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第三章 第五話 スキンヘッドの男、完全に禿げる (ざまぁ回)

 〜スキンヘッドの男視点〜




「ぬあああああぁぁぁぁぁぁ」


 俺ことスキンヘッドの男は、鏡に映る自分の顔を見て奇声を上げる。


「ない、ない、ない!」


 大きく目を見開きながら、俺は頭皮に手を置く。


 最近ハゲが目立つようになったので、目立たせないようにわざとスキンヘッドのヘアースタイルに変えた。それなのに目が覚めて鏡を見ると、薄毛すらなくなっていたのだ。


「おい、おい、おい! ふざけるなよ! これは悪い夢なのか」


 目の前に起きている現象を信じることができずに、俺は自身の頬を抓る。


「いて!」


 頬から感じる痛みに、更に驚愕した。


 これは夢ではなく現実。そう認識した途端に、鏡に映る自分は顔を青ざめさせていた。


 一夜にして俺の毛根は完全に死滅し、スキンヘッドからボールドヘッドに変わっていることになる。


「くそう! いったいどうしてこうなった」


 毛根が死滅する原因に思い当たる節はない。額に右手を置いて必死に心当りがないかを考えるも、直結するものはないような気がする。


「くそう!」


 俺は怒りと悲しみが混ざった複雑な心境になる。


 髪は女の命だと言うが、男も同じだ。得に薄毛の男にとっては、髪の毛一本ですら貴重になってくる。


「くそう、くそう」


 嘆いていると、目から涙が流れ落ちる。


「リーダー、どうした? 絶望の底に叩き落されたような声が聞こえてきたのだが?」


 頭の中がぐちゃぐちゃになっていると、仲間の声が扉越しに聞こえてくる。


「だ、大丈夫だ。何でもない」


「おい、本当に大丈夫なのか? 声が変だぞ」


「大丈夫だと言っているだろうが!」


「おい、どうしてキレるんだよ。やっぱりお前可笑しいぞ……お、鍵が開いているな。心配だから入らせてもらう」


「ば、バカ! 入って来るんじゃねぇ!」


 俺の忠告を無視して、仲間の男が扉を開けて部屋に入ってきた。


 彼が中に入って来た瞬間、互いに目が合う。そして仲間の男は頬を大きく膨らませ、必死に何かを我慢している様子を見せた。


 彼は無言で扉を閉める。その瞬間だ。


「ダハハハハハ、アーハハハハ」


 扉越しでも分かってしまう程の大笑いをしやがる。


 男の笑い声が耳に入った瞬間、俺は身体が沸騰したかのように、怒りで身体が熱くなるのを感じた。


「あの野郎! よくも俺の頭を見て笑いやがって!」


 俺は怒りと羞恥心の感情に支配され、無意識に壁を殴る。


 あの男は他の仲間にも言いふらしているだろう。絶対にそうだ。そうに決まっている。


「一発殴りに行ってやる。そうすれば、この気持ちも少しは落ち着くだろうよ」


 人を見た目で笑うとどうなるのか、その身体で思い知らせてやる。


 仲間を殴りに行こうとして、ドアノブに手をかける。その瞬間、先ほど笑われたできごとが脳裏を過った。


 この部屋から出たら、また笑われるのではないか。バカにされるのではないのか。


 そんなことを考えてしまい、俺はこの扉を開ける勇気がもてなくなった。


「な、何か、この頭を隠すものはないか」


 必死になって、部屋中を探す。するとバンダナが見つかった。


「よし、こいつを巻けば、頭を隠すことができる」


 バンダナを頭に巻き、鏡の前でチェックを行う。


「よし、これなら完全に頭を隠せれているだろう」


 ぶじに頭を隠すことに成功すると、今度こそ部屋から出て行く。しかし、これで俺が安心しきることはなかった。


 廊下ですれ違う人の視線が気になる。もしかしたら、心の中で俺の悪口を言っているかもしれない。


 頭の中で悪い方向の妄想が膨らんでいく。


 拳を強く握り、歯を食い縛る。


 俺がいったい何をしたって言うんだ。こんな天罰を受けるようなことをした覚えはないぞ。


 もう一度原因となるものを考える。すると、頭の中でエルフの女が思い浮かんだ。


 まさか、あの女を追放したことが原因なのか!


 もし、仮にそうだったとしても納得がいかない。だってあいつは俺のチームのお荷物だ。容姿がいいからパーティーに入れたのに、全然使えないし、声も小さい。何よりうじうじしていやがる。


 そんなやつは追い出して当たり前だ。使えないゴミは捨てるに限る。当たり前のことじゃないか。


 俺は当たり前のことを、リーダーとして正しいことをしているにすぎない。


 そんなことを考えながら廊下を歩いていると、食堂に辿り着く。


 既に他のパーティーメンバーは揃っており、席に座っていた。


「あ、やっと来た」


「おせーよリーダー寝坊か?」


 俺が食堂に入って来たのを見て、仲間たちが声をかけてきた。


 彼らの態度は昨日までと何も変わらない。もしかしてあいつは何も言ってはいないのか?


 俺を見て笑った男に視線を向ける。彼は片目でウインクをして訴えていた。俺たちだけの秘密だと言いたげに。


 その姿を見て、俺は心の中で息を吐く。


 たく、俺としたことがなんて心の狭い男だったんだ。そうだよな。俺の仲間なんだ。あいつらは俺をバカにはしない。これまで培ってきた絆があるんだ。


「悪い。ちょっと仕度に手間取った」


「リーダー、バンダナして珍しいね。ついにオシャレに目覚めたの?」


「まぁ、そんなところだ」


 俺は席に座り、食事が運ばれてくるのを待つ。


 すると汗で蒸れているのか、頭が痒くなった。


 バンダナの上から頭部を掻く、しかし布越しでは痒みは治まらなかった。


 我慢しようと思えば思うほど、痒みは治まることはなく、寧ろ悪化したような気がする。


 ええい、こうなったら仕方がない。


 バンダナに手をかけると、布を外して頭部を曝け出す。そして直に痒い場所を指で掻いた。


「リ、リーダー」


「その頭」


 仲間たちが引き攣ったような顔をして俺を見てくる。


「ぷっ、ダハハハハハ、アーハハハハ」


「アハハハハハハハ」


「イーヒヒヒヒヒヒ」


「ギャハハハハハハ」


 そして一人が吹きだして笑い出すと、連鎖反応のように他の者も笑い出した。


「アハハハハハハハ、ど、どうしたの! その頭」


「冒険者を止めて僧侶になるつもりなのかよ! あー腹が痛い」


 仲間たちの笑い声が耳に入り、俺は再び顔が熱くなった。


「うがあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 絶叫を上げると、俺は席を立って自分の部屋に向けて走る。


 俺の人生は終わった。これから先は皆から笑われる生活を送ることになるんだ。


 俺は部屋にかけ込むと、鍵をかけてベッドにダイブをする。そして枕を濡らす日々が続いた。


 最後まで読んでいただきありがとうございます。


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 あれ? 前の話しはどこまで読んだっけ?


 という経験がよくあると言う人は、押しておいて損はしないかと思います。


 今日は金曜日ということで、日間総合ランキングチャレンジデーということで、複数話投稿します。


 なので応援していただければ幸いです。


 物語の続きは夕方の6時代に投稿する予定です。


 何卒よろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] スムーズな話 [気になる点] 内容の軽さ [一言] スキンヘッドとボールドヘッドはほぼ同じ事。 ここの話のざまぁの主軸だから、惜しい
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