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第十七章 第六話 とりあえず百件の依頼を終わらせた

 魔道神官が握っている杖を天高く掲げる。すると、杖に埋め込まれている紅玉が光を放った。


『さぁ、味方同士で殺し合え!』


「では、早速始めさせてもらいましょうか。食らいなさい!」


 杖の光を浴びた瞬間、マリーは鞭を振るった。彼女の鞭は、標的を誤ることなく、魔物の腹部に当てる。


『ぎゃああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


 鞭が魔道神官に当たった瞬間、やつは思いっきり後方に吹き飛ばされて壁に激突した。


『そんな……バカな……どうして……同士打ちをしない』


「残念でしたわね。ワタクシのユニークスキル【抗体】は、一度受けた状態異常を無効化することができますの。幻覚の杖による混乱は、過去にレオニダスに使われたことがあったので、全然効きませんわ」


『くっ、不覚。まさかそんなスキル持ちがいたとは』


「さぁ、次で終わらせますわよ」


 マリーがもう一度、鞭をしならせて魔物に当てる。


『くそおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! こんなガキにやられるとはあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!』


 魔物が吼えた瞬間、やつの肉体はバラバラになった。


 元から肉体は腐っていたからな。音速を超えるほどの威力に、身体がもたなかったのだろう。


「やりましたわ! シロウ! ワタクシ一人で、魔道神官を倒しましたわよ!」


 マリーが喜びながら俺に抱きついてくる。俺好みの胸が当たり、胸の鼓動が早くなった。


「マ、マリー。嬉しいのはわかったけど、離れてくれ。クロエたちを元に戻さないといけないから」


「マリーさん、いつまで睨みあっているのですか! 早く倒してくださいよ」


「そうだ。ぐずぐずしているのなら、私が変わりに相手をするよ。丁度新しい薬を作ったから、試してみたい」


「マリーお姉様、ファイトですわ!」


「キャットは陰ながら応援するワン」


 俺は振り返る。背後にいたクロエたちが、幻覚の杖の光を受けて互いに睨み合っていた。


 あの光を浴びると、幻覚を見ることになる成分が脳内に増幅する。それにより、脳が異常を起こして混乱を起こしているのだ。


「さて、元に戻すか。ブレインセラピー」


 魔法を唱え、クロエたちの幻覚成分を遮断する。


「あれ? 私たちどうして睨み合っているの?」


「分からない。いったい何が起きていたのだろう」


「わたしも記憶の一部がありませんわ」


「キャットも途中から覚えていないワン」


 余計な情報が入らなくなったことで、彼女たちは正気を取り戻した。


「ふあ〜、今度はなんだか眠くなってきた」


 クロエが手で口元を隠すと、大きいあくびを漏らした。


 それが伝染していったようで、カーミラたちも欠伸をする。


 そう言えば、この魔法は副作用で眠気を引き起こすのだった。久しぶりに使ったから、忘れていたよ。


「完全に眠る前に、眠気を吹き飛ばさないとな。ウイークアップ」


 覚醒魔法を唱え、クロエたちの脳に溜まった睡眠物質を除去する。


 これで彼女たちが眠ることはないだろう。


「よし、それじゃああともう少し頑張るとしますか」


 その後も皆んなと協力して討伐依頼をこなし、今日一日で百件の依頼を終わらせた。




 夜になった頃、サザークの町に戻ってギルドでオルテガに報告をした。


「ガハハハハ! さすがシロウ率いるエグザイルド! 今日一日で百件もの依頼を終わらせるとは驚きだ」


 俺の報告が相当嬉しかったのだろう。彼は大声で笑うと俺の肩に手を置いた。


「本当に……グス……ありがとう。お前は……俺たちの救世主だ……グス」


 今度は目から涙を流して礼を言ってくる。


 笑ったり泣いたり、忙しいやつだなぁ。


「シロウ! 百件の依頼をクリアした祝いに、今から飲みに行くぞ!」


 今度は笑顔を作りながら、俺の肩に腕を回してくる。そして大きめの声音で飲みに行くことを告げた。


「オルテガ、百件の依頼をこなしたくらいでわざわざ祝うなよ」


「お前は本当に実感のないやつだなぁ。一日で百件の依頼を終える冒険者なんて、世界中探しても、お前くらいなものだぞ」


 いや、いや、そんなわけがないだろう。いくら俺に残りの四百件の依頼をやってほしいからと言って、褒めすぎだ。俺ができるくらいなんだ。世界中を探せばごろごろいるに決まっている。


 だけどまぁ、オルテガの元気が戻って良かった。仕方がないから、今日くらいは彼につきやってあげるか。


「わかった。逃げたりしないから、いい加減に離してくれ。おっさんに抱きつかれて喜ぶ趣味はねぇから」


 彼を引き離して距離を空け、俺たちはオルテガがよく行く酒場に向かった。


「マスター! いつものやつを人数分持って来てくれ」


 酒場に入るなり、オルテガはカウンターでグラスを拭いているマスターに、酒を用意するように言う。


「オルテガ、久しぶりだな。ギルドが潰れそうになって、やけ酒でも飲みに来たのか?」


「バーカ、その逆だ。英雄シロウ様が帰って来てくれたお陰で、一日で五分の一依頼が終わったんだよ! だから今日はそのお祝いだ」


 オルテガが俺のことを言うと、酒場のマスターと目が合う。彼は笑みを浮かべると、拭いていたグラスをテーブルの上に置く。


「わかったよ。それじゃあ直ぐに用意する」


「シロウ、今から朝まで飲み明かすぞ!」


「いや、せめて日付が変わる頃には返してくれよ。明日の依頼に響いてしまうぞ」


「大丈夫だ。何せ英雄シロウ様だからな。二日酔いくらいザコモンスター相手には丁度いいハンデだろう。ワハハハハ!」


 豪快に笑っていやがるけどよ、お前が言っているザコモンスターは、ランクB以上なんだぞ。まぁ、実際そのとおりなんだけどな。


 確かにハンデにはなる。だけど二日酔いではさすがに戦いたくないよな。何か異世界の知識で役に立ちそうなものはなかったっけ?


 俺はユニークスキル【魔学者】を使い、異世界の知識の中から役に立ちそうなものを探す。


 お、これはいいな。これなら二日酔いを治すことができる。


 二日酔いを治す方法を見つけ、早速新たな魔法を作る。新魔法を開発したところで、小タルで作られたジョッキがテーブルの上に置かれた。


「全員に酒が行き渡ったな。百件の依頼完了を祝して乾杯!」


「「「「「「乾杯!」」」」」」


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