた。これなら俺が勝つことが約束されたようなものではないか!
ああ、早く当日にならないだろうか。早くこの手でシロウを叩きのめし、シミュレーションを現実のものにしたいぜ!
「ブラド、船着き場まで案内しろ! 一秒でも早くデンバー城に向かうぞ!」
「分かっております。こちらですよ」
俺は気分を良くしながら、ブラドに船着き場まで案内させた。
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