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第十七章 第五話 久しぶりの冒険者としての仕事だけど、どれもすぐに終わってしまうな。

 翌日、俺たちはもう一度ギルドを訪れ、依頼内容を確認する。


「それで、どれくらいランクの高い依頼が溜まっているんだ?」


「まぁ、こんな感じだ」


 オルテガがテーブルの上に、依頼書の山を載せる。


「ざっと五百件といったところだ」


 五百か。思っていたよりも少なかったな。


「五百! そんなにありますの!」


 マリーのやつ、そんなに少なく考えていたのか? 俺と真逆の反応をするじゃないか。


「具体的にはどんな種類の依頼が多いの? ギルドマスター」


「主に、討伐系が殆どだな。危険な場所以外の採取系の依頼は、このギルドにいる冒険者たちが依頼を受けてくれた」


 クロエが訊ねると、討伐系の依頼が殆どであると、オルテガは言う。


「討伐系が殆どか。とりあえずはサザークの周辺からの依頼を終らせ、徐々に遠くの依頼を受ける段取りだな」


 地域別に依頼書を並べ直し、順番を決める。


「まぁ、こんな感じだろう。それじゃあ早速始めるとするか」


 俺は一番上の依頼内容を黙読する。


『カーミラちゃん人形のパンツを作りたいから、マンダラグモの糸を調達して欲しいの! やっぱりカーミラちゃん人形には、最高級の生地で作ってあげたいからね』


 マーカラさんからじゃないか! なんで人形に履かせるパンツにそこまでこだわる!


「あのバカ姉さん、そんなに私があげた人形を大事にしているの。普通はそこまでしないでしょう」


 依頼内容を見て、カーミラは額に手を置く。だが、僅かに口角が上がったような気がした。


 口では嘆いているように見えるけど、内心は喜んでいるのかもしれないなぁ。まぁ、自分が作ったものを喜んでくれるというのは、嬉しいものだ。


 俺たちはマーカラさんの依頼を受けるために、マンダラグモのいる森に向かう。


 三十分ほど経つと、周辺の木々が蜘蛛の巣だらけになっている場所に辿り着く。


 多分、ここがマンダラクモの縄張りだろうな。


「さぁ、出てこい!」


 俺はどこかに潜んでいるであろう、魔物に姿を見せるように言う。しかしクモは姿を見せなかった。


 ならば、炙り出すまでだ。


「皆んな! しばらくの間目を閉じていてくれ。ダズリンライト!」


 仲間たちに目を閉じるように言うと、俺も瞼を閉じて魔法を発動する。


 何かが落下する音が聞こえ、三秒ほど待ってから目を開ける。地面には一メートルほどのクモが倒れていた。


 背中に幾何学模様がある。マンダラクモで間違いない。


 あの魔物は、俺の眩しい光を受けて目が眩んでいる。正確に標的を狙うことはできないはずだ。


 マンダラクモは尻尾から糸を出す。しかし俺の予想どおり、やつは誰もいないところに糸を放っていた。


「糸も出してくれたことだし、一撃で終らせよう。ハートラプチュア!」


 魔法唱え、マンダラクモの心臓に穴を開ける。即死魔法の効果により、魔物は一撃で倒れた。


「あとはこの糸を回収するだけだな」


 納品アイテムを回収すると、俺は次の依頼内容を確認する。


 クックルーの討伐か。懐かしいなぁ。Aランクになるために、こいつの討伐依頼を受けたときは、少しだけ手こずってしまった。場所はこの森みたいだし、このまま奥に進むとしますか。


『コケー! コケー! コー!』


 しばらく歩くと、クックルーの鳴き声が聞こえてきた。


 どうやら近づいてきたみたいだな。


「クックルーは逃げ足が速い。俺が足止めをしておくから、その間にクロエが矢を撃ってくれ」


「わかった。任せてよ」


「それじゃあ始めるぞ。エコーロケーション」


 探査魔法を唱え、俺は前方に超音波を飛ばす。


「クックルーと思われる反応が返ってきた。こっちだ」


 仲間たちを引き連れ、討伐対象がいる場所に近づく。


「いた。クックルーだ」


『コケー! コケー! コー!』


 ニワトリを巨大化させたような魔物が、周辺を警戒しながら鳴き声を上げている。


 やつの地面には野菜が転がっていた。きっとどこかの畑を荒らしてきたのだろう。


 まずは身動きを止める。


「シャクルアイス」


 氷の拘束魔法を唱え、魔物の動きを止める。


「クロエ、今だ!」


「はい!」


 クロエが矢を放つ。放たれた矢は、魔物の脳天に直撃した。


『コケ!』


 クックルーは短い声を上げると、頭を下げた。


 どうやら、一撃で倒したようだな。


「お疲れ、よくやった」


「いえ、シロウさんのお役に立つことは少ないので、頼ってもらえて嬉しいです」


 一応皆の力量を再確認するのに丁度いいと思った。だから今回はサポートに回って、クロエに任せてみたけれど、俺の予想どおり、クロエも成長している。


 俺が目立ってしまうばかり、彼女たちの活躍の場を奪っていた。だれど、成長していることがわかり、安心した。


 次の依頼は、森を抜けた先にある洞窟に住む魔道神官の討伐か。これはマリーに任せるとするかな。


「よし、それじゃ先に進もう」


 俺たちは次の依頼を受けに、森を抜ける。


 小休憩を挟みながら先に進むと、討伐対象のいる洞窟に来た。


「さて、入るとしよう」


 俺たちは洞窟の中に入る。


 どうやらこの洞窟には、光を発生させるクリスタルがあるみたいだな。そのお陰でファイヤーボールを使って照らす必要がないや。


 自然の光である分、敵に察知される可能性は低いな。このまま慎重に先に進むとするか。


 一応警戒をしつつ、洞窟の奥に進んで行く。


『誰だ! 私の根城に侵入してくるやつは!』


 どうやら足音で気付かれたみたいだな。討伐対象と思われる魔物の声が聞こえてきた。


 突き当たりの角から顔だけを出して先を見ると、白骨化しかけているゾンビが椅子に座っていた。


 手には杖を持っているし、神官の服を着ている。あいつで間違いないだろう。


 隠れるのを止めて魔物に近づくと、俺は名乗る。


「俺たちは冒険者チームのエグザイルドだ。悪いけど、ギルドの依頼でお前を倒させてもらう」


『ワハハハ! お前たちのようにまともに年を取っていないようなヒヨッコが、この私を倒すだと。寝言は寝てから言え』


「マリー、君ならこんなザコは無傷で倒せれるから頼んでもいいか?」


「わかりましたわ! 優雅に可憐に大胆に倒してみせます。シロウ、見ていてください」


『舐めやがって! 私の根城に来たことを後悔させてやる! 幻覚の杖よ! 今こそその恐ろしさをみせてやれ!』


 最後まで読んでいただきありがとうございます。


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