プロローグ
私の作品を見つけて下さりありがとうございます。
少しでも楽しんでいただけたらさいわいです。
俺、シロウ・オルダーは十七歳の成人男性だ。
Sランク昇格をかけたクエストを仲間と一緒にクリア―したので、ギルドに報告しに来ていた。
「おめでとうございます。これで皆さんはSランクの冒険者パーティーになります」
受付嬢が討伐した魔物の証を確認すると、俺たちがSランクに昇格することを告げる。
「やったーついにSランク! これでお母さんと肩を並べられる!」
「よっしゃー! これで親父も俺を認めてくれるだろう」
魔法使いのエレナと剣士のレオニダスが喜びの声を上げた。
俺もかなり嬉しい。皆で協力して頑張ったかいもあったってものだ。
「記念にお祝いしない?」
「いいじゃないか。俺は賛成」
エレナがお祝いをしようと言い出すと、レオニダスがそれに乗る。俺も彼と同じ意見だ。
「ねぇ、マリー様。いいですよね」
「ええ、もちろんですわ」
俺たちのパーティーリーダーであるマリーも賛成してくれた。毛先をゆる巻にしている金髪ロングの女の子で、この町の男爵の娘だ。
彼女は冒険者に憧れ、自分の意志でパーティーを立ち上げた。そんな人のパーティーに入っていることに対して、俺は誇りに思っている。
エレナとレオニダスが店の話をする中、これからどこに連れて行ってくれるのだろうかと胸を躍らせる。
「ねぇ、シロウ。話がありますの」
どこの店に行くのだろうと考えていると、マリーが俺に話があると言う。
「シロウ、今日であなたをクビにしますわ」
「はい?」
マリーが青い瞳で俺を見ると、突如クビにすると言い出す。彼女がそんな言葉を言うとは思っていなかった俺は、思わず間抜けな声が出た。
「その返答の仕方は、聞こえていなかったようですわね。なら、もう一度言ってあげますわよ。シロウ、あなたはクビです。明日からワタクシたちの前に顔を見せないでください」
パーティーリーダーであるマリーが、もう一度クビだと宣告する。
どうして俺がパーティーを追い出されないといけない。ここまでみんなで協力してきたじゃないか。
なぜ、パーティーから外されるのか、その理由が思い当たらない。
ここまで協力してきたんだ。それなのに、理由も言わないでただクビにするなんてあんまりな話だ。
理由を聞いてそこを直せば、まだ俺は皆とパーティーを組めるはず。
「どうして俺をクビにする! だってSランクに昇格したばかりじゃないか! 今からギルドを出て、お祝いをしようって話している最中なのに」
「だからこそです。Sランクに昇格した以上は、荷物持ちぐらいしか使い道のない無能なあなたはいりませんの」
無能だからSランクのパーティーには必要ない。あまりにも身勝手な話だけに、俺は次の言葉が出なくなる。
彼女の言葉を聞いて何も思わないのだろうか。僅かな望みにかけるために、俺は仲間であるレオニダスを見る。
彼と目が合うと、爽やかな笑顔を向けてきた。
「マリー様が決めたことなら仕方がない。悪いが、お前とはここまでだ」
このとき、彼の笑顔は普段と違っていたような気がする。まるで厄介者を排除し、喜んでいるような笑みだ。
レオニダスはこちらに近づくと、俺の肩に手を置いて耳元で囁く。
「この一年間、マリー様は荷物持ちとして、お前のような無能をパーティーに入れてくれていたんだ。むしろ感謝しやがれ。俺は毎日我慢していたんだ。お前のような何のスキルも持たないやつが、マリー様のパーティーにいることに腹が立っていた」
彼の言葉に、俺は酷く驚く。
普段からレオニダスがそんなことを思っているなんて、全然気づかなかった。
頭の中がぐらぐらするような感覚になり、一時的に何も考えられない。
言いたいことを言って満足したのか、レオニダスは俺に背を向けると、マリーの隣に戻る。
「頼むよ、これからも荷物持ちを頑張る。雑用だってするし、前線で安全の確認もする。だから、このままパーティーにいさせてくれよ! なぁ、エレナからも何か言ってくれないか?」
このままでは本当にパーティーを追い出される。そう思った俺は、エレナに顔を向けた。
もし、彼女が俺を庇ってくれるようなことになれば、二人とも考えを改めてくれるかもしれない。
僅かな望みにかけて彼女に助けを求める。
「プッ、アハハ。アハハハハハ。何真剣な顔でお願いしているのよ。こっち見ないでよ。マジでキモイんだけど」
真剣にお願いしたのにも関わらず、エレナは口から噴き出すと、お腹を押さえて笑い出す。
「何必死になっているのよ。そんなにマリー様のパーティーにいたい訳なの?」
