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第二十章 第二話 お前生きていたのか!

「メッフィー、お前は確か俺が倒したはずだよな」


 俺の問いに、道化の男はニヤリと口角を上げる。


「はい? 私がいつ、何時何分何秒、この星が何回回ったときに私は死んだと言いましたか?……私を舐めるのもいい加減にしろ!」


 メッフィーは最初嘲笑うかのような口調で話していたが、途中から俺を睨むとドスの効いた声で叫ぶ。


「まぁ、いいでしょう。ここに来たのはあなたに会うためです。ミーリアを返してください。あなた達の捕虜になっていることは知っています。彼女は私の所有物です」


「何か勘違いしているようだけど、ミーリアは捕虜にはしていない。俺たちの陣地で匿っている。そして、ミーリアは絶対に渡さない。あんな小さい子が、奴隷としての人生を歩んでいい訳がない」


「困りましたね。交渉決裂ですか。それも良いでしょう。なら……力尽くで取り返すまでだ! 私のトリックを見破れないで、死んだと思い込んでいた青二才が! 私に勝てる訳がないんだ!」


 途中から口調を変えて乱暴に叫ぶと、メッフィーはパチンと指を鳴らす。


「メッフィーマジック!」


 やつが叫ぶと、一瞬にしてメッフィーの数が増えた。


「さぁ、私は五人に増えました。このトリック、あなたは見破れますか? まぁ、ムリでしょうね。私が死んだと思い込んでいたあなたには、解けないでしょう」


 一人のメッフィーが口角を上げると、連動しているかのように残りの四人も同じ動作をする。


 やつはトリックと言っていた。なら、ちゃんとそのタネも存在しているはずだ。まずは敵の力を見極めるところからだ。


「ウォーターウィップ!」


 空気中の水分を集め、一つに固めて水の鞭を作り、メッフィーに向けて横薙ぎに振る。


 放たれた鞭は、四人のメッフィーに当たるが、残りの一人には躱されてしまう。


 だけど、これで本物が分かった。


「お前が本物だ! ファイヤーボール!」


「本当にその選択肢が合っているのですか?」


 呪文を唱えて目の前に火球が出現した瞬間、後方からメッフィーの声が聞こえた。


 いつの間に背後を取られた。


 俺は振り返る。するとそこにはメッフィーの姿はなく、代わりにチョウが飛んでいた。


「バーカ! 隙だらけですよ!」


 再び、背後からやつの声が聞こえ、もう一度振り返る。


 俺の生み出した火球はなぜか消えており、代わりに剣を振り下ろそうとしているメッフィーがいた。


 このままでは斬られる。


 咄嗟にバックステップで後方に下がり、敵の一撃を回避した。


「アーハハハハ! 逃げてばかりじゃないですか。これだから青二才は全然ダメなんです……英雄なんて呼ばれて調子に乗っているんじゃねぇよ!」


 今度は真下から!


 下を見ると、地面から這い出たゾンビのように、メッフィーが砂の中から顔を出し、俺の足首を掴もうとする。


 捕まってたまるか。


 もう一度後方に下がり、やつの手から逃れる。


 ははは、本当に逃げの一手じゃないか。まさか、この俺をここまで手こずらせるやつがいるとは思わなかった。


 考えろ、必ずこの不可思議な現象を解く鍵はあるはずだ。


 周辺の様子を見ると、あることに気づく。


 あれ? どうして俺のファイヤーボールが残っている? メッフィーに掻き消されたんじゃないのか?


 本当は掻き消されていなかった? つまり俺は、勝手にファイヤーボールが消えたと思い込んでいたということになる。


 消えていると思い込んでいた火球の存在に、メッフィーのいた場所に現れたチョウ。


 もしかして!


