第一章 第十一話 いくら俺のミスだからと言って、何でマリーと同棲まがいなことになる
今回の物語は短めです。
レオニダスたちがギルドから逃げるようにして走りさって行くのを見届けると、俺は急に疲れを感じた。
なんだか疲れたなぁ。依頼を受ける気分ではなくなってしまったし、今日はもう帰るとするか。
ギルドから出た俺は、宿に帰ることにする。
道を歩いていると、背後から足音が聞こえ、気になった俺は振り返る。
マリーが俺のあとをついてきた。
まぁ、彼女はスライムの一件以来、俺が利用している宿屋で寝泊まりをしているようだし、方角が同じなのは仕方がないことだ。
「あ、シロウお帰り」
宿屋に帰ると、宿屋の女将さんが声をかけてきた。
珍しいな、女将さんが俺に声をかけてくるなんて。でも、さすがに無視をするわけにはいかない。
「ただいま」
挨拶をされたので俺は返事をすると、彼女は鍵を差し出す。
うん? 鍵? 部屋の鍵のようだけど、それがいったいどうしたのだろうか。
どういう意味なのか理解できず、首を傾げる。
「これが新しい鍵になるよ。荷物のほうは既に移動を終えてあるから」
「あのう、どういうことなのですか?」
何が起きたのかがわからず、彼女に聞き返す。
「あれ、マリーさんから聞いていないのかい? 今日から、二人が同じ部屋になったって」
女将さんの言葉を聞き、俺は振り返ってマリーを見る。
「ワタクシが使っている部屋って、一応シロウがお金を出してくれているじゃないですか。でも、さすがに一人部屋を二つ分支払うよりも、二人部屋を使ったほうが、お金の節約になるじゃないですか」
頬を赤らめ、両手の人差し指を合わせながらマリーは言う。
俺がマリーの部屋代も出している? そんなバカな! 俺は一日分しか申請していないはずだぞ!
「女将! 俺の書いた名簿はあるか!」
「え、ええ、ちょっと待ってね」
女将が俺に背を向けると、棚の中から名簿を取り出てテーブルの上に置く。
「ほら、ここ。ちゃんと十日間って書いてあるじゃないの」
女将が俺の書いた箇所を指差す。
確かに彼女の言うとおり、俺の筆跡で一の隣にゼロが書いてあった。しかし俺には十日と書いた覚えがない。
当時の記憶を思い出してみると、可能性として考えられることがあった。
マリーの分の部屋を名簿に記入する際に、俺はクシャミをしたのだ。よく見ると、このゼロは綺麗に書かれてはおらず、線がはみ出ている。
おそらく、クシャミをした際に、勢いが余って偶然にもゼロを書いてしまったようだ。
ちゃんと確認もせずに渡してしまった以上、俺はマリーの宿屋の代金を十日分も払うことになってしまっている。
なんてことだ。どうして最後に確認をしなかったんだよ、過去の俺!
心の中で嘆いていても仕方がない。彼女の言うとおり、一部屋にしたほうが支払いの代金は少なくなる。
「わかったのならさっさと部屋に行った! カウンターの前に居られるとじゃまなんだよ」
この女将、客に対してなんて口の利き方なんだよ。
心の中で呟くも、俺はマリーと一緒に新しい部屋に向かう。
扉を開けて中に入ると、ベッドに座る。すると、何故かマリーまでもが俺の隣に座り、俺の肩に頭を乗せて軽く体重をかけてきた。
予想外の行動に俺はドキッとしてしまい、心臓の鼓動が早くなる。
マリーのやつ、ここでも俺を誘惑して仲間に引き込もうとしやがる。
ここは二人が共有するスペース。つまり俺にとっては逃げ場がない状態だ。宿屋の更新日が来るまでは、彼女と一緒に過ごすことになる。
「シロウ。お腹が空きませんか!」
これからどうするべきかを考えていると、お腹が空いていないかマリーが尋ねてきた。
「まぁ空いたな。今日は能力による魔法を使ったせいで特に空腹を感じている」
「そうですか。では、シロウは先に宿屋の食堂のほうに行っておいてください」
お腹が空いていることを言うと、彼女は目を輝かせ、高い声を出す。そして食堂に向かうように言ってきた。
いったい何を始める気なのだ?
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