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第六章 第二話 カーミラが仲間になりたそうにこちらを見ている

「俺たちの仲間になりたいだと?」


 赤い髪をサイドテールにしている魔族の女の娘、カーミラの言葉に、俺の鼓動は早鐘を打っていた。


 どういうつもりなんだ。どうして彼女はそんなことを言う?


 普通に考えれば、彼女が俺の仲間になりたいなんてありえない。だって、カーミラは魔族だ。魔族は人族を見下し、魔物を使役することもできる。魔族が人族と行動を共にしようなんて考えは、普通は起こさない。


 彼女の思考が読めない。何で俺たちの仲間になりたいなんて発想がでてくる?


「どうして俺たちの仲間になりたいのか、その理由を訊いてもいいか?」


 カーミラの考えがわからず、俺は彼女に尋ねる。


「最初からそのつもりさ。理由もなしに仲間になれるなんて思ってもいないからね。サザークでの魔物の襲撃事件があっただろう」


 彼女の問いかけに、俺は無言で首を振る。


「その作戦の責任者は私だったのさ。でも、シロウに敗北し、軍資金を奪われた責任を負わされ、とある組織から追放されてね。だから仕返しにシロウ側について、やつらの邪魔をしようと考えたんだ」


 カーミラの説明を聞き、一応彼女の動機は理解した。


 組織を追放され、身寄りがなくなったので俺を頼ってきたという訳だ。


 でも、だからと言ってそう簡単には首を縦に振るわけにはいかない。彼女はこれまで多くの人間を実験動物として扱ってきたのだ。彼女を仲間にするということは、危険と隣り合わせになるということ。隙を衝かれれば、実験という名目で俺を襲ってくるかもしれない。


「ワタクシは反対ですわ! あなたをシロウのパーティーに入れる訳にはいきません」


 考えていると、マリーが反対の意見を言い、俺の腕に自身の腕を絡ませてくる。


「私も反対です!」


 続いてクロエも俺の腕に自身の腕を絡ませてきた。


 今の俺は、二人の女の娘に両腕を拘束されている状態だ。


「おい、何で二人とも俺の腕に抱きつく」


 マリーとクロエに声をかけた瞬間、目の前にいたカーミラがいなくなったかと思うと、身体に重みを感じる。


「まぁ、まぁ、そう言わずに仲良くしようじゃないか。シロウは私たち三人でシェアをしよう」


「いつの間に背後に!」


「しかもどうしてシロウさんにおぶされているのですか! 離れてください!」


 クロエの言葉に、俺の首に手を回して抱きついているのはカーミラであることを知る。


 一応彼女の動きは目で追えていた。だけど、マリーとクロエが抱きついていたので、背後を振り向くことができなかった。


 まぁ、身体に重みを感じた段階で、ある程度は予想できていたのだけど。


「シロウから離れなさい! 彼はワタクシのものですわ!」


「シロウさんはマリーさんだけのものではないですよ! ですが、魔族であるあなたが入る余地なんて、これっぽっちもないのですから」


「足を引っ張るなよ! せっかく人が百歩譲って三人でシェアしようって言っているのに、そんなことをするのなら、独占させてもらうからね」


 マリーとクロエが、俺からカーミラを引き摺り下ろそうとする。けれど彼女は抵抗し、余計に離れまいと密着してきた。


 服越しではあるが、背中にカーミラの胸が圧しつけられる。


 背中に伝わる感触からは、クロエよりもマリーよりも大きく感じられる。


「おい、なんか騒がしいぞ」


「あれを見ろよ。男女が揉めていないか?」


 マリーたちが大声を上げていたせいで、近くにいた町の人達が集まってきた。


 これはヤバイな。おそらく彼らには痴話喧嘩のように映っているだろう。これ以上野次馬が集まっては、男たちからゴミを見るような目を向けられ、罵られるかもしれない。


 とにかく彼女たちの口喧嘩は止めさせなければ。


「美女たちが英雄様を取り合っているよ」


「さすが英雄様だ。俺たちとはレベルが違うぜ」


「俺も英雄になって、美少女たちにちやほやされたい」


「それは無理がある。いくら俺たちが努力をしたところで、英雄様のようにはならない。最初から備わっている素質が違うからな」


 集まった城下町の人々が、俺たちを見ながら羨ましがるような言葉を口にする。


 彼らの言葉を聞き、この時は本気で英雄と呼ばれてよかったと思った。


 もし、俺が町を救っていなければ、英雄とは呼ばれなかった。その場合、今のような状態に陥っていたら、間違いなく真逆の反応だっただろう。


 いくら俺でも、陰口のような言葉を聞かされれば、精神的にくるものがあるからな。


 城下町の人々の反応がいいとは言え、この場に留まったままなのはよくない。


「マリー、クロエ、一旦離れるから彼女を引っ張るのは止めてくれ。カーミラも俺から離れてくれないか。リーダーの命令は絶対だろう」


「わ、わかりましたわ」


「うー、それを言われたら逆らうことはできないですね」


 俺の指示に従い、マリーとクロエはカーミラから手を離す。しかし、魔族の女の娘だけは俺から離れようとはしなかった。


「二人は俺の指示に従ったぞ。早くカーミラも俺から離れてくれ」


「どうして私がシロウの言うことを聞かないといけない。私は仲間にはなっていないよ。つまり、好きなようにすることができる」


 そうだった。まだ仲間になりたいという話の段階であって、まだ俺たちのパーティーに入ったわけではない。だから俺の指示に従う必要は彼女にはないのだ。


「ほらほら、早く仲間にしないとどんどん人が集まって来るぞ」


「わ、わかりましたわ。特別に仲間に入れてあげますから、それ以上シロウに引っ付かないでください」


「マリーさんの言うとおりです。仲間になっていいですから、シロウさんから離れてください」


「二人から許可が出たんだ。これで決まりだね」


 マリーとクロエが俺に尋ねることなくカーミラを仲間にすると言った途端、魔族の女の娘は俺の首に回していた手を放し、俺から降りる。


「と言う訳で今日からよろしくシロウ」


 振り返るとカーミラはニヤリと笑い、白い歯を見せる。


 こうして強引にもカーミラが俺のパーティーに正式加入することになった。


 最後まで読んでいただきありがとうございます。


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 何卒よろしくお願いします。


 物語の続きは明日投稿予定です。

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