 メッフィーのトリックの可能性を見出した俺は、数秒前までいた場所を直視する。


 地面には巣穴から顔を出しているウサギがいた。


 なるほど、そういうことか。やっと分かったぜ、メッフィーマジックの正体が。


「ブレインセラピー」


 俺は脳の異常を回復させる呪文を唱える。


 ひとまずはこれで様子見だな。相手が何かアクションをしてきたときに見極めさせてもらう。


「さぁ、さぁ、さぁ、いつまで逃げ切れるかな! 今度は百人の私が相手をしてあげます」


 メッフィーが指をパチンと鳴らした。


 くるか。


「さぁ、これであなたも終わりです」


 俺はその場で立ち尽くして様子を伺う。しかし、やつは一歩も動かなかった。


「ハーハハハハ! 逃げる暇もなく滅多刺しです。これであなたも終わりですね!」


 メッフィーは高らかに笑うが、俺の目には百体のあいつも見えないし、痛みも全く感じなかった。


 それもそうだろうな。本当に斬られてはいないのだから。


 どうやら俺の読みが当たったようだ。これなら、あいつに惑わされることはない。


「残念だったな。お前のトリックは分かった。もうお前の声には翻弄されないぞ」


「はぁ? 何を言っているのですか? よく見てくださいよ。あなたが血まみれで今にも死にそうではないですか?」


「だから、そんな嘘の情報を植え付けようとしてもムダだ! 俺は百人のお前が見えていなかったし、どこもケガはしていない!」


「そんなバカな! 私は五人います。さてさて、本物はどこにいるのでしょうか?」


「良い加減に認めやがれ! シャクルアイス!」


 氷の拘束呪文を唱えて、俺は一人しかいないメッフィーの足を凍らせて動きを封じる。


「動けない。まさか本当に私のトリックを見破ったと言うのか!」


「だから、さっきからそう言っているじゃないか! ウエポンカーニバル!」


 呪文を唱えて空中に数多くの武器を展開させる。


「これで終わりだ! ウエポンアロー!」


 一斉に武器が放たれると、剣や槍、斧と言った無数の得物が矢のように放たれ、メッフィーの肉体に突き刺さる」


「がはっ……まさか……本当に……見破られていたとは……あなたの……観察力……知識を……侮っていました」


「俺の立てた理論はこうだ。まず、お前は魔力を微小な粒子に変えて周囲に放つ。それを人が鼻腔から吸引し、鼻の粘膜から吸収して血液に混じると、摂取した成分が脳へと送り込まれる。それにより脳は、負荷によって脳内神経伝達物質の過剰分泌で生じた脳回路の異常が発生する。脳回路上を制御、抑制されない情報が駆け巡るという暴走状態に陥った脳は、情報のつながりが統合できなくなって混乱してしまう。フィルターのかからないあらゆる刺激情報が直接脳に入力されることになり、脳の記憶を司る海馬に架空の記憶を植え付けた」


「そのとおり……です。私の魔力の影響を受けた人は……私の声がスイッチとなって……私が言ったとおりの幻覚を見るように……なっていた……完敗です……英雄シロウ」


 メッフィーは瞼を閉じると、それ以降は目を開けることはなかった。


 これでミーリアは完全に自由になった。


 きっと彼女に伝えたら喜ぶだろうな。この戦争が終わったら、彼女に普通の生活というものを色々と教えてあげないといけない。


「ご主人様、危ないワン」


「え?」


 メッフィーを倒して気が緩んでいると、目の前に巨大な火球が迫っていた。


 いつの間に! 全然気付かなかった。まずい、やられる!


「ご主人様をお守りするワン」


 避けることを諦めた瞬間、俺は突き飛ばされた。そして直ぐに起き上がって先ほどまでいた場所を見ると、キャットが着ていた服が燃えているのが見えた。


「キャットオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」


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[一言] 「俺の立てた理論はこうだ。(略)、脳の記憶を司る海馬に架空の記憶を植え付けた」 「そのとおり……です。 …いや、ちゃんと理解して受け答えしてんのか? 脳内神経伝達物質とか海馬とか、そもそも…
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