表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

184/191

第十九章 第十話 初戦の夜

「本日は皆んなよく頑張ってくれた。皆の衆の活躍のお陰で、女王メイの軍団を撤退させることに成功した。初戦の勝利を祝して、今日は英気を養ってくれ。乾杯!」


 ブリタニア王が乾杯の音頭をとり、俺たちは初戦の勝利を祝して酒を飲んだ。


「師匠! ワタシの戦い見てくれましたか!」


 コップの中に入っている酒を飲もうとすると、背後からアッテラの声が聞こえ、背中に抱きつかれる。


 彼女の胸が背中に当たり、一瞬ドキッとしてしまう。


「アッテラ、すまない。別のチームだったから見ていない」


「そんなー、ワタシ頑張って敵の兵士を何人も倒したんですよ」


 アッテラの勇姿を見てやれなかったことに不満に感じたのか、アッテラは俺を見ながら頬を膨らませる。


 こんなに可愛らしい娘が、封印されていた魔王とは全然思えないよな。


 そんなことを思いながら、コップに入った酒を飲む。


「遠くから見ていましたが、アッテラさんは凄く活躍されていましたわ。ねぇ、スカーヤ」


「そうですわね。アッテラさんは剣を振っただけで、何百人もの敵兵を吹き飛ばしていました。シロウさん、お酒のおかわりを注ぎますわね」


 コヤンさんの言葉にスカーヤさんが答えると、彼女は俺のコップにお酒を注ぐ。


「ケモノ族の巫女もなかなかのものだったよ。双子という利点を生かして、敵兵を錯乱させていた。あれは君たちにしかできないことだった」


「あら、アッテラさんに見られているとは思いませんでしたわ。スカーヤは気づいていましたか?」


「いえ、ワタクシも気付きませんでした」


 アッテラと双子の巫女から、各部隊の報告を聞いていると、俺に影が差した。顔を上げると、キャプテンモネが果物の入った皿を持って立っていた。


「キャプテンモネ」


「魔王を打ち倒した英雄様は本当にモテモテだな」


 彼女の言葉に、俺は苦笑いを浮かべる。別にモテていると言う実感はないのだけどなぁ。どちらかと言うと、俺の人徳に人が集まっていると言うのが、適切な言葉だと思う。


「はい、これ。甲板員が君に持って行けと言ったから持って来た」


 甲板員に言われたから来たと、キャプテンモネが言う。俺は甲板員たちが集まっている場所を見た。すると、元空賊の頭と目が合う。彼は親指を上にしてグッドのサインを送った。


