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第二十章 第五話 裏切りの男は女に天誅を下される。

 〜エレナ視点〜




「ファイヤーボール」


 私ことエレナは、襲いかかって来る兵士に火球を放っていた。


 おかしい。これはいったいどうなっているの?


 この兵士たちは女王軍ではなく味方の兵士、仲間のはずなのに、なぜか味方を攻撃するようになった。


 とにかく、相手が誰であろうと自分の身を守るために、降りかかる火の粉は払わないといけない。


「エレナ!」


 シロウの声が聞こえ、私は声が聞こえた方に顔を向ける。黒髪の男が、魔王と一緒にやって来た。


 隣にいるのって、敵将じゃない。どうして彼が一緒にいるの?


「エレナ、リピートバードからの連絡は聞いたか?」


「リピートバード? 私のところには何も来ていないわ」


 私は答えると、彼は罰が悪そうな顔をする。


「リピートバード頼む」


 シロウがフクロウに似た鳥に声をかけると、リピートバードは嘴を動かして声を発した。


『こちら、バーサーク部隊、大変です! レオニダスとコーウが謀反! 敵に寝返りました。それだけではありません、他の兵たちも裏切り……女王メイ……メイ女王最高! 萌え萌え!』


 リピートバードに残されたメッセージを聞き、私の鼓動は早くなる。


 嘘よ。レオニダスが私たちを裏切るなんて。


「嘘よ! レオニダスが私たちを裏切る訳がないわ!」


 録音されたメッセージを信じることができなかった私は、思わず声を荒げる。


「エレナ、君の信じたくない気持ちはわかる。だけど、これは事実なんだ」


「大将の言うとおりだ。俺はメイの幼馴染だからあいつのことはよく知っている。あいつの目は異性を惑わす魔眼だ。あいつの目を見た男は、メイの下僕になろうとする」


 シロウの隣にいた敵将がどうしてレオニダスが裏切ったのかを説明した。


 女王メイの魔眼にやられた。なら、あの女を倒せば、レオニダスは正気に戻ってくれる。


「私、女王メイのところに行って来る! 同性なら、女王の魔眼は通じない。あの女を倒して、レオニダスを正気に戻させるわ」


「待て、嬢ちゃん。悪いがあんたが行ってもメイには勝てない。あいつは魔眼なしでも強い。女王に就任してから、何年も恐怖政治で独裁国家を築き上げているからな」


「そんなこと関係ないわよ! 例え力が敵わなかったとしても、レオニダスを元に戻すために、私は全力で挑むわ!」


 敵将の男に言葉を吐き捨てると、私は全力で走った。


「女王メイ様のために勝利を!」


「邪魔よ! 退いて! ウォーターポンプ!」


 水圧の強い魔法を唱えて、邪魔をしようとする男共を吹き飛ばす。


 どいつもこいつも、女王メイの名を口にして。本当にムカつくわ。


「悪いがエレナ、ここから先は俺らメイ様親衛隊が遠さねぇ」


 戦場を駆け抜けていると、赤い髪のツーブロックの男と、腕から刃が生えた男が私の行方を遮った。


「コーウ、それにレオニダス!」


「エレナ、悪いが女王メイ様のために倒させてもらう」


 レオニダスは女王メイの名を口に出した瞬間、私は怒りの感情が湧き上がってきた。


「何が……メイ様親衛隊よ。何が……女王メイ様のために倒すよ……レオニダスのバカ!」


 私は大声で叫ぶと、目の前に火球が現れる。


 火事場のバカ力により、無詠唱で魔法が発動していたのだ。


 驚きよりも怒りが強かった私は、無我夢中になって火球をレオニダスに向けて放つ。


 火球は一直線に二人に飛んで行ったが、二人は左右に跳躍して私の火球を躱した。


 ああ、もう! 本当にムカつくわよ! どいつもこいつも男って言う生き物は、綺麗で美人な女に弱いのだから!


 私だって努力しているのに、全然気付いてもらえていない。


 何より、一歩の勇気を振り絞って前に進む勇気が持てないまま、現状維持に甘んじている私自身が一番むかつくのよ!


「バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ、バカ」


 バカと連呼する度に火球が生まれ、次々と二人に向けて放つ。


 最初は避けていた二人だったけど、次々と飛んでくる火球に逃げ道を塞がれ、とうとう火球が当たって吹き飛ばされた。


 仰向けてになって倒れるレオニダスを見て、私は彼に馬乗りになる。


 そして拳を作って彼の顔面を殴っていた。


 彼を殴る度に痛い。


 拳はもちろんだけど、何よりも心が痛かった。


 彼が魔眼にかかってしまったのは、私のせいだ。王様がチームの編成をした際に、私がムリを言ってレオニダスと同じチームにしてもらえていたのなら、こうはならなかったはず。


 手から外れそうになっている手綱を外してしまった私の落ち度。だから、彼を引き戻すのは私の役目だ。


 お願い、レオニダス。戻って来て。あなたを殴る度に心が痛くなってしまうの。


 気が付いたら、私の目からは涙が流れていた。視界が涙でぼやけ、彼の顔がはっきりと見えない。


「お願いだから戻って来て! 女王の支配から逃れなさいよ! それでも赤いバラのリーダーなの! レオニダス!」


「たく、さっきからボコスカと殴りやがって。泣くぐらいなら殴るなよ。お前の泣き顔なんてものは見たくないんだからよ」


「レオニダス……あなたもしかして」


「どうやら迷惑をかけてしまったようだな。エレナ」


「うっ、うっ、あっ、うわああああああああああああああああああああああああああん」


 彼の言葉を聞いた瞬間、私は必死に涙を堪えようとした。だけど感情的になっていた私は、我慢することができずに大声で泣き出した。


「レオニダス、何やっている。早くその女を倒さないか」


 どうやら吹き飛ばしたコーウが戻ってきたみたい。


「エレナ、悪いが一度降りてくれ」


 私はレオニダスに馬乗りしていることを思い出し、すぐに彼から降りる。


「ああ、そうだな。確かに早く倒さないといけない。だけどよ、俺が相手をするのはお前だ。コーウ!」


 レオニダスが起き上がると、彼は剣の刃先をコーウに向けた。


「お前、正気か?」


「ああ、エレナが頑張って俺の目を覚まさせてくれたんだ。今度は俺がコーウの目を覚まさせてやる」


「レオニダス、大丈夫なの!」


 さっきまで私は彼をボコスカと殴っていた。ダメージはまだ残っているはず。


 心配になった私は、思わず彼に声をかける。


「安心しろ。エレナには指一本触れさせねぇ!」


 レオニダスの言葉に、私は胸を打たれる。


 好きな人からのそのセリフは、乙女ならキュンとしてしまうだろう。


 だけど私は、ただ守られるだけでは終わりたくない。


「悪いんだけど、私もコーウとの戦いに参加するわよ。私だってただ守られるだけの存在ではありたくないもの」


 私とレオニダスは、コーウと対峙する。


「いくぜエレナ!」


「うん!」


最後まで読んでいただきありがとうございます。


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