第十六章 第十一話 見つけた!ワタシが崇拝するに相応しいお方!
〜アッテラ視点〜
ワタシことアッテラは、無様にも地面に横たわりながら、シロウとかいう人間の男を見ていた。
悔しい。悔しい。悔しい! どうして魔王であるワタシが、人間如きにコテンパンにされないといけない。
だけどまだだ。まだワタシには回復魔法が使える。回復した瞬間に、速攻で至近距離から攻撃魔法を当てれば、あの男はきっと倒れるはず。
まだ、認めていない。ワタシは敗北を認めていないんだ!
「メガ……ヒール」
これで全回復だ! 肉体が完全に回復した瞬間に、至近距離からファイヤーボールを当ててやる!
あ……れ?
可笑しい? 肉体が回復しない? いや、それよりも回復魔法をかけているのに、どうして全身が痛い!
「痛い、痛い、痛い! どうなって……いるの!」
今まで感じたことのない痛みを覚え、ワタシの目からは涙が流れる。
「悪いがお前の身体は、回復魔法を使えば使うほど、己の肉体を傷付ける呪いをかけた」
「なん……だって」
「肉体の回復というのは、細胞が細胞分裂を繰り返し、体内から分泌される物質を使って修復される。だから、俺はお前に細胞のコピーミスを促す魔法をかけた」
細胞のコピーミスを促す魔法? 彼の言っている意味は分からないけど、とんでもない魔法だと言うことは直感的分かる。
「回復魔法により、強制的に細胞が分裂する際にコピーミスが起きれば、正常な肉体にならないからな。そうなれば、残った細胞が身体を維持するために、間違った細胞を攻撃する。その結果過剰な免疫反応が起こり、身体が痛みを覚えると言うわけだ。もう、お前は終わりだ。回復をしても、しなくとも、お前は死を待つだけの存在となる」
死ぬ? ワタシが? 人間に倒されるだと?
そんなバカな。あり得ない。あり得ない。あり得ない。だけど、指一本動かせないのは事実だ。
死を実感したその瞬間、ワタシは途轍もない恐怖に襲われる。死という存在が、マジかに迫り、生にしがみつきたいと思ってしまった。
「死にたくない。死にたくない」
思わずそんな言葉が漏れてしまう。
どうしてこうなってしまったのだろう。彼の強さに気づいたとき、最初はちょうどいい遊び相手だと思った。だけど戦闘中に彼は少しずつ力を出し始めて、今ではこのざまだ。
きっと、彼の頭の中では結末が見えていた。そしてそうなるようにワタシを上手く誘導して、自分の理想とする結果に導いた。
ワタシは彼の手の平で踊らされていたのだ。
死にたくないという思いは強いが、どうすることもできない。ワタシは何もできないのだから。
彼は本当に強いな。人間であるはずなのに、全てが魔王であるワタシを上回っている。
ワタシが死ぬ未来は変えられない。もし、そんなことができるのであれば、魔神様くらいだろう。もし、生まれ変わるようなことがあれば、もう一度シロウに会いたいものだ。
「セルリワインド」
彼の声が聞こえた瞬間、なぜか身体中に走っている痛みが消えていく。
うそ? どうなっているの? 回復魔法は効果がないんじゃ?
試しに指を動かしてみると、自分の意思どおりに動く。
上体を起こすとシロウを見る。
「お前にかかっている呪いを解除したんだ。魔法にかかる前の肉体に戻ったから、普通に身体を動かすこともできる」
ワタシにかけた呪いを解除しただと。
「これは一体何の真似だ!」
「いや、なんて言うか。気の迷いと言うやつだ。女の娘が涙を流しながら死にたくないと言っているのを聞いていると、なんか可愛そうに思えて」
「敵に塩を送るとか正気か!」
「まぁ、そう思うのが普通だよな。俺もまだまだ甘い。マリーたちがいたら説教されそうだよ」
「もし、このまま第二ラウンドを行った場合はどうするつもりだ!」
「その時はもう一度倒すまでだ。もし、お前が俺に勝てる自身があったのならな」
彼の言葉を聞いた瞬間、ワタシは口角を上げる。
完敗だ。それに命を助けてもらっておきながら、恩人に手を上げるなんてことは恥知らずのすること。
ワタシは一度立ち上がると、すぐに片膝をついて首を垂れる。
「大魔王シロウ様、この度の無礼お許しください」
「だ、大魔王!」
「ええ、魔王であるこのワタシが、完膚なきまで叩きのめされたのです。そんな存在は大魔王様以外おられません」
「いやいやいや、俺は普通の人間だから! 大魔王なんて存在ではない。それに大魔王だったら、人間と連むようなことはしないだろう?」
彼の言葉に、ワタシは納得する。
確かに大魔王は人間と一緒にいることはしない。魔王であるワタシもそうであったからな。
「とにかく、そんな格好をしなくていいから、普通にしていてくれ」
「わかりました」
指示に従い、ワタシは立ち上がる。そして熱い眼差しで彼を見た。
「なら、師匠と呼ばせてください。ワタシはあなたの強さを尊敬しております。どうか、ワタシを弟子にしてください!」
ワタシは覚悟を決めて彼に弟子入りを志願した。
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