 なるほどなぁ、あいつなりに彼女を気遣ったと言うわけか。


「それじゃ、ボクは戻るから」


「待ってくれよ。せっかくだから、ここに座って話しを聞かせてくれないか? 俺たちと別れたあと、どんなことがあったのかを」


「ふーん。君は物好きだね。船長の話しに興味があるなんて。まぁ、君がそんなに話しを聞きたいのなら、特別に話しを聞かせて上げるよ」


 踵を返して離れようとしていたキャプテンモネは、身体を反転させて、その場に座り込む。


 甲板員たちの方を見ると、元空賊の頭が涙を流して他の甲板員たちと抱き合っていた。


 気持ち悪い奴らだな。もしかしてホモだったりするのか。


 キャプテンモネの話しを聞いて一時間ほど経った頃、俺は尿意を感じて一度彼女たちから離れた。


 用意されてある簡易トイレで用を足し、皆んなのところに戻ろうとすると、金髪の長い髪の女性が、クリーム色の髪の少女と話している光景が見えた。


「あれはクロエとミーリアか。それにしても、どうして二人はあんなに離れたところで話しているんだ?」


 疑問に思っていると、クロエが立ち上がってこちらに歩いて来る。


「あ、シロウさん!」


「クロエ、ミーリアの相手をしてくれていたんだな」


「うん、一人で離れたところにいたから、なんだかほっておけなくって。でも、中々心を開いてくれないんだ」


「まぁ、ミーリアは元々敵軍だったわけだし、唯一の肉親であるバーサーカーまで失った。子供でもある以上、簡単には割り切れないはずだからな」


「それでも私は、ミーリアちゃんと仲良くなりたい。血は繋がっていなくても、本当のお姉ちゃんと思ってもらえるように」


「クロエなら大丈夫だよ。時間はかかるかもしれないけれど、あの子は本当にいい子だ。時間を掛ければ、いずれ打ち解けてくれる」


「うん。それまで私は頑張るよ。それじゃあ、私はおトイレに行って来るね」


 俺の横を通り過ぎ、クロエは簡易トイレに向かう。


「俺も少しミーリアと話しておくか」


 アッテラたちがいるところに戻るのを止め、ミーリアがいるところに向かう。


「ミーリア、どうしてこんなところにいるんだ?」


「シロウ……お兄ちゃん。わたし……本当にここにいてもいいのかな?」


 どこか不安気な雰囲気を醸しながら、ミーリアは訊ねてくる。


「ここに居ていいに決まっているだろう! ちゃんと王様の許可はもらってある。ミーリアは捕虜にはしないし、普通の子どもとして扱ってもらえるようにしてもらっている」


「シロウお兄ちゃん。手を繋いでもいい?」


「別に構わないけど」


 まだ小さい手を握ってあげると、彼女の手は震えていた。


 それはそうだよな。いくら俺がいるからと言っても、ここには彼女の知っている人はほとんどいない。


 心細く、怖くて不安なのは当たり前なのだ。ヘラとクレースにも頼まれている以上、彼女の精神面も守ってあげなくては。


「やっぱりシロウお兄ちゃんは凄いや」


「いきなりどうした?」


 突然褒めだした理由が分からず、俺は首を傾げる。


「シロウお兄ちゃんの手を握っていると、全然怖くない。それよりも安心感のほうが強くなっているの」


 そう言えば、いつの間にかミーリアの手の震えが収まっているな。


「ふあぁ〜」


 安心して気が緩んでしまったのかもしれないな。ミーリアは子どもぽく大きなあくびをすると、眠たそうに瞼を擦った。


「ミーリア、眠いのならベッドに行くか」


「うん……シロウお兄ちゃん……一つお願いがあるの」


「なんだい?」


「わたしと一緒に寝て。わたしが眠るまでの間だけでいいから」


 彼女の言葉に、一瞬驚いてしまう。


「わかった。今からベッドに行こうか」


 彼女の心の拠り所が俺だけとなっている以上、ここで彼女のお願いを断る訳にはいかない。


 ミーリアと手を繋ぎながら、俺専用に用意してもらったテントの中に入る。


 ミーリアと一緒にベッドに潜り込むと、俺は彼女が眠りにつくまで手を握ってあげた。


 彼女が眠るまで付き添うつもりであったが、戦闘の疲れと酒による睡眠の誘発のせいで、俺まで眠くなってしまった。


 気が付くと、俺はミーリアと一緒に同じベッドで朝を迎えていた。


 最後まで読んでいただきありがとうございます。


 次は第二十章ですが、第二十章の内容で完結とさせていただきます。


 完結の理由ですが、実力不足を実感し、これ以上はこの作品を伸ばせないと判断したからです。


 あと数話ですが、最後まで楽しんでいただけたら幸いです。


『面白かった!』


『続きが気になる!』


『今後の展開が気になる! 次はいつ更新されるの?』


 と思いましたら


 広告の下にある☆☆☆☆☆から、作品の応援をお願いします。


 面白かったら☆五つ、つまらないと思ったら☆ひとつでも大丈夫です!


 あなたの感じた評価をしていただけると、作者のモチベーションが上がり、今後のパフォーマンス向上にもつながります。


 右下にあるブックマーク登録もしていただければ嬉しいです!


 何卒よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