第十一章 第四話 ダラスの町のギルマスはオルテガの知り合いでした
「ようやく目的地に辿り着いたな」
俺たちは次の拠点となるギルドのある町、ダラスに到着した。
「早速ギルドに行って、活動資金を手に入れよう」
依頼を受けるために、俺たちはギルドに向かう。
「ここがこの町のギルドか。オルテガが運営しているギルドとあんまり変わらないな」
建物の感想をポツリと言いながら、俺は扉を開けて中に入る。
ギルドの中には十数人ほどの冒険者がいた。依頼を眺めていたり、談笑していたりしている。
「さて、俺たちも依頼を探すとするか。Sランク以外なら内容は何でもいい。とにかく報酬金額が高いものを選んでくれ」
仲間たちに手分けして金払いのいい依頼を探すように言う。そして俺も張り出されてある依頼の紙を眺めた。
本当であれば、Sランクの依頼でも余裕で熟る。だけど俺たちは正式にSランクにはなっていないのだ。オルテガは俺の実力を見破り、裏でSランクの依頼もやらせてくれた。だけど拠点を変えた以上は融通が利かない。
ここのギルドマスターも、オルテガのような人だったらいいのだけどなぁ。
そんなことを考えていると、一枚の紙に俺は興味を持つ。
へぇー沼地に住むワイバーンの討伐か。報酬金額は三十万ギル。まぁまぁ、金払いがいいじゃないか。ランクもAだし、これなら変なトラブルに巻き込まれるようなことにはならないだろうな。依頼者の一言はっと。
『沼地に一頭のワイバーンが現れた。やつの尻尾の毒にやられて俺の知り合いが死にかけてしまった。頼む! 誰か敵を討ってくれ! あ、因みに解毒剤は持っていけよ。やつの猛毒は運が悪ければ死にいたるからな』
ご丁寧に注意書きまでしてあるなぁ。まぁ、ワイバーンの体内で生成される毒の種類は知っているし、解毒の魔法が使えるから、何も問題はないだろう。
俺はワイバーン討伐の紙を取り、マリーたちに声をかける。
「俺のほうではそれなりにいいものを見つけたけど、マリーたちのほうはどうだ?」
「ワタクシのほうは、よくて十万ギルと言ったところですわね」
「私のほうも似たようなものだったよ」
「私のほうは全然だめだったね。依頼内容のわりに報酬金額がせこいものしか見つけられなかった」
「そんなに都合のいい依頼を見つけるほうが難しいですわ。わたしのほうも全然ダメですもの」
『ワン、ワン、ワン』
「となると、俺が見つけたものが一番良さそうだな。ワイバーンの討伐依頼を受けようと思う」
俺は依頼の紙を彼女たちに見せる。
「確かに、これなら依頼内容に見合った報酬金額ですわね。まぁ、若干少ないような気もしますけれど」
「私も別に問題はないよ。ワイバーンは少し怖いけど」
「ワイバーンか。扱いは難しいが、懐かせれば移動手段としては便利な竜種だね。魔族の間では乗り物兼愛玩動物として人気が高い」
「ワイバーンが愛玩動物。魔族って凄いことをしますのね」
『ワン、ワン』
皆んなでワイバーンの話をしていると、キャットが俺のズボンの裾を咥えて引っ張る。
もしかして、竜の話をしてヤキモチを妬いたのか? 本当に可愛いやつだな。
俺はキャットを抱き抱えると頭を撫でる。
「それじゃあ、この依頼を受付に提出してくるよ」
この依頼を受けるとを彼女たちに伝え、俺は受付に行こうとする。身体を反転させた途端に誰かとぶつかってしまった。
「あ、すみません」
「何だテメェーは、見かけないやつだな。新入りか? 変な生き物を抱き抱えやがって、気持ち悪いな」
ぶつかってしまったのは六十代の男性だった。身体が接触したことで不快に感じたのか、キャットに対して悪態をついてきた。
「まぁ、そんなところです。俺は元々隣の大陸で冒険者をやっていたのですが、拠点をこっちに変えてみようかと」
「なるほどな。あっちの大陸から来たのなら、新顔なのも頷ける。俺の名はガイア。ここのギルドマスターだ」
この人がここのギルドマスターなのか。
