第二章 第五話 依頼クリア後にもらった金が少ない! え! ギルドって今財政難なの?
「マリーはしばらくここに残っていてくれ。俺はやることがあるから」
「わかりましたわ。ですが、あんまり待たせないでください」
レオニダスとエレナが、レッサーデーモンに追いかけられてここの階層からいなくなると、俺は亡くなった冒険者たちの亡骸を埋葬することにした。
「ロック」
岩石の魔法を唱えてダンジョンの地面を抉り、穴を開ける。
そして、地面に横たわっていた冒険者たちの亡骸を穴の中に入れると、その上から土を被せ、穴を塞ぐ。
「どうか安らかに眠ってくれ」
冒険者として立派に職務を果たした彼らに祈りを捧げると、俺はマリーのところに戻る。
「お待たせ」
「あら、思っていたのよりも早かったですわね」
「まぁ……ね」
マリーに近づくと、俺は激しい睡魔に襲われる。
どうやら、魔法の副作用がこのタイミングで起こったようだ。
睡眠物質が脳内で増幅した俺は、我慢することができずに両の瞼を閉じる。
「シロウ! どうしたのですか! しっかりしてください」
意識が遠ざかっていく中、マリーの声が耳に入る。
どのくらい経ったのだろうか? 魔法の副作用の効果がなくなった俺は、目を覚ます。
「あら、目を覚まされたようですわね。気分のほうは宜しくて?」
目覚めたばかりで視界が少しぼやける中、マリーが俺に声をかけている姿が見えた。
しかし、彼女の顔が近いように感じられた。
「マリー、ここは?」
「まだダンジョンの中ですわ。シロウが急に眠ってしまわれたので、目が覚めるまで待っていましたのよ」
「そうかそれは悪かったな」
「お疲れだったのでしょう。気にしないでくださいませ」
俺は上体を起こしてマリーを見る。彼女は正座を片方崩した横座りの態勢で座っていた。
「もしかして膝枕をしていたとか」
「パ、パーティーメンバーたる者、リーダーが良き睡眠がとれるようにしてさしあげるのは、当然のことですわよ」
どうやら俺は、マリーの膝の上で眠っていたらしい。どおりで寝心地が良かったわけだ。
「アレ? でもどうしてマリーは眠っていない? 確かマリーにも同じ魔法をかけたよな?」
「もしかして、シロウがレッサーデーモンのときみたいに眠ってしまったことを言っておりますの? それなら、ワタクシのユニークスキルによるものでしょう。ワタクシは一度、シロウから睡眠魔法をかけられていますので、睡眠耐性がついたのでしょう」
マリーの説明を聞き、本当に便利なスキルだよなと思う。一度受けてしまえば、どんな状態異常も二回目は通用しないのだから。
「マリーのスキルって、一度受ければほぼ無敵なんじゃないのか」
「いえいえ、そこまではないですわ。ワタクシよりも、シロウのスキルのほうが凄いですわよ。今まで聞いたことのないような魔法を、次々と生み出しますもの! あなたこそ、神に選ばれた英雄ですわよ」
俺のユニークスキル、魔学者のことをマリーは大袈裟に褒める。
「いや、俺のスキルだって万能のように見えるけど、欠点もある。死者を蘇生させるような魔法は生み出すことができないし、病気を治す魔法も使えない」
「そうなのですの?」
スキルの説明を聞いたマリーが首を傾げる。
「それよりも、そろそろダンジョンを出て町に帰ろう。依頼クリアかどうかは微妙なところだけど、報告はしないといけないからな」
俺たちは最下層から階段を上り、地上に出るとギルドに向かった。
「――と言う訳だ」
俺は東のダンジョンでのできごとを、ギルドマスターのオルテガに話す。
「なるほど、卵の正体はレッサーデーモンだったか。そして卵を破壊し、追い出したと」
レオニダスたちのことは伏せて報告をした。俺からの温情だ。あれに懲りたら、己の過ちに気づき、自分を見つめなおしてもらいたい。
