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第三章 第十一話 ダンジョンに住み着いた魔族

 スカルナイトを倒した俺たちは、更に一本道を歩き、先に進む。


 すると前方に扉が見えた。


 あの先に魔族がいるのだろうな。なら、油断をしないようにしないと。


 扉の前に来ると、俺はドアノブに手をかける。


 一応警戒はしていたが、ドアノブに触れた瞬間に、罠が発動するような素振りはなさそうだ。


「今から扉を開ける。心の準備はいいか?」


「もちろんですわ。シロウがいる限り、負ける気がしませんもの」


「ええ、シロウさんは勝利するに決まっているよ。私は信じているもの」


 彼女たちに尋ねると、二人は俺の勝利を信じているようで、怖気づくような素振りは見せない。


 期待されている以上は、それに応えないといけないよな。女の期待に応えるのも、男の甲斐性らしいし、頑張ってみるとしますか。


 ドアノブを捻り、扉を開ける。


「ブラボー!」


 扉を開けた瞬間、部屋の中にいる白衣の男から称賛する声と拍手が送られる。予想していない展開に、俺は困惑してしまった。


「いやーお見事、まさか私の実験動物がこうも簡単に負けてしまうとは思ってもいなかったですよ」


 男は眼鏡のブリッジを上げる。


「実験動物だと」


「そうです。モルモットと言ったほうがよかったですか? 私の新しい研究所にのこのこと人間が入って来たので、実験動物として捕獲させてもらったのです」


 男はニヤリと不気味な笑みを浮かべる。


「どうですか? 私の実験結果のゾンビは? 驚かれたでしょう? 魔物の中から魔物が生まれる。私はこの研究をしているのですよ」


「まぁ、こんなパターンは、今まで見たことも聞いたこともなかったからな。正直に驚いたよ」


「それはよかった。あなたが協力してくれたお陰で、私もいいデータが取れました。やはり、弱い人間はいくら魔物になったとしても、弱いまま。蛙の子は蛙という結果が出ましたよ」


「どうしてあんなことをするのですか! 冒険者を殺しただけではなく、魔物に変えてしまうなんて!」


「くくく、アハハ、アハハハハハハハ! これは面白いことを言う。まさかそんなことを言うやつがいるなんて」


 マリーの言葉に、突如男は笑い出す。


 どうして、あの男は急に笑い出した? 別にマリーは可笑しなことは言っていないよな?


「いやー、失敬、失敬。そう言えば、あなたたちは人間でしたね。お隣にいる男が異常だったので、つい魔族と同様な扱いをしてしまいましたよ」


 男がいきなり笑ったことに対して謝罪の言葉を述べると、表情を変える。それは弱者を見下す強者の目をしていた。


「人間などと言う下等生物は、モルモットにするにしか使い道はない。それが魔族の常識ですよ、お嬢さん」


「な、何を言っているのですか! 人間は下等生物なんかではないですわ! 訂正をしなさい!」


「どうして訂正をしなければならない。まぁ、自分が下等生物であることを自覚できないから下等生物なのでしょうね。よく考えれば、当たり前の発言かもしれません」


 やれやれと言いたげに、男は肩をすくめる。


「では、己が下等生物だということを認識してもらいましょうか? そうですね、では、ゴブリンの子でも孕んでもらうとしましょうか。人間とゴブリンの間にできた子どもがどんな形で生まれるのか、非常に気になる。いい研究テーマになりそうです。そちらのエルフの女性は、別の魔物の子を孕んでもらいましょう」


「アイシクル」


「おっと」


 俺が氷の魔法を唱えた瞬間、男の足下に水分子を集めて気温を下げ、下から突き上げるように氷柱を出現させる。


 しかし、男は咄嗟に気づき、後方に下がって躱す。


「もう、それ以上喋るな。聞いていて気分が悪い。殺すぞ!」


「あれ? 怒った? でも、私が言っていることは事実だよ。男は魔物に、女は種を繁栄させるための〇便器に、これが下等生物である人間に対しての魔族の考え方だ」


「ショック」


「がああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 男が警告を無視して言葉を連ねた瞬間、俺は失神魔法を唱えた。


 その瞬間、男の神経を活性化させ、心臓に戻る血液の量が減少させる。これにより失神を促した。


「俺はしゃべるなと言ったよな? 聞こえなかったのか?」


「がはっ、がはっ。なんだ今の魔法は? 心臓を鷲掴みされた感じだったぞ」


 チッ、腐っても魔族ということだけはある。失神魔法を一回使っただけでは、気を失わせることはできなかったか。


「この魔法は無敵貫通だ。絶対に回避することはできない。ショ――」


「させるか! フラッシュ」


 再び失神魔法を唱えようとした瞬間、俺の視界が真っ白になり、何も見えなくなる。


 油断した。目くらましをしてくるとは思わなかった。


 光を受けたせいで、目の細胞が切り替わってしまったようだな。しばらくは何も見えなさそうだ。


「アハハハハハハハ。どうやらその魔法は、対象者が見えていないと発動できないようだねぇ。私の予想が当って本当によかったよ」


 学者を思わせるような発言をしていただけに、あの男は頭がキレるようだな。一回の攻撃を受けただけで、俺の魔法を分析し、対抗策を導き出しやがった。


「私の生み出した光の影響で、しばらくは何も見えないだろう。下等生物とは思えないほどの力に驚かされた。もっと君の力というものを知りたくなってきたよ。そうだな。まずは君が連れてきた女二人を殺すとしよう。目が見えるようになった瞬間、目の前に広がるのは血みどろの肉塊になった仲間の姿だ」


 男の声が耳に入る。目が見えないのであれば、やつの居場所が把握できない。


「アハハハハハハハ死ね!」


「シロウさん三時の方角です」


「ウォーターカッター」


 クロエの声が耳に入り、俺は三時の方角に向けて切断力のある魔法を唱える。


「ぎゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。わ、私の腕がああああああぁぁぁぁぁぁ」


 男の悲鳴が聞こえた瞬間、目の細胞が切り替わったようで、周囲の光景がよく見えるようになった。


 右側を見ると、右手首から先が吹き飛ばされ、鮮血を噴き出している男の姿が見えた。


 クロエはエルフだ。人間とは違い、些細な音も聞き取ることができる。


 きっと、男が動いた際に発生した僅かな音を聞き取ったのだろうな。


 彼女のお陰で助かった。


 男は白衣を脱ぐと、口と左手を使って器用に切断された右手を縛る。


「く、くそう。誤算だった。まさかエルフがここまで微細な音を聞き取るとは思えなかった」


「クロエがいる限り、俺たちに目くらましは通じない。終わりにしよう。ウォーターカッター」


 再び切断する力のある水の魔法を唱える。


 水分子が集まり、一ミリほどの大きさにすると男に向けて放つ。


 細い水は男の腹に当たると風穴を開け、彼は口と腹から鮮血をぶちまけると地面に倒れた。


 最後まで読んでいただきありがとうございます。


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『今後の展開が気になる!次はいつ更新されるの?』


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 あれ? 前の話しはどこまで読んだっけ?


 という経験がよくあると言う人は、押しておいて損はしないかと思います。


 何卒よろしくお願いします。


 物語の続きは今日中に投稿出来ればしますが、ムリそうなら明日投稿する予定です。

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