「それにしても弱そうだな。見た感じ全然筋肉がないじゃないか。冒険者としてまだまだだな。まぁ、お前のような見た目のやつなら大したランクではないだろうな。うん? お前何か依頼の紙を持っているようだな。見せてみろ」
ギルドマスターと名乗ったガイアが、俺の持っていた依頼書を無理やり奪うと紙に目を通す。
「ギャハハハ! これはAランクの依頼だぞ。お前が受けられるはずがないじゃないか。お前のような見た目のやつは、Dランクのゴブリン退治ぐらいが関の山だろう。金に目が眩みやがって。恥をかく前に戻して来い」
無理やり奪った依頼書を、ギルドマスターのガイアは俺に突き返す。
いやー、こいつは驚いたなぁ。ギルドマスターと言うのは、オルテガみたいに人の才能を見抜くセンスがある人ばかりだと思っていたけれどなぁ。こんなポンコツでもギルドマスターになれるんだ。
見た目で人を判断することしかできないなんて。なんて可哀想な人なんだろう。仕方がない。ここは俺がAランクであることを証明するとするか。
「一応これでもAランクですよ。ほら」
俺はポケットから冒険者の証明書を取り出すと、彼に見せる。
ギルドマスターのガイアは、俺の証明書を受け取った。そして書かれてあることを確認すると、彼はいきなり証明書を握り潰す。更に床に投げ捨てると、足で踏み潰して床に擦り付けた。
「何をしやがる!」
「テメーはオルテガのところから来たのか?」
「ああ。そうだが」
「アーハハハハ! 全然話にならないじゃないか! いいか! 確かにお前のいた大陸ではAランクだったかもしれない。だけどアイツが運営しているところにいる冒険者はゴミしかいない。つまり、冒険者どもに甘いと言うことだ。この証明書もここでは役には立たない。俺の見た目では、お前は良くてDランクだ。だから許せれる依頼はDまでと言うことだ」
「そんなの納得いきませんわ! どこで発行しようと、冒険者のランクは全世界共通ですわよ!」
「そうだよ! シロウさんは凄いんだよ! ここにいる冒険者たちよりも強いんだから」
「見た目だけで人を判断するなんて、器が小さいにもほどがあるよ。ギルドマスターは冒険者の代表、つまり、あんたの態度でここの冒険者の質と言うものが知れると言うわけだ」
「シロウさんの実力が分からないなんて。目が腐っているのではないのですか? 病院に行かれたほうがよくってよ」
『ワン、ワワーン!』
ギルドマスターであるガイアの言葉が納得行かなかったようだ。
先ほどまでことの顛末を見守っていたマリーたちが文句を言う。
「何だテメーら、どいつも見ない顔だな」
「ワタクシたちは、シロウ率いるエグザイルドのメンバーですわ!」
「オルテガさんのほうが正しい評価をしてくれているもの! あなたはオルテガさんよりもギルドマスターとしての下よ!」
「あいつの名前を出して俺様と比べるなああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
クロエの言葉が癇に障ったようで、ガイアはいきなり怒声を上げ出した。
「よし、いいだろう! だったら俺様が用意する冒険者と勝負をしやがれ! もし、あいつらに勝つことができたのなら、認めてやる! おい! ランキング上位のやつで、依頼に向かっていないやつはいるか!」
ガイアは語気を強めながら、受付嬢に尋ねた。
「あ、はーい。少々お待ちくださいね」
ギルドマスターが怒鳴り口調で尋ねるも、受付嬢は間の抜けた声で返事をする。
もしかして、こんなことは日常茶飯事なのだろうか?
「あーそうですね。三位のグループなら、今は依頼を受けていませんよ」
「よし! 今からそいつらを呼び寄せろ! 俺様が説明する! お前たちは明日ここにもう一度来い! 詳しいことは明日説明するからな!」
語気を強めながらガイアは勝手に話を進める。
はぁー、どうしてこんなに面倒臭いことになってしまったんだよ。Aランクの依頼なら、トラブルは起きないと思っていたのに。
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