「ああ、勝手な判断をして悪い。俺的にはあれがベストだと思った」
「いや、俺がお前の立場でもそうしていただろう。それにあのダンジョンからレッサーデーモンを追い出せられただけでもデカい」
「そう言ってもらえると俺のほうも助かる。それで報酬の件なのだが」
「ああ、もちろん後で渡す。金額は五十万ギルでどうだ?」
「五十万? たったの?」
金額を聞いた俺は、思わず驚いてしまう。依頼の金額としては高いほうだ。だけど依頼は一般人からではなく、ギルドからの依頼。もっと多くの金がもらえると予想していた。
「まぁ、お前からすればそうだろうな。最近ギルド本部のほうも、運営が上手く行っていないらしい。これが我々ギルドの出せる最大金額だ」
「経営者って言うのは本当に大変そうだよな。その内ここのギルドがなくなったりして」
「おいおい、悪い冗談はよしてくれ。縁起でもない。だけどまぁ、ここのギルドは潰れることはないだろう。たくさんの魔物が押し寄せて物理的に潰れない限りは」
オルテガと談笑していると、俺はチーム解散の件を思い出す。
「そう言えば、オルテガが勝手にマリーとチームを組ませたじゃないか? 早速だけど、チーム解散の手続きをしたいのだけど」
「いや、それは止めておいたほうがいい」
「どうしてだよ!」
俺は語気を強めていうと、彼はバツが悪そうな顔をする。
「いや、俺が勝手にやったことだが、正式な手続きは既に終えている。だから、チームを解散してソロに戻ると、ランクが一番下になってしまう」
「それぐらいなら問題ない。この前だって、オルテガが依頼を回してくれたお陰で、直ぐにAランクに戻ることができたからな」
「そこに関しては何も心配はしていない。俺が本題として言いたいのはこれだ」
オルテガは親指と人差し指の先端をくっ付け、お金のマークを作る。
「シロウがダンジョンに潜ったあとに、本部から書類が届いた。それには、解散するチームに関してだ。解散したチームは、元のチームリーダーが手数料として百万ギルを支払うことになった」
「百万って、ぼったくりじゃないか!」
「ああ、俺もふざけた通知だと思った。だけどこれで今のギルドが財政難であることが理解してくれるだろう」
俺は右手を額に置く。
なんてことだ。チームを解散するのにそんな金を支払うなんてバカげている。マリーのことだ。相談しても俺の力を利用したいために、金を工面してはくれないだろう。
つまり、しばらくはソロとしての活動ができなくなる。
「どうしてお前がソロに拘るのかはわからないが、これも神様の導きの結果だ。いっそうのこと、チームとして活動するべきじゃないのか?」
チームとしての活動を勧めるオルテガだが、俺は素直に首を縦に振ることができない。
力のある者がその使い道を誤れば、大きな災いを引き寄せることになる。
万が一のことが起きた場合、責任を取る者は少ないほうがいいに決まっている。
「まぁ、考えておくよ」
その場凌ぎの返事をしつつ考えごとをしていると、あることに気がつく。
「なぁ、オルテガ? 俺はお前に強硬手段でチームを組まされたのだから、オルテガが手数料の半分を払ってくれればそれで解決するじゃないか?」
そう、これは同意なき強制執行だ。責任の一端はオルテガにもある。
全額とは言わずとも、半分支払ってもらえばそれで解決する。
「何だって? すまないが、最近年のせいでよく聞こえないんだよ。まぁ、そんなわけで今後はチームで頑張ってくれ」
そのように告げると、オルテガは逃げるように二階に上がって行く。
「あのやろう、調子のいいときだけ俺を担ぎ上げやがって、金の話しになると逃げやがるとは」
俺は彼に対して苛立ちを覚えつつも、ギルドから出て行った。
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