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第2話 混乱してるときは大人しくしてるのが1番

俺がこのベッドに寝かされている理由を、聞いてしまった。どうやら聞くべきことを間違えたらしい。


「ねぇ、りっくん、そんなのわかってるでしょ。今からりっくんが何されるのか、なんでこんなことになっちゃったのかなんてさぁ!!!!」


語り始めは静かに告げて俺の恐怖心を高め、最後には絶叫で伝えてくることで俺の心を完全に挫く、そんな話し方をされてしまった。


ついつい「ひっ」と声を上げてしまった。恐い。いや怖い。


「ねぇ?りっくんのお口で答えてよ。わかってるよね?」


逆らえない。これかどうか定かじゃないけど、心当たりはこれしかない。


「そ、そうだなぁ。きょ、今日の昼にクラスメイトから告白された件、とかかな?でもその話は断っ『りっくん!!!!!!!』」


俺の話を途中で遮って、言い訳を最後まで聞いてくれる気はない様子。


「あのね?りっくんがその告白を断ったのは知ってるよ?というか、りっくんが絶対に断るっているのはわかってるの」


シオが優しい声音で語りかける。


「じゃ、じゃあその件とは違うってこと、かな?」


俺が恐る恐る尋ねると、シオは「はぁ〜っ」と少し呆れたように息を吐く。


「ううん?その件だよ?告白を断るのは当たり前。だって、りっくんはシオの未来の旦那さんだもんね。だけどね?問題はそこじゃないでしょ!!!!!」


ど、怒鳴られてもわからないよ......。だとしたら一体なんなんだ......。


「はぁ。わからないかぁ。あのさぁ、リク(・・)。『告白されるなんて気を抜きすぎ』なんじゃないかなぁ!!!!!????!?!?!?!?!」


シオが俺のことを「りっくん」じゃなくて「リク」と呼ぶときは、尋常じゃないほど怒ってるとき、というか俺を極限まで脅したいときだ。

その効果はまさに絶大。その恫喝に俺の精神はすっかり萎縮しきっている。


俺はまた悲鳴を上げそうになる自分をなんとか収めて、がんばって意識して冷静になろうと小さく深呼吸してから、少しだけ思考を巡らせる。


なるほど、告白を断るとかそれ以前に、「そもそも告白される」なんて自体に陥ったことに、憤っているということか......。

やっぱ俺のせいじゃないじゃん。でも、そんな言い訳(・・・)、シオが聞いてくれるわけないもんな。


だから俺にできるのは


「ごめんシオ!俺さ、高校に入ったばかりで、新しい環境に浮かれて、ちょっと気が緩んでたみたいだ。本当にごめん。これからは告白されるような状況にならないように注意するね」


ここでも努めて冷静を装って、いつもの俺と変わらない声音を心がける。

なんて、もはやただの強がりでしか無い。


だってシオの表情を見たら、俺が何をどんなふうに伝えても結果は一緒なのは一目瞭然だから。


さっきまでみたいな、まさに悪魔が宿っているとしか思えない表情ではなく、ニッコリとした表情の奥に、恍惚とした感情を覗かせている。

シオがこういう顔をしてるときは、この後、間違いなく、俺を痛めつけることになるんだ。


「ふぅん。そっかぁ。うんうん、りっくんが素直に反省してくれて嬉しいなっ。まだしらばっくれられたらどうしようかと思っちゃったよぉ〜」


今日一番優しい声音でそう語るシオ。


その様子に、僅かに、本当にごく僅かにだけど、もしかしたら今日は拷問は勘弁してもらえるかもしれない、なんて希望を抱いてしまう。

だけど、そんなわけはなかった。俺の希望は即座に砕かれる。


「でもまさか、反省してるからって、この後のお仕置きがなくなる、なんて思ってないよね?」


あぁ......やっぱりだめなんだね。

また、爪剥がされちゃうのかな。


当時の痛みを思い出すことは難しいけど、当時の恐怖は嫌というほど鮮明に思い出せる。

むしろ時間が経つほどに、そのときの記憶に、さらに恐ろしさのトッピングが追加で塗りたくられていき、当時感じていたものよりも強い恐怖に襲われるようになってきている。


思い出すだけで全身がブルリと震えるくらいなんだから、そんじょそこらのトラウマじゃない。


だけど、やっぱりシオの前で怯えた素振りを見せすぎると、それだけでシオの機嫌は悪くなってしまう。

それを回避するために、手の震えを必死で握りつぶしながら、シオからの質問に答える。


「は、ははは、まさかまさか。俺が悪いことしちゃったんだから、ちゃんと罰は受けないといけないもんね?」


間違っても否定したりなんてできないからね。

可能な限り易しい罰にしてもらえるよう、機嫌を損ねないようにせねば。


「うんうん。シオは素直なりっくんのこと、本当に大好きだよ!それじゃあ、りっくん。今回はこれで、ちょっとしたお仕置きをするだけにしておくね♫」


そういってシオが持ち出してきたのは、見たこと無いでかい機械。

見ようによっては筋トレ用のマシンにも、機械工作をするときにモノを固定するために使う万力のようにも見える大きめのナニカ。


「あはは。できるだけ、お手柔らかにしてもらえると、嬉しいな?俺、あんまし痛いのは好きじゃないんだよねぇ」


もしかしたら声が震えてしまっていたかもしれない。

だけど、これを使って何をされるのか、「わからない」ということが俺の心を覆う恐怖心の濃度をさらに高める。



「ね、りっくん。私はね、りっくんに痛い思いさせたいわけじゃないの。でも、りっくんが他の女に告白される、なんてシオを裏切るようなことするから、シオも泣く泣く、イヤイヤ、こんなことしなきゃいけなくなっちゃってるんだよ?だからね?ちょっとだけ痛い思いして、しっかり反省しようね?」


俺を諭すように語るシオの瞳には一切の光が差していない、ように見える。

俺の心持ちがそう幻視させてるだけなのか、本当にそうなのか、判断することなんて出来ないし、判断することに意味もないかもしれない。


シオは話しながら、全く身動きが取れなかった俺の拘束の一部、左腕の部分を外して自由にする。


あぁ、やっぱ爪剥がしなのか......。

でも、前に詰め剥がされたときに使ってた機械と、違うよな。


半ば諦念にまみれた思考に、精細さは微塵もない。

現実を受け入れるのみ。むしろ意識を手放すことができれば、どれだけ幸せだろうか。


そうこうする内に、シオはテキパキとその機械を俺が寝そべっているベッドの横につけて、その万力のような機械の一部に、俺の腕をセットする。


もう逆らうつもりはない。大人しくやられるのが、一番ダメージが少ないだろうから。

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