第三章 第十話 何でゾンビの中からスカルナイトが出てくる!
ゾンビとなった行方不明者の亡骸の中から骨が出てくるのを見て、俺は唖然としてしまう。
おい、おい、ゾンビの中から別の魔物がでてくるなんて話、聞いたことがないぞ。いったいどうなっていやがる?
ゾンビから出てきた魔物は、スカルナイトと呼ばれる骨の魔物だ。
「クロエとマリーは下がっていろ! こいつは物理攻撃がほとんど効かない」
スカルナイトは不死のモンスターだ。いくら物理攻撃を与えて骨をバラバラにしたとしても、骨が元の位置に戻り、再び襲ってくる。
熟練の冒険者でも手を焼く相手だ。
どうしてゾンビの中からスカルナイトが出てくるのかは謎だけど、運が悪かったな。
俺を相手にしている時点で、敵の敗北は確定事項になっている。
「ゼイレゾナンス・バイブレーション」
魔法を発動した瞬間、一体のスカルナイトの骨が砕け、地面に落ちる。
この魔法は、物質の固有振動数と同じ周波数の音を浴びせることにより、対象を破壊することを可能にする。
スカルナイトと同じ周波数の音を出して振動を加え続けたことで、骨が疲労破壊を起こした。
骨のモンスターが倒しても復活してしまうのは、倒した際に関節部分がバラバラになって散らばるだけだからだ。
ばらしたものを再び組み立てるような感じになるからこそ、不死のように錯覚してしまう。
だけど骨自体を粉砕してしまえば、復元するのは不可能だ。復活することはない。
「さすがシロウですわ! Aクラスの魔物をいとも簡単に倒してしまうなんて」
「本当にすごいです。さすが私の神様!」
背後から美少女たちの称賛する声が耳に入ってくる。正直に嬉しいが、まだ一体を倒しただけだ。
行方不明になった冒険者の数だけ、スカルナイトはこの場に存在する。
あー、どうしようかなぁ。この魔法は一体ずつにしか効果を発揮しないんだよなぁ。だから複数で攻められたら、俺は困る。それに一体ずつ倒すのも正直に言って面倒臭い。何かいい方法がなかったけ?
俺は異世界の知識を脳から引っ張り出す。
その間に複数のスカルナイトは、剣を握り俺に近づく。そして剣を振り下ろした。
「ストロングウインドウ」
敵の剣が触れようとした瞬間、風魔法を唱えて強風を巻き起こす。
スカルナイトは骨をバラバラにしながら、後方に吹き飛ぶ。
「まったく、人が考えごとをしている最中に襲ってくるなよ。空気というものを読みやがれ」
一応これで時間稼ぎをすることはできた。俺はもう一度、異世界の知識の中から、使えそうなものを探す。
「あ、これなんか良さそうだな。あの魔法とあの魔法を組み合わせれば、できないことはない。魔法の合成は初めてだけど、実験がてらにしてみるのも良さそうだな」
独り言を漏らしていると、吹き飛ばされたスカルナイトたちが戻ってくる。
「さぁ、実験を始めようか。カーバネットウォーター」
水分子を集めて水を作り、それに二酸化炭素を加えて炭酸水をつくる。
「お前たちに俺からのプレゼントだ。ありがたく受け取ってくれよ」
炭酸水を放ち、距離を縮めてくる敵に付着させる。
「第二段階だ。ゼイレゾナンス・バイブレーション」
炭酸水塗れとなったスカルナイトに、同じ周波数の音が襲いかかる。
「これで終わりだ。合成魔法キャビテーション」
その瞬間、スカルナイトは全身が砕け散り、再起不能となった。
「ふう、どうやら実験は成功したな」
この場にいるスカルナイトは一瞬にして骨が砕かれ、地面に転がる。
「凄い、凄い! Aランクの魔物を一瞬にして倒すなんて! 一体どうやったの?」
敵を全滅させると、クロエが俺に近づき、説明を求めてきた。
うーん、どう説明しようか? エコーロケーションのときは、彼女はスキルを持っていたからこそ、理解が早かった。だけど、専門外の知識を披露したところで、理解させるのは難しいかもしれないよなぁ。でも、教えないと納得してくれないだろうし、ここは俺の説明力が試されるときだと思うか。
「そうだなぁ、炭酸水を浴びると骨に加わる力が弱まるんだ。すると、液体の中にある気体が泡となって出てくるんだよ。そこに低周波を当てたことで、炭酸水の泡が潰れては新たに生まれるのを繰り返す。すると泡は次第に大きくなって、それが急に潰れると衝撃波を発生させるんだ。それで骨を破壊したってわけ」
「なるほど! そんなことが可能なのですね。さすがシロウさんです。頼りになりますね」
ふう、どうやら今の説明でクロエは理解してくれたようだ。
「とにかく先に進もう。冒険者を魔物に変えた張本人が、この先にいるだろうから」
「でも、人を魔物に変えるなんてことは、人間にはできませんわ」
「ああ、おそらくこの先にいるのは魔族だと思っていたほうがいい」
この先に魔族がいる。できることなら戦うなんてことは避けたいけれど、冒険者が魔物に変えられたところを見る限り、避けられないよなぁ。
魔族とは戦ったことはない。未知数の戦いとなる。万が一のことが起きた場合は、俺が責任をとって二人を逃がさないとな。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
ブックマーク登録してくださった方ありがとうございます。
お陰でこの度、日間ジャンル別ランキング、ハイファンタジー部門、84位に乗りました!
応援してくださったかた本当にありがとうございます!
『面白かった!』
『続きが気になる!』
『今後の展開が気になる! 次はいつ更新されるの?』
と思いましたら
下にある☆☆☆☆☆から、作品の応援をお願いします。
面白かったら☆五つ、つまらないと思ったら☆ひとつでも大丈夫です!
あなたの感じた評価をしていただけると、作者のモチベーションが上がり、今後のパフォーマンス向上にもつながります。
右下にあるブックマーク登録もしていただければ嬉しいです!
ブックマーク登録をすると、しおりの機能が使えて前回読んだ場所が分かるようになっています!
あれ? 前の話しはどこまで読んだっけ?
という経験がよくあると言う人は、押しておいて損はしないかと思います。
今日も日間総合ランキングチャレンジデーにして複数話投稿します。
なので応援していただければ幸いです。
物語の続きは夕方6時に投稿する予定です。
何卒よろしくお願いします。