「もしかして、シロウはエレナのことが好きなのでは? だから必死でわたくしのパーティーにいようとしているとか?」
「ちょっとマリー様! 冗談でもそんなことを言わないでくださいよ。考えただけでおぞましい」
エレナは本当に俺に対して嫌悪感を抱いているようだ。両手で自身の肩を抱き、冷ややかな視線を送ってくる。
「という訳だ。早いところ俺たちの視界から消えてくれ。無能!」
レオニダスがもう一度俺に近づくと肩に手を置き、そのまま突き放す。
俺はバランスを取ることができずにそのまま転倒した。
「アハハハ。だっさー! 突き放されただけでこけてやんの」
床に転がる俺を見て、エレナは再びバカにするような笑い声を上げる。
「なにこんなところで寝ていやがる。さっさとギルドから出て行けよ」
「ぐあっ」
直ぐに起き上がらなかったことに対して、レオニダスが苛立ちを覚えたようだ。
俺の脇腹を勢いよく蹴りつけてきた。
「ほら、さっさと出て行け! 他の冒険者の邪魔になるだろうが」
起き上がりたくとも、レオニダスが何ども蹴ってくる。そのせいで、起き上がるタイミングを見失う。
「でも、何であんな無能を仲間に引き入れてしまったのかしら。そこが思い出せないのよね」
「あれじゃないですか? マリー様って、時々哀れな市民を見ると、手を差しださずにはいられなくなるじゃないですか。そのときの気分で、あの無能をパーティーに入れてしまったんじゃないのですか?」
何度も蹴られて痛みを感じる中、マリーとエレナの話声が耳に入る。
他の冒険者たちは、暴行現場を見て助けようとするものはいない。
それもそうだ。マリーのパーティーである『赤いバラ』はSランクに昇格した。この町で一番強いチームだ。それにパーティーリーダーであるマリーはこの町の男爵の娘。それにレオニダスは騎士団長の息子。そしてエレナの母親は、勇者パーティーに所属していたこともある。俺なんかを助けようものなら、何をされるかわかったものではない。皆報復を恐れて、見て見ぬふりをしている。
レオニダスが一度足を上げた瞬間を狙い、俺は一度床を転がって距離を離す。そして急いで起き上がり、扉を開けてギルドから出て行く。
呼吸がままならない中、必死に逃げた。そして路地裏に入ると、建物の壁に背中を預ける。
「プッ、アハハ。アハハハハハ」
緊張の糸が切れたことで、俺は我慢していた感情が抑えられずにとうとう大声で笑う。
「あいつら、俺が演技をしているとも知らずに、本気でパーティーに残ろうとしていると思い込みやがった。作戦成功だ! これで俺は自由だ! ガハッ……ゴホッ、ゴホ」
大声を出して笑っていると俺は気持ち悪くなり、口から吐き出す。けれどそれは消化しきれていない食べ物ではなく、赤い液体だった。
「どうやら身体の臓器が破損しているところがあるみたいだ。たく、レオニダスのやつ。あんなに痛めつけなくてもいいじゃないか。この傷、俺じゃなければ死んでしまうかもしれないぞ」
ぶつぶつと文句を言っているが、早く治療しないとマズイのも事実。俺は急ぎ回復魔法を唱える。
「ネイチャーヒーリング」
魔法名を口に出した瞬間、体内の細胞が活性化されたようで、俺の臓器は修復を始める。
その証拠に、口から流れ続けていた血が止まっていた。
そろそろ家に帰って今後のことについて考えよう。そう思い、一歩足を踏み入れるとめまいを感じてその場に蹲る。
「思っていたのよりも血を失っていたのか。まさか貧血になるなんてな」
失った血を元に戻すことはできない。ならば、減ったのなら補えばいいだけ。
「ブラッドプリュース」
血液生産魔法の呪文名を口にする。その瞬間、骨髄から血液が生産され、気分がよくなった。
立ち上がって両肩を回す。そして今度は屈伸運動を始めた。
「いち、にー、さん、しー、ごー、ろく、しち、はち。にー、にー、さん、しー、ごー、ろく、しち、はち。よし、完全復活!」
身体が殴られる前の状態に戻った。今度こそ家に帰るとするか。
俺は夜道を歩きながら自分の家に帰って行く。
「でも、Sランクに昇格したっていうのに、俺なしでもやっていけるのだろうか。まぁ、自分たちで決めた道なんだ。あいつらがどうなろうと、今の俺には関係ないか」
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あれ? 前の話しはどこまで読んだっけ?
という経験がよくあると言う人は、押しておいて損はしないかと思います。
何卒よろしくお願いします。
物語の続きはもう少ししてから投稿します。
 




