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第十三章 第八話 キャスパーク対キャット

 巨大化したキャスパークは、鋭利な牙を剥き出しにしながら俺たちを睨みつける。


 何倍にも大きくなったモフモフの動物を見た瞬間、俺は海で戦ったイカの魔物、スプラッシュスクイッドを思い出す。


「巨大化した動物を見ると、スプラッシュスクイッドを思い出すな」


「んんん〜ん。ジルドーレの研究もたまには役に立ちますね。まさか使う日が来ようとは思いませんでした。今度お礼に人食い植物でも送りましょう。さぁ、キャスパーク。あの男を倒しなさい。キャットは傷つけてはいけませんよ」


『ボォウ、ボォウ、ボォウ』


 キャスパークが叩くように前足を横に振る。俺はキャットを抱き抱えると後方に跳躍した。


『ワン、ワン、ワワーン!』


 敵の攻撃を回避したタイミングで、キャットが口を開けて火の玉を出す。


 火球は巨大化したキャスパークに当たったけれど、ダメージを受けていないように見えるな。


「んんん〜ん。ムダですよ。巨大化したキャスパークは、小さい火球では苦しみません」


 なるほどなぁ。つまり火球が大きくなれば、ダメージが入ると言うわけか。


「キャット、もう一度火球をあいつに放ってくれ」


『ワン!』


 返事をすると、キャットはもう一度口を開けて火球を放つ。


「エアー」


 魔法を発動させて酸素を送り込み、キャットの火球を何倍にも大きくさせる。


『ボォウウウウウウウウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!』


 大きくなった火球が当たると、キャスパークはバランスを崩してその場に転倒した。


 よし、キャットの火球を大きくさせれば勝てる。


「キャット、火球で文字を作ったときみたいに複数出してくれ」


『ワン!』


 俺の指示に従い、キャットは口から複数の火球を吐き出す。放出された炎に風を送り、酸素を取り入れて大きく膨れ上げさせる。


「これならどうだ!」


 複数の巨大化した火球をキャスパークに当てると、動物は倒れる。


「んんん〜ん。中々の威力ですね。ですが、僕のキャスパークはまだまだ戦えますよ」


 ドーマンがニヤリと口角を上げる。転倒した巨大動物は立ち上がり、肢体で大地を踏んだ。


 これでも倒せないか。こうなったら別の方法を考えるしかないな。


 あの動物は巨大化したことで普段以上の力を手に入れている。どうにかして元のサイズに戻すことができれば、この戦いに終止符を打つことができるはずだ。


 俺にはユニークスキル【魔学者】の副産物により得た異世界の知識がある。これを使えば何か突破口が開くはずだ。


 何か、何かないか……あった! これだ!


「セルリワインド」


 魔法を唱えた瞬間、巨大化したキャスパークがみるみる小さくなる。


「そんなバカな!」


 元のサイズに戻る動物を見て、ドーマンは驚く。だが、一番驚いていたのは俺自身だ。


 まさか本当に上手くいくとは思わなかった。異世界の知識を利用してオリジナルの魔法を作ってみたが、俺の想像どおりになるとはな。


「あなた、いったい何をしたのですか! いくらジルドーレの研究が欠陥とは言え、巨大化した生物を元に戻すことはできない」


「まぁ、そうだろうな。そのジルドーレと言うやつが何者なのかは知らないが、ここが違うんだ」


 俺はドーマンを見ながら自分の頭を指差す。


「巨大化を別の表現で考えてみたら、成長につながった。成長は細胞の分裂で行われる。だから分裂した細胞を元に戻すように促す魔法をかけてみたんだ。そしたら思ったとおりに元の愛くるしいサイズに戻ったと言うわけだ」


 あの男が理解できているかわからないが、一応説明してあげた。


「んんん〜ん! んんん〜ん! んんん〜ん!」


 俺の説明を受け、屈辱を受けたのだろう。ドーマンは唇を噛んで顔を歪める。


「おのれ、おのれ! キャスコは絶対に返してもらう!」


 ドーマンは声を荒げながら俺に近づく。


 怖い顔で近づくなよ。キャットが怯えたらどうしてくれるんだ。


「グラビティープラス」


「がああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 重力の魔法を唱えた瞬間、ドーマンはその場で転倒して無様にも地面に這いつくばる。


「動こうとしてもムダだ。今のお前は体重の数倍の重力で大地に吸い寄せられている。指一本動かすことができない」


「くそう。くそう!」


 ドーマンはどうにかして身体を動かそうとしている。


「止めておけ、ムリに動かそうとすると、身体のほうがもたないぞ」


 何もしないで大人しくするように言う。


 すると、キャットが身を(よじ)って俺の腕から抜けるとドーマンに近づいた。


「キャスコ……お前」


 キャットが近づいたことで彼の表情は和らぐ。しかし、彼は直ぐに驚愕した。


「や、止めなさい! 僕に引っかけるな!」


 キャットの行動に、俺はドン引きしてしまった。


 ドーマンの頭の上に登ると、排泄を始めたのだ。


 キャットよ、いくらドーマンのことが嫌いでも、あれはやりすぎなのではないのか。


 排泄を終えたキャットは、スッキリした表情で俺のところに戻ってくる。


「ドーマン、お前を拘束する」


「なんだこいつ! 臭いぞ」


「誰か、こいつに縄を掛けろ」


 彼との決着が付くと衛兵が駆け寄る。そして身柄を拘束しようとした。だが、異臭を放つドーマンを生理的に嫌悪して、中々捉えようとはしなかった。


 結局彼が捉えられるまで体感で五分はかかったが、どうにか連行されて行った。


「んんん〜ん! 絶対にキャスコは返してもらいますよ!」


「無駄口を叩かないでさっさと歩け! 署に着いたらしっかりと話を聞かせてもらうからな」


 遠ざかって行きながら、ドーマンは声を荒げる。


 もう、お前とは二度と関わり合いたくない。


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