第十五章 第四話 飛行船でのトラブル
「君たちに頼みたいボクのお願い。それは、君たちの実力を確かめさせてほしい」
「俺たちの実力を確かめる?」
「そうだ。魔大陸に行く以上は、ボクは命を預ける立場になる。安心して身を任せることができるのか、それを確かめさせてほしい」
俺たちの強さを知りたいと言われ、俺は安心した。
良かった。それなら何とかなりそうだ。
「そんなことでいいですの? 楽勝ですわ」
「うん、うん! シロウさんがいる限り、私たちは強いもの!」
「これは既に飛行船を手に入れたようなものだね」
「簡単なお願いで良かったです。わたし安心しました」
『ワン、ワン!』
「魔族を倒した経験のあるシロウさんです。討伐系の依頼なら容易いでしょう」
実力を知りたいと言われ、討伐の依頼だと判断したマリーたちが安堵の表情をする。
「ほほう。既に契約が成立していると思っているのかな? それは頼もしい。だけど、君たちがどれだけの修羅場を潜り抜けていようが、今回のお願いは一筋縄ではいかないよ」
キャプテンモネ、俺たちを見て複雑な顔をしているな。きっと本当に俺たちを信じていいものなのか、自問自答しているのかもしれない。
ここは彼女を安心させるためにも、全力で依頼を遂行しないとな。
「それで、キャプテンモネの口振りからすると、討伐系のお願いだと思うのだけど、そいつはどこにいるんだ?」
俺の問いに、彼女は無言で人差し指を天井に向ける。
「天井ですの?」
「屋根裏ってことかな? ネズミを追い出すの?」
「いや、屋根の上ってことかもしれない。野鳥をどうにかしてほしいとか?」
マリーとクロエとカーミラの三人が、屋根を見上げながら言葉を漏らす。
「三人とも外れだ。君たちに討伐して欲しいのは、地上から遠く離れた空に生息している」
「空ってことは、もしかして」
「ああ、ボクの水空両用飛行船、ノーブラス号に乗ってもらう」
飛行船の上で戦うことを告げると、キャプテンモネは飛行船のところに向かって歩く。
「さぁ、君たちの実力を見せてもらうよ」
彼女が指を鳴らす。その瞬間、天井の中央が開き、太陽光が降り注いだ。
「早速出発するから、船に乗ってくれ」
船に乗るように言われ、俺たちは飛行船に乗船した。
「君たちは甲板の方で待機をしてくれ。やつが現れたときは頼んだよ。ぼくは船の操縦で忙しいから」
「ちょっと待ってください! 説明はそれだけですの! ワタクシたちは何を討伐すればいいですの!」
簡単な説明で終わらせ、操舵室に向かおうとするキャプテンモネを、マリーが引き留めて詳細を訊ねる。
「縄張りを荒らされていると思ったのなら、やつのほうから姿を見せる。君たちは、現れた敵を倒せばいい。ただそれだけさ」
何も詳しいことを告げないまま、彼女は操舵室に入る。
「マリー、きっとキャプテンモネは俺たちをテストしているんだ。詳細な情報を教えないことで、対応力を確かめようとしているのだと思う」
「それなら、そうと最初からそう言えばよくありませんの? 何だか少し性格が悪くありません?」
「マリーさん。仕方がないよ」
「何せ、私たちがお願いしている場所は魔大陸だ。一般人からしたら、死に行けと言っているようなもの。彼女も生き残るために冷静に見極める必要がある」
「カーミラさんの言うとおりですわよ、マリーお姉様。わたしがあの人の立場なら、同じことをしていると思いますわ」
「今、わたくしたちがやれることは、あの人のお願いを聞き、信頼関係を築くことです」
「そう言う訳だ。マリーの気持ちも分からなくはないけれど、今は目の前のことを頑張ろう」
俺たちは甲板に移動すると、飛行船が動き出すのを待つ。
しばらくすると、船は上昇を初めて地上から離れていく。
俺は手すりに捕まりながら、周囲の風景を眺める。どんどん街から離れ、三日月型の町の全貌を見ることができた。
「町がどんどんと小さくなっていきますわ」
「本当に私たち、空にいるんだ! 何だか鳥になった気分だよ」
「町がゴミのようだね」
「み、み、皆さん。よく平気でいられますわね。飛行船からお、落ちたら大変なことになりますわよ」
『ワウーン?』
「エリザベートさん。あなたは海だけではなく、空も苦手なのですか?」
船の中央にいるエリザベートを見て、コヤンさんが訊ねる。
エリザベートは高いところも苦手だったんだ。これはあんまり、ムリをさせるわけにはいかないかもしれないな。
「なぁ、エリザベート。もし甲板にいるのが嫌だったのなら、飛行船の中に入っていてもいいんだぞ」
「だ、大丈夫ですわよ。万が一の時は、シロウさんにしがみつきますので」
それが一番困るのだけどなぁ。相手が未知の敵である以上は、何が起きるのかが分からない。彼女に引っ付かれると、何かが起きたときに即座に対応ができないかもしれない。
最悪の状況を考えた場合、俺が身軽な方が対応しやすいと思う。
「マリー、もしエリザベートが引っ付いてきたときは、俺の代わりに側に居てくれないか」
「わかりましたわ」
「海のときは何も言わなかったではないですか! どうして空はダメなんですの!」
「エリ、シロウがいくら優しいからと言って、甘えてばかりでは行けませんわ。愛想を尽かされてもいいのでしたら、ワタクシは何も言いませんが」
マリーが注意を促すと、エリザベートはしぶしぶと言った感じで飛行船の中に戻る。
それにしても、討伐対象はいつ現れるのだろうか?
倒すべき相手のことを考えていると、一瞬にして風景が変わった。
霧に包まれた? いや、空の上にいるのだから、雲の中に突入したのか。
だけどこれでは周りが見えない。
「急に何も見えなくなりましたわ。シロウ! どこにいますの!」
「シロウさん何処!」
「シロウ! どこにいるのだい! いたら返事をしてくれ!」
『ワン、ワン、ワン!』
「一度集まったほうがいいかもしれませんわ。皆様、シロウさんのところに集まりましょう」
コヤンさんが俺のところに集まるように言う。だけどこれはまずい。今俺たちは地面の上ではなく空にいる。無闇に歩いて船から落ちてしまったのなら、命は助からない。
「待ってくれ! 無闇に動いたら危険だ! みんなその場で止まってくれ……うわっ!」
「「「「きゃっ!」」」」
彼女たちにその場に止まるように言うと、俺は身体のバランスを崩して転倒してしまった。
その後すぐに、仲間達の小さい悲鳴が聞こえる。
くそう。何が起きているんだ? 雲のせいで何も見えない。
しばらくして、飛行船は雲から出た。太陽光が降り注ぎ、俺は状況を把握することになる。
俺を下敷きにするように、女性メンバーたちが重なっていた。
身体の至るところで柔らかいものが当たっており、女の娘の甘い香りが鼻腔を刺激する。
はは、この展開は色々とまずいよな。どうしよう?
最後まで読んでいただきありがとうございます。
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本日よりほぼ毎日投稿を再開します。
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